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第2章 迷い路Ⅱ

<1>



 金曜日。

 学校から家に帰った俺はナナクロにログインし、ナントカとかいう森の中継ポイントにある宿屋に戻ってきた。

 部屋を出ようとした時、メニューがゲーム内のお知らせが更新されたことを告げる。



□■□■□■



『ホワイトルート大陸にそびえ立つ、柱の謎を解き明かそう!』


 ミラーエイトは、PC向けMMORPG『ナナハシラクロニクル』にて、期間限定イベント『千死万行~森の代弁者~』を開催いたしました。イベントはビュリャジリャドゥドゥメの森の中にある柱近辺で行われる為、参加条件は必然的に『Dランク』相当の実力を有した冒険者であることです。比較的難度の高い、歯ごたえのあるものとなっております。

『千死万行』はストトストンの重要な存在である、柱の謎に迫るストーリーイベント(通称:柱イベント)です。期間限定のドロップ品や報酬はほとんどありませんが、森を抜け、ガーディアンを打倒し、柱に辿り着くと何かいいことがあるかもしれません。

 プレイヤーの皆さんは、まずはビュリャジリャドゥドゥメの森の攻略を目指しましょう!



□■□■□■



 ……イベントが始まったらしいが、柱イベントってなんだ。前の『太陽神の巨像』とは少し違っているような感じだけど。

 とにもかくにも柱に行かないことには始まらない。運営の言ってるように森の攻略を頑張ろう。



<2>



 宿屋を出て、森の奥へ繋がる出入口を目指す。兵士たちは慌ただしく動いているようだが、またフェネルが余計なことを言ったのだろうか。……そういや、案内役の兵士がどうとか言ってたな。下手するとここいらの連中が全員ついてくるかもしれない。何せお姫さまがノコノコやってきたのだ。アレだ。偉い人に振り回されるってのはどこも同じなんだな。

 中継ポイントは大して広くない。すぐに出入口に到着したが、フェネルの姿はどこにも見当たらなかった。


「ヤサカ・ナガオ」


 待ちぼうけくらうのかと何となく思っていたら、物陰から声がした。

 振り向くと、森の太い木からフェネルが顔を覗かせている。そんなところで何をやってんだ。


「かくれんぼでもしてんのか?」

「遊んでいるのではありません。……兵たちが皆、私たちについてくると言うのです」


 やっぱりそういうことになってたか。


「ついてきてもらえばいいじゃんか」

「そうはいきません。巻き込むわけにはいかないのです」

「言ってもさ、兵の人たちだってお前を行かせて死なれでもしたらたまったもんじゃあないだろう」


 フェネルは渋面を作る。


「彼らが咎を受けないように一筆したためてきました。その心配はありません。ありませんが……」


 俺としちゃあ大人数で行くのは安心出来る。ただ、刹那やろいどとぶつかれば全滅必至だろう。犠牲者は少ない方がいいって考え方も出来るな。


「そんじゃあこのまま奥に行くとするか」

「ええ、その方がよいでしょう」


 しかしアレだな。


「どうしました?」


 フェネルは木の幹から姿を現して先を急ごうとしている。


「いや、お前とこうして一緒に戦うなんて、ついこないだまでは考えもしなかったからさ」

「いいから急ぎますよ」



<3>



 中継ポイントを出てしばらく歩いていると、モンスターに囲まれている人が見えた。何者かは知らないが見殺しには出来ない。


「助けるぞ」

「そのつもりです。私が先に仕掛けます。お前には私のフォローを」

「分かった」


 俺とフェネルは得物を構え、地面に転がっている小石や木の枝を蹴飛ばしながら駆ける。

 モンスターに襲われているのは俺と同年代の少年だった。……昨日にも会った、ジンという兵士だった。


「じたばた動くなよ! 一緒に斬っちまうから!」


 フェネルが羽の生えたモンスターに一撃を見舞う。ヘイトがこっちに向いた瞬間、俺は《横薙ぎ》を発動。HPの少ない雑魚は黒い霧と化した。

 ジンは頭を庇いながら姿勢を低くしている。俺とフェネルは彼の傍に立ち、近づいてくるモンスターを押し返す。

 まだ先は長い。SPを温存したかったが、俺は更にスキルを発動。《赤々とした拳》をも使い、剣と拳で周囲のモンスターを一掃する。俺の死角に回り込んだ、あるいは討ち漏らした敵はフェネルが仕留めていた。敵に回すと恐ろしかったが、味方になるとこうも頼もしくなるか。


「終わりましたね」


 フェネルは血ぶりした得物の構えを解く。俺はグラディウスを鞘に戻し、ジンに手を差し出した。


「怪我はないか?」

「あ、ああ。あっ、アンタは……」

「八坂長緒だ。そっちはジンだったよな? 昨日も会ったな」


 ジンは何度も頷く。緊張しっ放しだった彼の表情が緩んだ。


「いやあー、助かった。いきなり魔物に囲まれちゃってさ。ありがとうな、ナガオ。そっちの人も……助かり、まし……」

「いいえ、お気になさらず」


 ジンの顔が強張る。


「ふぇ、ふぇね……ひっ、姫さま……!? ど、どうしてこのような、とっ、ところに」


 ああー、そりゃそうなるよなあ。

 ジンはあたふたしまくっていた。フェネルは俺を見て顎をしゃくる。仕方ないから、俺が代わりに説明することにした。


「俺たちは柱に向かってるんだ。言ったろ、俺はフェネルのお供だって」

「アンタも……?」

「それより、お前こそここで何をしてたんだよ。一人か?」

「お、俺は」


 フェネルは小さく頷いた。


「案内役のものですね?」


 ジンはきょとんとした顔になるが、すぐに首を縦に振る。彼は立ち上がり、姿勢を正して敬礼した。


「はっ、そうであります! セリアックより姫さまの案内をするようにと!」

「やはりそうでしたか。流石はお父さま。私の想像より早いとは」

「地図もとって……持ってきておりますから、このジンにお任せください」


 案内役はこいつだったのか。


「けどさ、案内役のくせに俺たちより先に進んでどうすんだよ」

「あ、あー。それはデスネ」

「仕方ありません。私たちが先に行ったと思ったのでしょう」

「そっ、そうなんです!」


 ……なーんか調子がいいんだよな、こいつ。まあいいか、悪いやつには見えないし。


「それでは出発しましょう!」


 ジンは俺たちを先導するつもりなのか前に出て足を進める。おい、モンスターが横から迫ってんぞ。



<4>




 俺、格闘家。フェネル、槍兵。ジン、兵士(剣士に近いのだろうか)。俺たち3人はパーティを組み、森を進んでいた。

 案内役らしいジンは地図を広げながら、あちこちに視線をさまよわせている。今にして思えば、ジンは案内役としては不適当な気がする。確か、こいつはこの森に来るのが初めてと言っていた。地図は持っているらしいが、そんなやつをフェネルの案内役に指名するだろうか。


「なあ」


 俺は口を開きかけたが、木々の向こうからダンゴムシのような姿をしたモンスターが転がってくるのが見えた。


「話は後です」


 フェネルは接近してきたモンスターを刺し殺す。戦闘は楽だが、やはりモンスターの数が多い。ちょっと歩いただけでエンカウントしやがる。


「このまままっすぐ進みましょう」


 ジンは馬鹿でかいリュックサックを担ぎ直し、俺たちの前を歩き出した。

 俺は溜め息を吐く。歩いても歩いても、右も左も木、木、木、木ばかりだ。変わり映えのしない景色は少しずつやる気というものを削り取ってしまう。油断してはいけないだろうが、戦闘もフェネルがいるから作業に近い。

 歩いて、モンスターを倒す。

 RPGってのはそれだけのゲームかもしれないが、流石にやばいな。


「なあ、ジン。柱までどれくらいかかりそうなんだ?」

「え? ……そうだなあ。途中で休憩も挟むし、夜通し歩くのも無理だろ?」


 俺は頷く。明日は土曜日で休みだが、一度くらいは家に戻っておきたい。


「明日は朝から進むとしたら、着くのは夕方くらいじゃないかな」

「……結構かかるんだな」

「この森は広いからな」


 俺はもう一度溜め息を吐き出した。


「なあ」


 俺は口を開きかけたが、木々の向こうからダンゴムシのような姿をしたモンスターが転がってくるのが見えた。


「話は後です」


 フェネルは接近してきたモンスターを刺し殺す。戦闘は楽だが、やはりモンスターの数が多い。ちょっと歩いただけでエンカウントしやがる。


「このまままっすぐ進みましょう」


 ジンは馬鹿でかいリュックサックを担ぎ直し、俺たちの前を歩き出した。



<4>



「なあ」


 俺は口を開きかけたが、木々の向こうからダンゴムシのような姿をしたモンスターが転がってくるのが見えた。


「話は後です」


 フェネルは接近してきたモンスターを刺し殺す。戦闘は楽だが、やはりモンスターの数が多い。ちょっと歩いただけでエンカウントしやがる。


「このまままっすぐ進みましょう」


 ジンは馬鹿でかいリュックサックを担ぎ直し、俺たちの前を歩き出した。……ん?


「なあ、ちょっと待ってくれ。ストップ」


 俺は立ち止まり、メニューを呼び出して現在位置を確認する。『ビュリャジリャドゥドゥメの森 エリア2』とあった。

 フェネルとジンも立ち止まり、俺の方へ振り返る。


「どうしたと言うのですか」

「ああ、歩かなきゃ先には進まないぞ」


 そんなことは分かってる。だけど、俺は妙な違和感を覚えていた。


「さっきから同じところをぐるぐる歩いてる気がする」


 ジンは周囲の様子を見て、それでも首をひねった。


「……いや、確かにそう見えるかもしれないけど」

「地図を出してくれよ」

「あ、ああ。これだよ」


 ジンの広げてくれた地図はかなり簡素なものだった。話を聞くに、やはりこの森は広大で人の足だけではその全貌を把握できないらしい。むしろここまでの地図を作っただけでも凄まじいとすら思えた。


「ダメだ。地図を見てもいまいち分からねえな」


 俺は頭を振り、目を瞑る。フェネルは何か考え込んでいたらしいが、ふと、槍を構えて手近なところにあった木を刺して傷を作った。


「ハシラサマの森ですが、この場合は致し方ありません。ヤサカ・ナガオ。お前の疑念はもっともです。ですからこれで確かめましょう。本当に同じ場所を歩いているのなら、私が傷つけた木をもう一度目にすることになるはずです」

「なるほどな。よし」


 俺はフェネルに刺された木の幹に、グラディウスで『ヤサカ・ナガオ』と彫り込んだ。フェネルはあまりいい顔をしなかったが仕方ない。



<5>



「……想像はしてたけどな」


 俺たち三人は同時に息を吐き出した。やはり、俺たちは同じ場所を歩かされていたらしい。歩いて歩いて、件の木に辿り着いてしまったのだ。その木には間違いなく、フェネルのつけた傷と俺の名前が彫り込んであった。


「どういうことなんだよ、これ」


 ジンはその場に座り込んでしまう。気持ちは分かる。

 俺はもう一度メニューを開いて現在地を確認する。分かっちゃいたが『エリア2』のままだった。


「幻惑の魔法でしょうか。何者かが仕掛けたのかもしれません」


 その可能性も否定できないが……俺の考えでは、これはイベントの仕掛けではないだろうか。先行した刹那たちが俺たちの進行を阻む為にやっているのだとも思ったが、あいつらほどの戦闘力なら回りくどい真似をしなくても邪魔者を容易に排除できるだろう。

 となると、何かやっているという可能性としては『千死万行』とかいうイベントのが高い。このエリアを抜ける為には何か条件があってもいいはずだ。


「仕掛けられてんならそれをどうにかするしかないってことか」

「どうにかって、アンタどうにか出来んのかよ?」


 やるしかない。根っこのところはストトストンだってゲームと変わらない。


「この辺りを根こそぎ調べてみよう。何かおかしなものが見つかるかもしれない」




 何か見つかるかも。

 そう思っていたんだが、結局、怪しいものは何も見つからなかった。


「あぁー、どうすりゃいいんだよ……」

「このままでは……」


 言いつつ、フェネルはモンスターを槍で突き刺して仕留めている。


「もう嫌だ! もうたくさんだ!」

「あっ、おい!」


 ジンはリュックサックを放り投げて駆け出してしまった。もはや追いかける気力も俺には残されていない。

 だが、ジンが走り去ってから数分としない内に、やつは俺たちの前方の道から戻ってきた。ジンは意味のなさない声を発しながらその場にうなだれた。


「なるほど。一帯がループしてるんだな」

「冷静に言うな! 戻ることも出来ないじゃないか!」


 どういう条件でループをしてるんだ?

 もしかすると、俺たちの行動がトリガーになってるのかもしれない。このままではどうしようもない。閉塞感を打破する為に今までとは違う行動をしてみるのもいいかもな。


「フェネル」

「はい、どうしましたか」

「ちょっと踊ってみてくれよ」


 フェネルは無言で槍を素振りし、俺を睨んだ。違うんだ。


「ちゃんとした意味があるんだって」

「この上、私に道化になれとでも言うのですか」

「俺たちはこの森に捕まってる。同じことを繰り返してるだけじゃ次のエリアに行けないんだ。だから違う行動をすればこの事態を打開出来るかもしれない」

「嘘偽りないのですね」


 少なくとも俺はそう信じている。


「だから踊ってみろよ」

「何をにへらと笑っているのですか……」


 あ、しまった。つい。


「まったく。……やはりお前は闘技場でのことを根に持っているのですね」

「そんなことないよとは言い切れないよな」

「私は。私は、戦う以外に何も出来ない女です。お前の知っているアニスやドリス、それ以外の妹たちとは、私は違いますから」


 そう言うフェネルの表情は酷く沈んでいて、俺はそれ以上追及する気にはなれなかった。

 気まずくなってきた時、ジンが木々の向こうを指差して短く叫ぶ。またモンスターが現れたのだろう。よし、やれフェネル。しかし彼女は槍を構えない。

 ダンゴムシみたいなモンスターもまた、俺たちを無視してころころ転がって道を横切っていくだけだ。何だかさっきまでバシバシにやられて可哀想だったから、今回は見逃すことにしよう。

 その時だった。『新しいエリアが開放された』というメッセージを、メニューくんが伝えたのは。


「……どうしたんだよ、ナガオ?」

「あ、ああ。えーと」


 なんだ?

 今、俺たちは何かしたか? それとも一定時間が経過しないと次にいけない仕組みだったのか? ……あ。ちょっと待てよ。そういや、さっきのモンスター。今まではフェネルがバシバシ突き刺してたけど、今は見逃したよな。それがトリガーだったのかもしれない。だとすると、えらい意地の悪いゲームだよな。ノーヒントだし。


「先に進めるようになった。と、思う」

「え? ホントかよ!?」


 急に元気になったジンはリュックサックを担ぎ直して駆け出していく。

 俺も歩き出そうとしたが、フェネルがいつまでも浮かない顔をしているのが妙に気にかかっていた。



<6>



 それから。



「うわっ、また同じとこに戻ってきちまったじゃないかよ!」

「ええ……? おっかしいな。モンスター無視したら行けると思ったのに」

「ならば徹底的に倒すとしましょう」



「分かれ道だ。さっきは右に行って戻ってきちゃったんだっけ?」

「左じゃなかったか?」

「右です」



「おぉいジンッ、サボってんじゃねえよ。モンスターがこっちに来てばっかりじゃねえか」

「慣れてないんだからしようがねえじゃんかよ。それにな、俺は案内役だぞ。戦力として数えてくれんなって」

「だったらせめて大人しくしててくれよ。動き回って別のやつ引き連れてくるとかテロもいいとこだからな」

「はあ? 何言ってるかさっぱり分からないって」

「なんで分かんねえんだよ!」

「喧嘩する元気があるなら私に手を貸してもらえませんか」



 まあ、色々あったけど。

 俺たちはループする森を少しずつ攻略していった。



<7>



《エリア6》に辿り着いたところで、俺たちは小屋を発見した。セリアックから柱へ向かう兵たちも利用しているものだから、朽ち果てているということはなかった。


「地図にも書いてあったっけな。どうする?」


 俺はフェネルの様子を窺う。彼女は周囲に気を配った後、息を一つ零した。


「もう夜も深くなってきました。見通しも悪いですから、今日はここまでにしておきましょうか」


 俺はホッとした。ジンはもっとホッとしていた。

 もう結構いい時間だ。一度家に戻って、飯と風呂を済ませてベッドで眠りたい。


「フェネル様、周囲の警戒はこのジンにお任せください。ゆっくりと御身を……ええと、休ませるようにしてもらった方が」

「お前の忠節に感謝します。……ヤサカ・ナガオ。明日は朝から動きます。いいですね」

「ああ、大丈夫だって」


 フェネルは小さく頷き、小屋の中に入っていった。俺とジンは同じタイミングで息を吐き出す。そうして、顔を見合わせた。


「いいのかよ、ジン。お前だって休みたいだろ」

「外で休む。さすがになあ、姫さまと同じ場所じゃ寝られないよ」


 そりゃそうかもな。俺はセラセラだの王様だの姫さまだのどうだって気にしちゃいないが、ジンからすると『あの』フェネルだって天の神様のような存在なんだろう。


「察するよ」


 俺たちは小屋の前に座り込む。ふと、ジンが森の地図を広げた。今は『エリア6』。一時はどうなるものかと思ったが、一応、行程の半分以上を進んだことになるらしい。


「ナガオはフェネル様に気後れしていないんだな」

「俺は外の世界の人間だからな」

「冒険者ってやつだよな」


 ああ、と、俺は地図を見ながら頷く。


「そんないいもんじゃないけどな、俺は」


 俺はジンの横顔を、盗み見るようにして認めた。


「なあ、ジン」

「んー?」

「お前さ、案内役とか、兵士とかじゃあないんだろ」

「……ん」


 ジンは少しの間だけ考え込んでいたが、


「まあ、うん。違うよ」


 そう言った。てっきり嘘を吐いて誤魔化すものかとばかり思っていた。


「ナガオ。アンタが気づいてるってことは、フェネル様だって気づいてるってことだと思う。だけど信じてくれ。俺は別に、アンタらに悪いことをするつもりはないんだ」

「どこまでが嘘なんだ?」

「セリアックの兵士ってところさ。俺は確かにセリアックに住んじゃいるけど、それだけ。ただの一般市民なんだ」


 ただの市民が身分を偽って、俺はともかくフェネルを欺いてまでこんなところに来るだろうか。


「俺は確かめに来たんだ」

「……何を」

「なんで兄貴が死ななきゃいけなかったのかって」


 兄貴が?

 ジンは俺の顔をじっと見つめた後、話を始めた。

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