日常生活に異常は無い様です
5年後、エレミアは巷で知らぬ人はいないと言われる程の有名人となった。
剣聖王アルス、博識のエマと共に……この設定はえーっと…
「エレミア様?何ボーッとしちゃって?」
「いやこれは違うんだよ中二病乙とかじゃなくてせめて青少年の若かりし頃の誤ちと妄想としてこれは…」
「ちゅーにびょーおつ?もーそー?何それ?」
5歳の子が中二病とか妄想とか知ってるはずがなかった。自分が恥ずかしい。妄想位は弱々しい俺にも権利は在るはずだ。それくらいはいいだろう。
「いやいや、ただの夢の話だよだいじょぶだいじょぶ」
「へぇーエレミア様はどんな夢があるの?」
「様なんて着けなくて良いよって言ったじゃん」
「"シツジ"っていう人に呼び捨てはダメって怒られた」
「あの人か…なら仕方ないね」
ちなみに前回から1ヶ月。
その間にハーメルン・クルーラーによって私の折角の男口調復活も徹底封印されてしまった。アルスの呼び捨ても気に食わなかったらしく、様付けも強要されてしまったらしい。
「じゃあさ、二人でいる時は前通りにしよ?」
「そうだね!」
『お嬢様…このハーメルン、その程度対策をしてないとでもお思いか?』
壁に耳あり障子に目あり、扉のそばにはハーメルン。あの人は今、何処か他の場所で指示を他の人に飛ばしているはずなのだが、本当に隙がない
「「………ごめんなさい」」
「…よろしいですね…私めの事は気にせずお続けください」
「…話題…なくなったなぁー」
「エレミア様…口調がおかしいですよ」
「夢の話…言いたく無いなぁー
「口調直して!」
「だってさ?二人たけで夢の話しよ言いようたら執事見とんやで?面白くないよ」
「エレミア…様どうしたの?」
素が出てる俺とアルスだった。アルスは呼び捨て私は棒読みの適当な口調をひたすらする。……良い事思いついた。
「シラけちゃったな〜、外に余計なもんがいるしな〜、あ〜ぁ!面白くないな!」
「エレミア…様ってばぁ!」
さて…これでハーメルンさんが釣れれば俺の価値になる。しばらく反応を待っていると、球体がベッドの下からでてきて音を出す。
『お嬢様が口調直してくれるならば…』
「誰かがおらんくなったら元戻るかもな〜」
『………いいでしょう、私はこれから休憩ですので…それでは』
球体が部屋を出て行く。あの不愉快な圧迫感が消え、部屋が少し明るくなった様だ。これは…1ヶ月の闘争の末に得られた…
「やったねエレミア自由になったよ!」
「おい馬鹿やめろ」
「へ?」
「えあ…うん!そうだね!」
フラグが立ったが大丈夫だろう。ハーメルンさんもまさかそこまでしつこくはないだろうし。気を取り直してアルスとの会話に戻る。
「そう言えばエレミア様の夢ってなに?」
「様付けしなくてもいいよ〜」
「あれ…見てよあれ」
天井辺りにふわふわと浮いている球体がある。目玉みたいだ。まさか…あれって…
「ハーメルンさんの…魔術?」
「多分…」
「まだ戦いは…終わっていなかったというのか…?」
もう無理だ。何度も何度もあの人に立ち向かう勇気は出ない。もうあの人にも聞かれてもいい様な気がする。このまま貴族だったら叶わない夢だし。
「エレミア様さっきからおかしいよ?」
「あ、ごめん私の夢はね…」
「ここの領主になる事?」
「ううん違う、そんなんじゃない」
「なに?」
「冒険者さ!」
演出は大事だ。全身に電気を流し、自分の体を青っぽく光らせる。時々、空中放電した時のような弾ける音がする。
「危な!…え?」
「冒険者になりたいんだよ」
これは本当に切実な願いだ。こんないい世界に転生してきて、肝心の冒険が出来ないのではやりきれない。これだけは欠かせないだろう。
「え…?あの人の子どもなのに?」
「うん、お父様の子供なのに、ていうかむしろお父様の子供だから」
「へ〜」
「そうだよ?」
で?とかきそうな話し方でなんか怖い。
アルスが何を言っているんだとでも言うかの様に惚けている。もう人と話す事については克服したけど、で?という一文字疑問文、短文疑問文が凄く怖い。
でも帰ってきたのは
「僕の父さんは冒険者なんだって!母さんも!」
キラキラとさせた青色の目と、意外な解答だった。冒険者か。まさかとは思うけど、軽く問いかけてみた。
「え…じゃあ何で…」
お父様やっぱりある程度は貴族の色に染まってんのだろうか、気になる。でもたまたま知り合いでって事も…
「でも僕見た事ない!2〜3年前に冒険に行ったきり戻って来ないんだって」
「…あ……ごめん」
「大丈夫!すぐに僕の所に戻ってくるって!」
「うん、そうだね」
2〜3年前、大きな事はなかった微妙な時期だが、冒険者に死亡率0%は無い。不慮の事故でもあったのだろう。
「…コホン、アルスの夢ってなに?」
「…エレ…ア様……緒に………と」
「?聞こえないよ?」
「何でもない」///
「なに?教えてよ〜ね?」
「何でもないってば!」///
"コンコンコン"
「エレミア、入りますよ」
「入って良いよ」
「え?ちょ」
「エレミアはアルスといつも一緒ね」
「そうだよ」
「アルス、これからエレミアに魔術の修行つけるから借りるよ?」
「あ…はい」
「アルス!また後でね!」
「…またね!」
………………………………
……………
領主館外
「はい、まずはおさらいからね」
「はい!質問です先生!お爺様は何処へいかれたのですか!」
「あの人はあれでも領主なのでほっぽり出した1ヶ月分の仕事と常時の仕事に追われています」
「何やってんだか…」
「ルーは自業自得です、それよりもまずは火の初級魔法から」
ちなみにもう俺は初級魔法に限るけど一応使えたりする。攻撃魔法はファンタジー通りの火、水、風、土、雷の5種類ある。
ラウンドファイア、フローウォータ…とか言った具合だ。得意順に並べると雷、水、火、風、土。土は今でも失敗する。
ちなみに最近は自称を直した。
5歳式からの修正がほんと大変だった。俺は男だと数百回言い聞かせた後で精神修行(エロ妄想)の後やっとこさ男の精神の奪還にに成功した。
「早く見せて」
「あっ、はい!」
「ふふ、そんなかしこまらなくても」
俺は顔を熱くさせられるハメになった。でも5歳の女の子の赤面は可愛らしいとは思わないだろうか。いや俺はロリコンではない。ただちょっと可愛いな、と思っただけだ。下心なんて無い。だって今俺自身がそれなのだから。
「変な顔しないで早く唱えなさい」
「あ、うん…えっと…暗きを払い、人の心に炎あれ…ラウンドファイア」
「…ええ、問題ないわ…魔力が綺麗に循環してる」
魔力の循環なら最初にやったことだしな、他の小さいガキとはキャリアが違うのよ。といったところだ。また最近驕り出した気がする。もう一度気を引き締めよう。
「次は水魔法」
「清めの流れ、力を宿らせ押し流せ…フローウォータ」
「…ふむふむ…良い感じよ」
多分次は雷魔法だろう。これなら間違いなく出来る。何と言っても最も得意な属性だから。と思っていると意に外れた答えがかえってきた。
「土魔法」
「え?普通雷じゃないの?」
「最近は貴方が独自で魔法勝手に使ってるの私ちゃんと知ってるのよ?」
「雷魔法は無詠唱で出来るらしいわね…すごいじゃない!」
「でしょ?」
「…偏ってるでしょ?」
「う…」
「わかったらさっさと土魔法!」
「安寧の土、動かざるその意志を我に…ロックブレッド!」
「……でないわね…」
「前は出来たんだよ!?ロックブレッド!ロックブレッド!」
「頑張れ!」
「ロックブレッド!」
「…顔あんなに必死にしちゃって…可愛いわぁ」
そういえばエリスざお母様の血統だった。俺を弄って明らかに楽しんでいる。恐ろしい家族だ。ここはサディスティック一家か。
………………………
…………
一方エレミアの自室
「アルス君…君は剣術に興味はあるかね?」
「バーク…様?どうなされたのですか?」
「……強くなりたいかな?アルス君、娘の魔術自慢でちょっと不機嫌気味、不満があったのは分かっているよ?」
「え…」
「君はエレミアと仲良くしてくれている数少ない子だ…エレミアだけが強くなって自分だけ弱いっていうのは悔しく無いかね?」
「……えっと……まぁ…」
「私がつかっている剣技…君だけに教えてあげよう」
「ほんとですか!でもなんで…」
「そこは素直に喜んでも良いんだが…君は賢いね…なぜなら…」
「なぜなら…?」
「君と仲良くなりたいからさ、それに…」
「それに?」
「娘を守れるのは君だけだからね」
「…どういう…」
『バーク!!!またあなたは…ま…またエ…エッ…エッチな本買ってきて!!』
「魔王様がお怒りの様だ、さらば!」
「バーク様!お仕事は…」
「今月分はもう終わらせた!」
"ガチャ"
"バタンッ!"
『シェ…シェリ…』
『だーれが魔王ですか誰が!』
『いやこれは違うんだよ私が言いたいのは…』
『あなた…前言ったよね?次買ったら……重力魔法じゃ済まさないってさぁ?』
『許してくれ〜!!ジョゼが!ジョゼ勝手に持ってきただけなんだぁ!』
『逃げんな!ジョゼも後で処刑してやるわ!………私の前では身体能力など無意味という事を改めて教えてやろう…!』
「………すごい家族だ」
……………………
…………
これにて彼女の安寧秩序の平和な少女時代は終幕を迎える。
次の舞台は5年後、エレミアとアルスが10歳になった頃になる。
舞台はまだ領主館、バークの住む屋敷にて。
投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでしたm(_ _)m
次からはできるだけ早くしますのでよろしくお願いしますm(_ _)m
貴族編遂に終幕です!本場の人がみればわかると思いますが、私は関西の人ではありません。
失礼しました。