Who are you?
病院での悶絶診察を終えて、待合室で会計を待っていると、
「あっ」
通りすがりの綺麗で無礼な金髪少女にいきなり指をさされた。
「違います」
「まだ何も言ってないわよ」
ここら辺でそれなりの治療をしてもらおうとすると、おのずと病院が限られてしまい、こんな求めぬ出会いを引いてしまうこともある。
にしても、形成外科と七瀬の病室があるのは別棟なので奇遇にもほどがあるだろ。
「ここで何してんの? 学校はどうしたの?」
七瀬が補導員のような質問を投げかけてくる。
「学校は一応大学まで卒業しました」
「そんなこと聞いてないんだけど。怪我してんの?」
ここで七瀬に事情を説明して、無用な罪悪感を与えるほどは俺もバカではない。
「すみません、きっと人違いです。フ―アーユー?」
「犬村さーん、お待たせしました」
窓口から、お声がかかる。
「ほら、呼んでるわよ、犬村さん」
「今、井上さんって言ってなかった?」
「ここ耳鼻科も優秀だけど行ってみる?」
「犬村さん、犬村誠志郎さーん」
今度はマイクを使って呼び出しがかかる。
「いや、あれは私のことでは」
「迷惑だから、さっさと行きなさいよ」
仕方なく諦めて窓口へと向かう。
「今日は3300円になります」
財布を開く。
ああ……んー、タクシー使ったもんな。
俺はすぐ後ろ、待合室のベンチに座っている顔見知りに助けを求める。
「……七瀬、すまんが」
「Who are you?」
小首を傾げて見事な発音で金髪少女は答えた。




