テディベア。(割り込み分)
このエピソードを投稿し忘れてました…。
一応、後半の小さな伏線(?)的な話なので、
よかったら読んであげてください。
まあ、読んでなくても大した違和感はないとは思いますが…。
その後、話し合いも十分に煮詰まったのと昨日のこともあるので、
六時を過ぎる前には会議を切り上げ、お開きとなった。
俺も明日の授業の準備だけしてとっとと帰るつもりだったが、
気兼ねなく煙草を吸いながらコーヒーを啜ってる内にだんだんと億劫になってしまい、美術準備室を出る時分には七時半を回っていた。
ちょうど廊下に出たところで、生徒会室の鍵を閉めている七瀬に出くわす。
「お前、まだ残ってたのか」
「ああ、うん。少しだけ少しだけと思ってたらこんな時間になっちゃって」
「あ、俺も俺も」
「あんた、どうせ帰るのが億劫でダラダラしてただけでしょ」
「七瀬、盗撮はよくないぞ」
「見てなくてもわかるわよ」
正門はすでに閉まっている時間なので守衛室の前を通って裏門から出る。
俺はチャリ通勤だが、七瀬を送りがてらバス停のある大通りまで押して歩く。
「カバン、カゴにのっけていいぞ」
「あ、ホント? 助かる」
うぉっ!
七瀬がカバンを自転車の前カゴに入れるなり、ハンドルが一気に持っていかれて危うく転びそうになる。
「あ、重たいけど大丈夫かな?」
「それって最初に言うのが礼儀じゃないか? なに入ってんだこれ。鉄板か?」
「何で鉄板なのよ。教科書に決まってるじゃない。全教科とあと英語の辞書ね」
「何で全教科」
「気になった時にいつでも開けるようによ。数学の授業で疲れたなぁと思ったら古文の教科書で心を休ませたりするじゃない?」
「じゃないって訊かれても全然理解できんが、置き勉とかしないのか?」 「何それ?」
「学校に教科書置いて帰るんだよ」
「そんなことしたら予習が出来ないじゃない」
「しなきゃいいじゃない」
「バカになるじゃない」
「別にいいじゃない」
「死ねばいいじゃない」
「命って大事じゃない」
大通りまで出ると、ちょうどバスが減速して停留所に到着するところだった。
「グッドタイミング!」
そう言うと七瀬はカゴから重たいカバンをひょいと引き抜き、走っていく。
「ありがとう! また明日」
走りながら振り返った七瀬が軽く手を振る。
「おう、気を付けてな」
少し遅れて俺も手を挙げるが、すでに七瀬はこちらに背を向けてバスに向かって走っていく。
バスに乗った七瀬を見送ってから、自転車を漕ぎだすとカゴの中で何かが転がった。
手に取ってみると、それはテディベアのストラップだった。
おそらく七瀬のカバンに付いてたのがはずれたんだろう。
明日会ったときにでも返してやろうと、きこきこと自転車を漕いで帰路に着く。




