第四話 地下に建物……?
超短いです。
おかしい。
時間が地球と同じとは限らないけど、この惑星についてはお母さんから話を聞いている。
お母さんが言うには、ほぼ地球と同じ。送り出すところは日本時間と近いところ。そのはずだ。
……人の気配がまったくと言っていいほどしない。
お昼の一四時だ。誰ひとりの影も見えないなんてことは……。
「もしかして、捨てられた町……?」
これだけ発展しているのに、捨てられた?
そんなはずがない! 私はそう考えて、屋上を飛び移るのではなく、下に行くことにした。下に行けば、誰かと会えると願って。
だけど――降りた瞬間、けたたましい警報が鳴り響いた。
「っ、なに!?」
何が起きたの!?
私は一番下の地面に降り立って、次の瞬間に備える。全身に神気を巡らせ、念のために神気を少しずつ練りながら溜めておく。
『侵入者! 侵入者! 侵入者! 速やかに捕獲せよ! 速やかに捕獲せよ! 速やかに捕獲せよ!』
警報が途切れたと思えば、誰か、男の声が放送を轟かせる。
どこから――。
「……ドローン?」
半径五メートル地点の四か所の地面がスライドして開き、中から一機ずつ羽のないドローンが現れた。
音もなく浮き上がったそれは、どうやって浮いているのかわからない。
『警告。管理外固体に告ぐ。抵抗せず、捕獲されよ。抵抗するならば、こちらも武装を辞さない』
ドローンから聞こえたのは、さっきの放送と同じ男の声だった。
捕まるべき――?
どのみち、この惑星で生活基盤を築かないとダメだ。協力者も欲しいし……。
「どうしようかなぁ」
じりじりと距離を詰めてくるドローンを見て、抵抗しないでおこうと決める。何か危ないことがあれば、すぐに脱出すればいいだけの話なのだ。
最終手段としては、地球に一瞬で帰ることのできる一枚の紙。転移魔術式が刻み込まれたもの。お母さんが極限まで小さくしたけど、A4の紙一〇枚程度の大きさはある。
それを広げるだけの場所さえあれば、何も問題ない。
「とりあえず、これは収納しよっと」
キャリーケースは人前でも荷ほどきできるように持ってきただけ。収納すれば二度手間かもしれないけど、回収されるほうが厄介だ。
キャリーケースを収納して、私はおとなしく両手をあげる。
『いま何をした! 場合によっては強硬手段に移行する!』
カメラとかないと思ったのだけど……見た感じではそういったものは見えない。どう言い訳しようかと考えて、やっぱり黙っておく。
説明のしようがないから。
「抵抗しないので、優しくしてください」
神気を全身に巡らせて身体強化しているのは解かない。それに、練っている神気もいまある分だけは保持しながら練っていく。
最終的に脱出することになれば、何かと役立つはずだ。
『これより移送する』
四機が私から五〇センチメートルくらい離れた場所で滞空し、そのまま少し上昇する。それに合わせて、私の足が地面から離れた。
「え? えぇ??」
どういう仕組み……?
よくわからない原理で動くドローンに対して、私は困惑の表情を向ける。でも、ドローンは応えない。
浮かんだ私の足元に穴が広がり、ゆっくり私の体がドローンと一緒に沈み込む。
真っ暗な地下空間に連れ込まれ、念のために自分の周囲を感知するための神気を広げた。
感じるのは、だだっぴろい空間。
壁は見当たらないけど、地面はあった。高低差が激しい谷がたくさん……違う。これは、建物?
「私は、どこに連れて行かれるんですか?」
問いかけても、やっぱり反応はなかった。




