第13.5話 フアン王子とルイス
お茶会の後、ルイスはフアンと広間の長イスに座り、ふたりで話をした。
「フアンさんは、やっぱり凄くモテるんですね」
「ルイス君!? 茶会に来ていたんだね。声をかけてくれればいいのに。いや、始まる前に、声をかけようと思ったんだけど、見当たらなくてね。茶会中も、こちらから探せなくて、ごめんね」
「探せなくて当然ですよ、あんなに周りに女の人がいたら。僕だけじゃなく、あのペルタさんさえ、近寄れなかったですよ」
フアンはたじたじになって、困ったように笑った。
「あれは、モテている、というわけじゃなくてね」
「王子なら、当然の現象ですか?」
フアンはさらにうろたえたが、やがて落ち着いて答えた。
「そうかもしれないね。私だけに起こる現象じゃ、決してないからね」
「そ、そうですよね。やはり、あれが当然⋯⋯」
「だけど、わかってほしいのは、私はモテたくてお茶会を開いているわけじゃないんだ。お茶会は女性の要望でもあるけど、王子になる前もなった後も応援してくれる、その気持ちに、恩返しをしたくて開いているんだ」
真面目な顔で語るフアンに、ルイスはうなずいた。
「大勢の女の人に、王子様になってって、言われたんですか?」
フアンはまたうろたえたが、凛々しく真摯に答えた。
「そうだね。中でも、最初から応援してくれたのが、恋人だよ」
同じく、応援してくれる恋人がいるルイスは、フアンと自分を比べてみた。しかし、一瞬で、比べるのはやめた。
「僕は大勢の女性にモテ、応援してもらえるかどうか⋯⋯今まで、スポーツしてる時は応援してもらえたけど、それ以外記憶にないですから」
前のめりに落ち込むルイスを、フアンは両手で支えて、困ったように笑った。そして、励ますように言った。
「私だって、大勢の女性に応援してもらえたのは、王子を目指してこの国を旅してからだよ。それまでは、少し太ってて、冴えなかったんだ」
ルイスは信じられずに、凛々しく引き締まったフアンを見た。
「お菓子が好きでね。それを彼女が取り上げて「痩せたら王子様になれるかも」と、無謀だけど嬉しいことを言ってくれた。彼女の居ない今は、自分で気をつけて、食べすぎないようにして、頻繁に見回りをしているんだ」
完璧な王子に見えるフアンが、以外に普通の苦労をしていることに、ルイスは親近感を覚えた。
「だからこそ、信じて応援してくれる女性達、いや、応援してくれる全ての人が、とても大切なんだ」
ルイスはお茶会に、老若男女が参加していたのを思い出した。
「大丈夫、ルイス君にもこれから増えていくよ。もう既に、応援してくれるのは、恋人だけじゃないだろう?」
ルイスは熱心に応援してくれるペルタを、そして、老王子と老姫を思い出した。この国の女性達の希望の星だという言葉を思い出した。
「はいっ。これから、増やしていきます! 応援してくれる人を! 彼女のライバルを??」
ルイスの最後の疑問に、今度はフアンが前のめりにずっこけた。