第8.5話 再会の約束
「お互い長くかかりそうだね」
ルイスの予想に、スリルはうなずいた。
「宝が見つかったか、教えてほしいな」
「もちろん、いいよ。そうだ、僕の家はセイントにある“ニレの木”っていう宿屋なんだ」
「セイントって、オトギの国の入り口の町だね」
「うん。案内所の近くだから、すぐわかると思うよ。ルイスはどこに居るの?」
「⋯⋯どこに居るんだろう?」
ルイスはこれから住む場所さえ把握してないことに気づき、言葉が続かなかった。
「王子様はそういう事は、家来に任せてあるんだっけ」
スリルは肩をすくめて、少し意地悪な笑みを見せた。
「やめてくれよ」
ルイスはかろうじて言い返した。
「しょうがない、運命に任せよう。またどこかで会おうよ」
「うん! それがいい」
ルイスはスリルの提案が冒険者らしくて気に入った。
スリルは立ち上がると、地図を仕舞ってリュックを背負った。ルイスも立ち上がり、ふたりで道の真ん中に行くと向かい合った。
「少し一緒に行かない? 森は危ないよ! 次の町まででも」
「ありがとう、ルイス。でも急ぐから。宝探しは早い者勝ちなんだ! 今度会ったら、きっと結果を教えられるよ!」
「うん! 僕も、もう少し成長しておくよ!」
ルイスは他に言いようが無かった。ふたりは固く握手した。
「感動ねぇ。こんな光景を、この目で見れるとは」
ペルタがふたりに近づくと、嬉しそうに言った。
「スリル君だったわね、キレイな顔してるわね。悪いお姉さんに気をつけなさい」
「スリル、この女に気をつけろ」
アンドリューがペルタの横に来て忠告した。
「はい、お兄さん」
「なぜ? スリル君。なぜお兄さんの言うことを聞くの?」
「経験豊富そうだから」
スリルの大人びた発言に、ペルタは狼狽し言葉を失った。
「ひとり旅をする子供は度胸だけでなく、人を見る目も養われてるな!」
アンドリューはご満悦で笑った。ペルタは反対に不満気に鼻を鳴らした。
「スリル君、私とこちらのお兄さんとお姉さんは、いつでも頼っていい。どうか気をつけて。旅の無事を祈っているよ」
「ありがとうございます。王子様」
フアンの優しい言葉に、スリルはお辞儀した。
旅の少年と王子のやり取りを、ルイスはしっかりと見学した。
「じゃあ、お先に!」
スリルは颯爽と先を駆けて行った。
ルイスは一度振り返ったスリルに思いきり手を振って、宝が見つかることとスリルの無事を祈った。