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"5歳式"後編

"他の貴族の子ども達とも仲良くなりたいなぁ…"

そんな事を考えていた俺はまずは男の子グループに入ろうとして…やめた。

前世の世界の中世ヨーロッパは男と仲良くなる女の事はよく思っておらず、そんな事をするのはマナーの無い者か、色仕掛けするかの二択だった。

俺の精神は男である。

しつこいかもしれないが、俺は流石に男なのに変態女またはそれに準ずる揶揄を受けるのは貴族としても、俺の精神衛生上としても許すべからざる事だった。

ただし女の子とは別。

体は女で心は男だからね!出来れば積極的に触れ合いたいというもの!

なので?私は?ボディチェックのごとく?さわさわしますよ?


「…あれ…?」


何という事でしょう。どのテーブルにも、テラスにも、シャンデリアの上にもいない。当然だ。大人しかいない。何か騒がしくなっている。

子どもは本来もう帰ってしまっているのか…ここからは大人の子ども自慢に入るのだろう。メッキを張っただけのマナーで俺はどの様な評価を受けるのかが気になって仕方ないけれど、他の子ども達の様にさっさと帰ってしまおう。他の子供達のようにさっさと帰ってしまおう。


大切な事なので二回いいました。


どちらにせよ"5歳式"は、人と対話する様な社交イベントではなく子ども達に場の雰囲気にならさせる為の場らしいし。俺は賢い人では無いので、そこら辺の理解はまるでない。

ニートにそこまで貴族を期待しないで欲しい。

5歳式は一泊して朝まで続くというとても変な式で、暗殺対象がゴロゴロしているので、暗殺稼業の人には良い…訳ではない。

流石に国の要人達とその御子息御令嬢が集う場所。それぞれの私兵に国中の精鋭騎士達が集う。

国の防衛はどうするんだと。

あと爆撃みたいなの受けたらどうするのだろう。

そうつっこみたくなる。

この世界はスケールがデカイ。どうせ結界魔法やらこの国最強の騎士やらが見張っているのだろう。そんな事を考えていると、ドアの前まで来た。会場に入る前渡されたプレートの番号を見る。


"フロアA_2_003"


大袈裟だねぇ…こんな一介の元ニートにこんな部屋を授けるこたぁなかろうに…


「ねぇねぇ…貴女って…エレミアお嬢様よね…?」

「誰…?」


後ろを向くとそこには麗しい、よりもむしろ可愛らしい女の子が目の前に立っていた。

目鼻立ちははっきりしていて、一つ一つのパーツが精巧で、でも決して不気味な感じもない可愛い子だ。

俺も貴族だけどこっちは貴族とヒッキーの雑種だ。生粋のお嬢様とは比べるのもおこがましい。


「え、うん…そうだよ?」

「やっぱり!エレミアお嬢様はすごいっておとうさまもおかあさまもいってたんだから!」

「え…あうん」


その子は本当に5歳らしい雰囲気だった。まくしたてる様なその貴族らしくない快活さに少し戸惑う。…可愛らしいお嬢様である。この国の人は茶髪が普通でたまに黒髪がいるかで割合は8:2と言ったところだろうか?だからたまに黒髪の人は差別されるらしい。

ちなみにこの子は茶髪でやっぱり幼さの強く残るつぶらな瞳や、ふっくらとして柔らかそうな頬をしている。眩しくておじさん見てらんないよ。


「お名前は?私はエレミア、エレミア・ヴァルヴィア、エレミアで良いよ」

「わたしは…エマ・グローレン!エマってよんでね!エレミア!」

「エマ…素敵な名前だね、友達になろ?」

「♪〜わぁ〜い!エレミアと友達になっちゃった!貴女のおへやでおはなしがしたいの!」

「良いよ!入って!」


"ガチャ"


「「おおー!」」


自分の部屋の様にカッコつけときながら二人とも感銘の声をあげる。本当に一人で使って良いの?ってレベルの豪華さだ。俺とエマは好奇心の赴くままにタンスの中身やらを覗いたりしている。


「…ねぇねぇエレミア!あのベットのところまで行こうよ!あそこでお話しよう?」

「エマ、童話のお話とかしない?」

「良いね!どんなお話知ってるの?」

「えっと…昔々あるところに…」


この終わり方、もはやテンプレである。元ニートに、約7年振りに友達が出来た。

すげぇ嬉しい。この調子で貴族を謳歌したいな!

しかしこれからの事を考えるとそんな期待も転生した俺には許されないらしかった。


…………………………

………………


5歳式の会場のはずれ、森林付近。夕日が落ちるか落ちないかの境目、二人の奇妙な男が歩いていた。

一人はシルクハットの若い紳士、もう一人はいかにもみずぼらしいボロボロの服…いや、布切れを纏っていた白い髪の老人が豪勢な建物を見据えていた。

勿論紳士が老人を助ける為ではなく、とは言っても老人が紳士に金をせびるわけでも無く、対等に、むしろ老人の方が紳士に対して不遜な態度をとっている。

これがもし他の人が見たら貴族に老人が老いぼれたかバカな事をしていると思うであろう、しかし現実は逆である。紳士は老人の機嫌を損ねない様に、話を黙々と聞いていた。


「カカカカカ!時にお前、戦争において、一小隊が最も警戒せねばならぬ事は何かな?」

「我々の存在でしょう」

「馬鹿者!違う!儂が言いたいのはそうでは無い、一番警戒するべき役職を言うておる!」

「それは指揮官では?」

「いや、違うのぅ…確かに指揮官は全ての中核になり得る存在じゃ、ある意味儂がこれから言う答えよりも警戒すべきやもしれぬ…じゃが、指揮官がいかに優秀とて部隊がそれに伴っているとは限らん…」

「ならば…歩兵?」

「何故お前はある種正当な事を言うかのぅ…それは儂の求めていた答えとは違う…儂の答えはその機動力すら鈍らせる…」


そう言っておもむろに手の形を大砲の様に形作る。その口径は大砲より少々小さいくらいで、見た目はかなり不恰好だ。


「戦争において警戒すべきは不意打ち、それを専門とする職業…狙撃手…!」

「偵察を発見、敵は5人、8時の方向、距離1800です」

「狙うは頭…5連魔力バースト」


"ガガガガガンッ"


……"ぅゎ……"


「…命中、頭吹っ飛びました」

「時間が無い、機動力の高い貴様から行けい!」

「……了解」


今年度の"5歳式"、本来ならば、月が真上に昇るまで、子ども達は会場にいる予定だった。今はまだ日が落ちて数分経った程度。それなのになぜ子ども達が個室に行かされ…いや、"保護された"のか…まだ宴は始まったばかりである。

彼らは気づいていない。



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