撃ち落とされて・・・
視界が真っ赤に染まる。
・・・何故?
そう思って手を額に当てようとして、動かないことに気づく。
あぁ、そうだ。私は撃破されてしまったのだな。
~~
彼との出会いは偶然だった。
中立国の首都、その商店街で迷っていた彼を書店に案内したのがきっかけだった。
彼はまだ20にも届かない、それどころか下手をすれば高等学校に通う年にすら
見られないかもしれない容姿をしていたが、聞けば数え年で19だといった。
彼の方は軍服を着ていたため、敵国の兵とこちらは分かっていた。
それでも助けたのは彼の、保護欲をそそる雰囲気のせいだろうか。
幸いにも、こちらは私服だったため彼に敵だと気づかれていないだろう。
案内の礼、とカフェテリアで茶を馳走になり、そして別れた。
それだけだったが、私は彼の事が頭から離れることは無かった。
~~
『今、ハッチを開きますから!』
薄れる意識の中、彼の声が聞こえる。
これは、未練から来る幻聴だろうか。
それとも、本当に彼が助けに来てくれたのだろうか。
私のことなど忘れて、幸せになって欲しい。
一兵卒である私を助けたとして、彼が得られるものは罰しかないのだから。
私の理性はそう語る。
しかし、彼が助けに来てくれたのならとても嬉しいと考える部分もある。
ふふ、現金なものだ。たった今まで彼のことを切り捨てようとした私が・・・。
・・・あぁ、意識がいよいよ薄れてきた。
遠く、ハッチの爆ぜる音が聞こえる。
願わくば、彼が幸せになるような結果となりますように。