表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/184

第13.5話 フアン王子とルイス

 お茶会の後、ルイスはフアンと広間の長イスに座り、ふたりで話をした。


「フアンさんは、やっぱり凄くモテるんですね」

「ルイス君!? 茶会に来ていたんだね。声をかけてくれればいいのに。いや、始まる前に、声をかけようと思ったんだけど、見当たらなくてね。茶会中も、こちらから探せなくて、ごめんね」

「探せなくて当然ですよ、あんなに周りに女の人がいたら。僕だけじゃなく、あのペルタさんさえ、近寄れなかったですよ」


 フアンはたじたじになって、困ったように笑った。


「あれは、モテている、というわけじゃなくてね」

「王子なら、当然の現象ですか?」


 フアンはさらにうろたえたが、やがて落ち着いて答えた。


「そうかもしれないね。私だけに起こる現象じゃ、決してないからね」

「そ、そうですよね。やはり、あれが当然⋯⋯」

「だけど、わかってほしいのは、私はモテたくてお茶会を開いているわけじゃないんだ。お茶会は女性の要望でもあるけど、王子になる前もなった後も応援してくれる、その気持ちに、恩返しをしたくて開いているんだ」


 真面目な顔で語るフアンに、ルイスはうなずいた。


「大勢の女の人に、王子様になってって、言われたんですか?」


 フアンはまたうろたえたが、凛々しく真摯に答えた。


「そうだね。中でも、最初から応援してくれたのが、恋人だよ」


 同じく、応援してくれる恋人がいるルイスは、フアンと自分を比べてみた。しかし、一瞬で、比べるのはやめた。


「僕は大勢の女性にモテ、応援してもらえるかどうか⋯⋯今まで、スポーツしてる時は応援してもらえたけど、それ以外記憶にないですから」


 前のめりに落ち込むルイスを、フアンは両手で支えて、困ったように笑った。そして、励ますように言った。


「私だって、大勢の女性に応援してもらえたのは、王子を目指してこの国を旅してからだよ。それまでは、少し太ってて、冴えなかったんだ」


 ルイスは信じられずに、凛々しく引き締まったフアンを見た。


「お菓子が好きでね。それを彼女が取り上げて「痩せたら王子様になれるかも」と、無謀だけど嬉しいことを言ってくれた。彼女の居ない今は、自分で気をつけて、食べすぎないようにして、頻繁に見回りをしているんだ」


 完璧な王子に見えるフアンが、以外に普通の苦労をしていることに、ルイスは親近感を覚えた。


「だからこそ、信じて応援してくれる女性達、いや、応援してくれる全ての人が、とても大切なんだ」


 ルイスはお茶会に、老若男女が参加していたのを思い出した。


「大丈夫、ルイス君にもこれから増えていくよ。もう既に、応援してくれるのは、恋人だけじゃないだろう?」


 ルイスは熱心に応援してくれるペルタを、そして、老王子と老姫を思い出した。この国の女性達の希望の星だという言葉を思い出した。


「はいっ。これから、増やしていきます! 応援してくれる人を! 彼女のライバルを??」


 ルイスの最後の疑問に、今度はフアンが前のめりにずっこけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ