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第2章 姫に心をⅡ

<1>



「なあ、機嫌直せよ」


 スィランは俺に背を向けて寝転がっていた。

 今日の個人戦が終わって、俺たちはまた小部屋に戻されたのだが、スィランは口を利いてくれなかった。何故かというと、俺が彼女の試合中、全然別のことに気を取られていたから、らしい。


「どっちにしたって控え室からじゃあ試合を見れないんだし」

「おい。おい口を開くんじゃねえ。むかっ腹が立ってんだ。それ以上喋るとぶちのめすからな」


 意外と子供っぽいやつである。

 俺は一度ログアウトし、自分の部屋に戻ることにした。



<2>



 現在時刻は『23:00』。俺はログインし、小部屋に戻ってきた。ちょうど、スィランが立ち上がって伸びをしている時に戻ってきて、目が合ってしまう。


「……今日はもう帰ってこないと思ってたぜ」

「ここで朝を待つのも、意地の一つだからな」

「そうかよ。で?」

「で、ってなんだよ」


 スィランは壁に背を預けて座り込む。


「あんた、スィランの試合中にどこ行ってたんだ?」

「人に呼ばれたんだよ」

「……もしかして、誰かがあんたを買いに来たのか」


 よく分かったな。俺は頷いて答えた。


「マジかよ。スィランより先にあんたがそうなるとはな。相手は誰だ? どこのあばずれだよ?」

「フェネル・セラセラだよ」

「冗談が上手いな、あんたも」

「いや、マジなんだけど」


 スィランは固まった。そうして、頭に手を遣って天井を仰いだ。


「セラセラの姫さまが会いに来たのかよ。くそ、あんたについてたのは死神だけじゃなかったみたいだな。それで? いくらでてめえを売ったんだ?」

「売ってない。俺は買われるつもりはないからな」

「……あんた、どこまでイカれてるんだ? ちくしょうムカつくぜ。スィランと代わって欲しいくらいだ」


 俺が逃げればスィランも、他の人たちも殺されるかもしれないのか。気が重い。


「今度会ったらスィランのことを推薦してやるよ。フェネルってのは死ぬほど性格の悪い女だけどな」

「性格なんてのは金の後についてくるもんだ。スィランは気にしないね」


 ともかく、少しはスィランの機嫌もよくなったらしかった。



<3>



 翌日。木曜日。

 俺は学校から戻ってすぐにナナクロへログインした。何度か失敗して奇声を発しかけたが、どうにかして小部屋へ戻ってくることに成功した。

 フェネルが先走らないかが少し不安だったが、小部屋には五体満足のスィランがいたのでホッとする。


「まだ試合は始まってないみたいだな」


 俺がそう言うと、スィランはゆっくりと目を開けて体を伸ばした。


「昼間にもやってたんだけどな。スィランたちの出番はそろそろか」

「ああ、そうか。そりゃよかった」

「よかった? ……あんたの顔色、男前が台無しだぜ」

「そんなに悪く見えるか?」

「今にも倒れそうだ」


 あまり寝られていないからな。こういう場所で熟睡できないってことは、俺は案外繊細な神経なのかもしれない。

 とはいえ俺たちの都合なんてお構いなしに世界は回る。今日も兵士が呼びに来て、地下通路を歩いて、闘技場の控え室へ。そこで武器を選び、試合まで出番を待つ。

 俺とスィランは長椅子に座っていたが、ふと、周りの様子が気になった。


「なあスィラン。昨日より人、減ってるよな」

「ん? ああ、そうだな。明日にはもっと減ってるだろうぜ」


 何とも言えない気分になりながらも、俺は嫌なことは早いところ済ませてしまおうと、兵士に名乗り出た。


「よし、二部の初戦はお前でいい」


 二部。……昼間にも試合は行われている。そちらは一部リーグってところなのかもしれない。


「客を湧かせろよ。その為なら死んでもいいからな」

「考えておきます」


 俺は剣を装備し、通路を進んでゲートの前に立つ。観客席から伝わる、薄暗い熱気が俺の体を震わせた。

 やがて、鉄の門が軋む。地獄へ行けと背中を押される。俺はゆっくりと長く息を吐き、前を見据えた。



<4>



『†ザンギリ†』

 こいつが俺の相手の名前らしい。昨日と同じ剣士風の装備をしているやつで、俺と同じくらいの年代のアバターである。少し顔つきが幼いが、何とも凶暴そうなツラをしていた。

 もう一つ。昨日の対戦相手と違っているのは、ザンギリが二刀流ってことだ。

 ザンギリは両手に構えた短めの剣をくるくると回しながら、挑発的な笑みを浮かべている。


「……ん? あんたってプレイヤーなの?」

「まあな」

「へえー。変わってんな。そういう参加方法もあったのか。ま、いいや。ちょっと今日は急ぎで倒させてもらおっかな」


 観客の歓声が聞こえなくなる。もう慣れたのか、それとも俺は、集中しているのか。

 一足飛びで距離を詰められるも、俺はロングソードで二刀による攻撃を防いだ。甲高い金属音が何度も響く。


「このっ……!」


 速い。

 手数が多い。

 距離を離して《戦意上昇》を使いたい。ヘリオスソードを呼び出したい。


「粘るじゃん! そんじゃあ《韋駄天アクセル》ッ!」


 ザンギリの体に青いオーラがかかる。スキルを発動したのか。名前からして、自分の速度を高めるものっぽい。


「そぉおおおおおらぁあああああ!」


 まるで見えない。

 俺はロングソードを前に出し、引けた腰のままでバックステップを試みた。だが、気づかない内に後ろへ回り込まれてしまう。

 ザンギリは体を回転させながら二刀を振るう。俺は全てを防ぎ切れずにダメージを喰らい、軽く吹っ飛ばされた。

 やばい、このままだと負ける。負けたら死んじまう。

 中空に浮遊しつつ、ロングソードを手放してメニューを開く。不格好に着地しつつ、ヘリオスソードを呼び出して、そいつを構えた。


「《戦意上昇》!」


 ステータスを上げてザンギリの攻撃に備える。……いや、自分から突っ込め。手を出されても防ぎ切る自信はない。

 俺は前に出る。だが、ザンギリは俺よりも素早い動きで死角に入り込もうとしてくる。一々側面を取られて鬱陶しいことこの上なかった。

 だったらこうだ。


「《横薙ぎ》だ、この野郎」


 側面に回り込まれるのを予想して横切りを発動させておく。狙いは的中し、ザンギリのHPを僅かではあるが奪い取った。


「はぁあ? うっぜ」


 ザンギリの動きが止まる。俺は大上段から剣を振り下ろす。


「ああっ、うぜえって!」


 剣を振り下ろす、振りをして、ザンギリの回避モーションに剣を横薙ぎにして叩き込む。

 ザンギリは二刀を無茶苦茶に振り回すので、俺は大きめに距離を開けて、アリーナの柱を間に挟んで攻撃を躱した。彼の連撃を受けて柱が斬れる。そうしてゆっくりと、真っ二つになった柱が倒れた。

 柱が倒れた衝撃で砂煙が立つ。ザンギリは姿勢を低くして煙に紛れた。俺はさらに下がろうとしたが、横合いから衝撃を受けて吹っ飛ぶ。


「だから、はええって!」

「死ィィィィイイイイいいいいい!」


 声がする方とは逆側へ身を捩らせた。俺がさっきまで頭を置いていた地面に剣の切っ先が突き刺さる。急いで立ち上がり、横薙ぎを発動。これは牽制だ。ダメージを喰らうのを嫌がったザンギリがステップで後ろへ下がる。

 息を一つ。……こっちには自分の意志で使えるスキルが二つしかない。横薙ぎも戦意上昇も決め手にはならないだろう。だったら上手いこと立ち回るしかないが、相手の方が素早くてはどうしようもない。殴り合いに持ち込んでも相手のが火力は上だ。あれ? やばくね?


「あ、しま……!」


 足りない頭を使い過ぎた。ザンギリの接近に気づくのに、少しだけ遅れる。


「抹殺ゥウウウウウウウ!」


 ヘリオスソードを振るった。その次の瞬間、俺とザンギリの間にメニューくんが割り込んだ。こんな時に出てんじゃねえよ!

 視界が塞がったせいで攻撃を捌き切れず、俺はまたダメージを受けて後方へと転がされる。しかも、


「……ええぇ、マジかよ」


 今の攻防でヘリオスソードが壊されてしまった。やべえ。もう武器なんて持ってないぞ、俺。



<5>



 結構長く使っていたからヘリオスソードには愛着があった。よくもやりやがったなって気持ちはあったが、俺はともかくさっき手放したロングソードを拾いに行こうとする。


「おせえぇえええ!」


 しかし、ザンギリには見抜かれていたようで腹を思い切り蹴られた。ダメージ自体はそんなにないが、俺の動きが止まる。


「死ぃやああああああああああ!」


 一々うるせえんだこいつは!

 俺は地面を転がり、這いつくばるようにして攻撃を躱した。やべえ、もう何でもいいから武器になりそうなものを呼び出すしかねえぞ。

 と、ザンギリから距離を取りつつメニューを操作しているところで、どうしてさっきメニューが現れたのかを知った。

 ヘリオスソードのレベルがマックスになっていたらしい。そして、新しいスキルを覚えていたみたいだった。


「あン? あんた何して……させるか!」


 俺は急いで覚えたスキルをスロットにセットする。ああくそう、ややこしいシステムにしやがって。

 メニューを操作しながら逃げ回る。我ながらダサいが、その甲斐はあった。

 ザンギリの得物が間近に迫る。俺はあえてやつに飛び込み、そのままもつれてお互いが地面に倒れ込んだ。


「どきやがれええ!」


 俺は体を起こし、ザンギリの体へ馬乗りになっていた。この至近距離なら当たるだろ。


「《直視不可曙光エオス》!」

「う……おおっ!?」


 俺の体に黄金色のオーラが纏わりついた。同時、ザンギリにステータス異常が付与される。


「泥臭くて悪いな!」


 ドーンナックルを装着した左手を強く握り締めて、ザンギリの顔面へ叩きつけた。真上から振り下ろすように。両腕を交差させてガードしていても関係ない。拳を縦にしてガードの隙間を狙って殴り続ける。


「ウオアアアアアア、ヤロォ!」


 ザンギリが俺の体を跳ね除けて、立ち上がりざまに斬りつけてくる。しかし攻撃は当たらない。素早い連撃は空を切り続ける。


「っ!? なんだってんだ!?」


 無灯ブラックである。

 俺がさっき覚えたスキル《直視不可曙光》はデカドロス島で戦ったボス、ヘリオスも使っていたものだ。金色のオーラを身に纏い、そのオーラを目にしたものに無灯の状態異常を付与する。そうして物理攻撃の命中率を下げているのだった。

 あぶねえ。ありがとうヘリオスソード。最後の最後まで働いてくれて。

 俺には武器がないが、ザンギリだって攻撃が当たりにくい状況だ。さっきのマウントからの打撃で、やつのHPも残り少ない。

 こっちも直視不可曙光を何度も使えるってわけじゃない。このスキルはSPをかなり食うのだ。


「行くしかねえ!」


 俺は姿勢を低くしながら突っ込んだ。ザンギリは少しの間、俺を見失う。


「通すかっ、通すかよ!」


 ザンギリの得物がまたも空を切った。俺はやつの腕に飛びつくようにして得物を奪う。俺は武器を持っていないが、こいつは持ってるんだよな。そこいらのものよりもずっといい装備を。


「か、返せ! 返せええェエェェ!」

「ふぅん!」


 俺はザンギリの得物で、こいつの腹に一撃を決めた。ザンギリは吹っ飛び、柱に身体をぶつけて、ずるずると崩れ落ちる。まだHPがギリギリ残っているらしく、光にはならなかった。


「……かっ、かえ」

「返すよ、うるせえな」

「か……あっ」


 あっ。

 得物を投げつけると、ザンギリはそれをキャッチできなかった。彼の武器は、彼の腹に刺さり、その衝撃でHPが0になる。

 光と化したザンギリはアリーナから逃げるようにして飛んでいった。その瞬間、観客席から怒号のような声が聞こえてくる。ブーイングでも受けているのかと思ったが、違った。どうやら俺は歓声と喝采を浴びているらしかった。

 俺は未成年だ。まだ酒なんて飲んだことなかったけど、酔うってのはこういう感覚なのかもしれないと思った。



<6>



「よくやったぜ、元『腰抜け』。何をやったんだよ、観客が湧いてんじゃねえか」

「まあ、何とか帰ってこれたよ」


 アリーナから控え室に戻ると、スィランにばんばんと肩を叩かれた。痛い、痛い。ザンギリの攻撃より効きそう。


「次はスィランが行ってくるからな、今度はここでいい子にして待ってろよ」


 スィランは上機嫌だ。アリーナへ行こうとする別の奴隷を突き飛ばして、空手で通路を進んでいってしまう。まあ、あいつならそこいらの冒険者には負けないだろ。

 俺は長椅子に座り、頭を抱えた。大事な武器がなくなってしまった。今後は、この控え室で支給される質の悪いやつを使っていくしかないのか。


「……いや、無理だな」


 弘法、筆を選ばずという。

 しかし俺は弘法ではない。レベルの低さを補う為には強い武器が欲しいところだ。


「あ、あのー、すんません」


 俺は近くにいた兵士に声をかけた。意外にも、その人は好意的な笑みを返してくれる。


「おう、さっきのやつか。ちらっとゲートから見てたぜ」

「あ、そうなんですか」

「中々やるかもしれないな、お前。で、なんだ?」

「自前の武器が壊れちゃったんです。……その。武器屋とか、この辺にないですか」


 兵士はアホかと言った。


「奴隷が自由に買い物できるかよ。どっかのえれえ人にでも買ってもらえりゃあ話は別だがな」

「やっぱダメですか」

「……いや、ダメもとってことはあるな。お前、金はあるか?」

「多少は」


 俺は奴隷だが冒険者でもある。金はメニューくんに預けているので、NPCに取り上げられることはない。


「だったら『イシトラ』の爺さんに聞いてみるか……?」


 お? イシトラ? 人の名前なのだろうか。


「何とかなりますか?」

「ちょっと待ってろよ。ダメもとだからな」


 兵士はどこかへ立ち去ってしまう。少し不安になったが、しばらくすると戻ってきてくれた。


「実はな、イシトラってのはドワーフの爺さんで、一部リーグの戦奴なんだが鍛冶職人でもあるんだ。そいつはめっぽう腕がいいもんだから、試合を免除されて武器作るのに専念してるわけだ」


 そんな人もいるのか。


「もしかして、その武器を使えるんですか?」

「いや、イシトラの武器を使えるのは基本的に『チャンプ』だけだ」

「チャンプ?」

「この闘技場の王者だよ。もう何年も前からずっとだ」


 何年も。

 俺はすげえと思うより、この場所に何年もいることに対して寒気を感じた。


「イシトラに会わせてやるよ。いいっすよね?」


 兵士は、上司らしき別の兵士に話しかける。上司兵士さんは小さく頷いた。


「こう言っちゃあなんだが、あんた、フェネル様のお気に入りらしいからな」

「……ああ、そういうことっすか」


 気分が落ち込む。フェネルに借りを作ったことになるのか。だけど、せっかくだから利用させてもらおう。


「イシトラに会ってみろ。気に入られれば武器を貸してもらえるかもしれねえぞ」

「いつ会えますか?」

「お前の出番は終わりだ。今から会わせてやる。その前に、手枷をしとかねえとな」


 俺は兵士に先導され、手枷をはめて、控え室を出た。よし、これで武器の問題が解決するかもしれない。



<7>



 地下通路をひたひたと歩く。

 どうやら、俺たちのように闘技場へ来たばかりの奴隷は『二部リーグ』の参加者として試合をやるらしい。その二部リーグで人気を集めたり、勝ち続けた強い奴隷は一部リーグに上がるそうだ。

 一部リーグに参加する奴隷は待遇が良くなり、俺やスィランのいる収容所めいた施設とは違うところで寝泊まりできるそうだ。羨ましいとは思えなかったが。


「こっちだ」


 兵士は角を曲がる。

 一部リーグの控え室は俺たちの使っているのとは反対側に位置しているらしいな。全ての施設は地下通路で連結している。よくもまあこんなもん作ったよな、ストトストンの人たちは。

 地下通路を進み、坂道に差し掛かる。どうやら地上に出るらしい。

 外からの明りに照らされて、俺は目を瞑る。……奴隷の収容施設が見えた。あちこち見回すと、闘技場の周りには関連する施設が色々と建てられているらしかった。

 地上に出てから少し歩くと、とある建物の前で兵士が止まる。彼は建物の入り口にいた兵士と二三言葉を交わし、俺を中へと連れていく。

 今度は、俺の前と後ろ、左右に兵士がついた。少し緊張する。


「ここってなんなんすか?」

「一部リーグの戦奴が寝泊まりしている場所だ」


 へえ、ここが。

 そういや、何かアパートっつーか、寮みたいな雰囲気がするな。


「ここだ」


 やがて、兵士が建物の二階、ある扉の前で足を止める。


「イシトラ、客人だ。開けてもいいな?」

「おおう」


 部屋の中から野太い声が聞こえてきた。……つーか、やっぱり俺たちとは扱いが違うな。一部リーグの奴隷ともなると、やっぱ違うのか。


「入っていいぞ。妙なことしたら後ろから刺すからな」

「やだなー、そんなことしませんって」


 俺は兵士に続いて部屋の中に足を踏み入れる。少し驚いた。部屋は広いし、床には深紅の絨毯が敷いてある。調度品も置いてあるし、テーブルや椅子なんかも安物じゃあなさそうだ。


「客人たあな、珍しいこともあるもんだ」


 何より、中央の椅子に座って構えている、ずんぐりとした体躯の老人に驚いた。背は低いが横にでかい。見えている部位には傷があり、筋骨は隆々としている。そんでもって厳つい顔は髭だらけだ。もじゃーっとしていた。……ドワーフとか言ってたっけか、確か。


「かけな、坊主」

「あ、はい」


 この人が鍛冶屋のイシトラか。眼光は鋭く、声は重くて太くて腹に響く。俺はあっという間に委縮してしまった。超こええんだけど。

 すすめられて、イシトラの対面にある椅子に座る。兵士たちはドアの近くに控えていた。

 イシトラは俺の顔をじろりとねめつける。


「おれに用事があるってこたあ、武器を作って欲しいってことか」

「そ、そうです」

「…………立ってみろ」


 俺は言われるがまま椅子から立つ。イシトラは俺の体を頭からつま先までじろじろと舐めるように見ていた。


「坊主、いくつだ」

「十六です」

「お前さん、奴隷じゃねえな。冒険者だろう」

「はい。まあ、その」

「理由は要らねえ。だが武器が必要なのは確かってわけだ。いいぜ、工房についてきな」


 工房?

 不思議に思っていると、兵士たちがどよめいた。


「武器、作ってもらえるんですか?」

「そいつはまだ分からねえがな」


 とりあえず、武器を作ってもらえるという第一段階はクリアしたのかもしれなかった。

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