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オトギの国のルイス〜王子様になるために来ました〜  作者: 城壁ミラノ
第6章

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第119.5話 王子様の馬探し11  オトギの国の夜

 露店通りの入口で、ルイス達はゲオルグ達と合流した。


「あの騒ぎ、ブロウさん達だったんだ」


 ファルシオンがルイス達の話を聞いて肩をすくめた。


「気になったんだけど、女の子達と一緒だから行かなかったんだ。見たかったな、ブロウさんの戦うところ」

「自分も」


 ゲオルグもブロウを見つめた。


「いやぁ、大したことないよ」


 さすがにブロウは照れて頭をかいた。


「さぁ、じゃあ、僕達は森に行くから」


 ブロウは急いで話を変えた。


「自分もお供したいですが」


 ゲオルグが心配に眉をよせて言った。


「あてもなく探すの大変じゃない?」


 ファルシオンも珍しく深刻な顔になった。


 一同は悩んで黙り込んだ。ルイスはこんな時、ドラゴンが居てくれれば上空から探せるのにと思った。


「そうだ! 遊園地にドラゴンが居た! 探すのを手伝ってもらえませんかね?」


 一同もルイスに賛成する中、ブロウが後ずさった。


「僕は、高いところが」

「僕が代わりに乗りますよ!」


 ルイスはブロウを引っ張って遊園地に向かった。


 広場から遊園地は忽然と消えていた。驚いたルイス達はサーカスの団長ドラゴンスキーを探して、サーカスのテントで見つけた。


「ドラゴンスキーさん」

「やぁ、皆さん。どうしたんですかな?」

「遊園地はどこに消えたんですか?」


 本題の前に、ブロウが興味津々で尋ねた。


「ああ、遊園地ならここにありますよ」


 ドラゴンスキーは大きなトランクを開けた。中には、遊園地のミニチュアが入っていた。


「小さくして持ち運んでいるんです」


 ドラゴンスキーはブロウが遊んだメリーゴーランドを手に持って見せた。ルイス達は安心して、本題を説明した。


「ピエロ退治のお礼ができますな。ドラゴンがうんと言えばいいんですが」


 ドラゴンスキーはドラゴンの居るテントに一同を連れて行くと、テントをめくって中を覗き込んだ。


「疲れてるところすまんな、ジニーや」

「どうしたの?」


 深く澄んだ声が応えた。


「実はな、森に人を探しに行ってほしいんだ」


 テントの中からドラゴンが現れて、一同を見下ろした。


「あら、私の背中に乗って1番喜んでいた子じゃない? 熱い視線を送ってくれたわね」


 ジニーはルイスに顔を近づけてきた。


「はい」


 ルイスは照れ笑いを浮かべた。


「いいわ、助けてあげる」

「ありがとう!」


 顔に抱きつくルイスを、ジニーは優しく受け止めた。


「探してほしい人の特徴を教えて、ひとっ飛び行ってくるわ」


 ブロウから男の特徴を聞いたジニーは空に舞い上がり、あっという間に森の方へ飛んで行った。

 そして、一同が祈るように待つ中、目的の男を口にくわえて戻ってきた。


「おお! さすが、ジニー!」


 一同は歓声と拍手で迎えた。


 開放されて地面に転がった男は、ブロウとドラゴンと立て続けの圧倒的な力を前に、へたばっていた。


「またあんたか、好きにしてくれ」


 男は蹴られた胴を押さえて、虫の息で言った。


「…もう悪さしないと誓うなら、解放するよ」


 男とブロウはしばし互いの目を見ていた。


「わかりました、王子様。それから、神様」


 男の視線を受けたタリスマンは、急いですまし顔で胸を張った。


「素直であるぞ…すまん、俺は神様じゃないんだ。王子様の言うことだけ聞いてくれ」


 プレッシャーに耐えかねたタリスマンが白状して、一同の緊張を解いて笑わせた。

 ひとりの娘が申し出て、男の体に手を当てて回復してくれた。

 ドラゴンスキーとジニーに礼を言って別れたルイス達は、立ち去る男達を見送って、娘達を家に送り届けてようやく宿に帰った。


 同室のルイスとロッドは寝支度をして、ベッドに横になった。


「色々あったな」

「うん、サーカスに遊園地に、全部凄いスリルだったよ」


 ルイスはひとりで宝探しする少年スリルを思い出して、窓に顔を向けた。


「スリルやキイルは無事かな?」

「仲間が出来てたらいいけどな」

「うん」


 ルイスはふたりだけでなく、ひとり旅をする少年達に思いを馳せた。自分は大人達に守られていることを幸せに思うと同時に情けない気もしたが、誘拐されたかけた恐怖でひとり旅は、しばらくは思いを馳せることしかできそうになかった。


「夜の町、ふたりでこっそり行かなくて、よかったね」

「今頃、俺達は誘拐犯のアジトだったろうな」


 ふたりは笑いあって、色々話している内に眠りに落ちて、長い夜は終わった。

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