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開演。


「レディース&ジェントルメン!」


 特設ステージから流されていたJ‐POPが止み、MCの女生徒の声が秋空に高らかと響き渡る。


「皆さま大変お待たせ致しました! ただいまより星蘭女子学園プレゼンツ、ENNICHIコレクションを開催致します!」


 いよいよメインイベントの開幕。

 そして勢いのあるスタートから一転して、雷の音を合図に不安を煽る音楽が流れ出し、いつの間にかステージの真ん中に設置されていた棺の蓋がギギィーっという音と共に開かれる。

 大人たちはその落差に何事かと食いつき、子供達は不安げな表情を覗かせている。


 棺の淵に白い手がかかり、今にもお化けか何かが出てきそうな雰囲気を醸し出すと近くにいた女の子がにゃん彦の体にしがみつく。

 心なしか左手を握ってくれているにゃん彦係のお姉さんの握力も少し強くなった気がする。


 ステージの棺にもう片方の白い手がかかった次の瞬間、一層大きな雷と共に棺から顔を出したのは頭に赤いリボンを付けた色白の少女だった。

 その少女が回りをきょろきょろ伺いながら棺から立ち上がり全身を現す。

 すると、にゃん彦にしがみついていた女の子が、

「白雪姫ぇ!」と叫ぶ。


 この演出には大人も子供も大いにウケた。

 その白雪姫が客席に手を振りながらランウェイを歩くと、小さな女の子達がキャッキャッとランウェイ下に群がる。

 そして急ににゃん彦の周りが過疎化する。

 気が着くとにゃん彦付きスタッフの人も子供達に混じって白雪姫を眺めている。

 あいつ完全に客じゃねぇか。


 白雪姫がランウェイの先で子供達と戯れていると、今度はステージ奥からフェイクファー付きのフードをかぶった黒いロングコートの女が登場する。 こちらは白雪姫のわかりやすい舞台衣裳と違って、実際に外に着て歩けるようなリアルクローズな作りになっている。


 ロングコートの女が被っていたフードを取ると、たっぷりボリュームまつ毛にアイラインが強調された目元が露わになる。

 両脇からしなやかに垂れる黒いロングストレートの髪がエキゾチックな大人の色気を醸し出し、ステージ中央でポーズを決めると本格的なファッションショーのような雰囲気が生まれる。


 子供達は「あいつは何者だ」という目で、白雪姫越しにチラチラ見ている。

 その『あいつ』がコートのポケットから取り出し、クールフェイスでポーンと宙に放って見せたのは赤黒い色をした毒リンゴ。

 それを見た子供たちが「魔女だぁ!」一斉に叫ぶ。

 正確には王妃が化けた、リンゴ売りの婆さんだけど。


 白雪姫は背後から近付く女に気付かずに子供達と戯れ続ける。

 子供達は子供達で、「白雪姫、後ろ後ろ!」という状態だ。

 そして、「食べちゃダメ!」と幼い声が必死に引き留める中、焦らしながもぺろりと毒リンゴを丸々平らげると、白雪姫は眠るように倒れ伏す。


 次に現れたのが、カラフルでキュートポップな格好をした七人の小人。

 ジューススタンドのジュースやお菓子を手に順々に登場しポーズを決めていく。


 その後も、ロリータファッションの赤ずきん、ワイルドファッションの狼、ウェスタンスタイルの猟師、つぎはぎのデニムスカートをはいた古着ファッションのシンデレラ。

 最後には白雪姫とドレスアップしたシンデレラに板挟みになる王子様などが登場し、ファッションショーとしても、音楽劇としても非常に楽しい出し物となった。


 この出し物はオープニングの一回だけで終わるはずだったが、ショーの終わり頃に訪れたお客さんからの要望が多く、急遽午後からの再演が決まった。


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