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ヒトオオカミ・4

 アドバンスド・テック社――

 地球本土のアメリカに本社を置く、宇宙進出以前から存在する兵器製造会社だ。規模は非常に大きく、地上と宇宙双方に業務の手を広げている。

 宇宙での最も有力な製品はエーテルギアである。中でもザウルス・フレームは、癖が無く扱いやすい素体とエーテルによる防御機構を初搭載した傑作機として名高い。現在稼働しているエーテルギアのドミナントデザインを確立したとも言われている。

 エーテルギア本体以外に、エーテルギア用の武装の開発も行っており、堅実性を重視した実弾兵装に定評がある。ウェアウルフがサブウェポンとして脚部ハードポイントに装着している機関砲マシン・キャノン散弾砲ショット・キャノンも、アドバンスド・テックが開発したものである。

 企業本体は非常に大きいものの、合併や買収等の垂直的統合を好まず、市場原理を有効に活用することでも有名である。

「アドバンスド・テックがあんな色物じみたエーテルギアを?」

 ラティファは首を撚る。

 六本の武器腕を飛ばしながら戦う機体。今までに市場に出たアドバンスド・テック製エーテルギアの、堅実なイメージからは想像もつかない。

 ラティファの問いかけをカトレアは首肯。「信じられないかもしれないけどね。八割以上の確率って感じかな」

 ウィンドウ上に表示されている情報のうち、ファントムのパーツがアドバンスド・テックでデザインされたものであることを示す情報が赤くなり、大きくなる。

「む」ラティファは唸る。

 表示されている情報は、他のアドバンスド・テック製エーテルギアと同質の癖があることを示している。隠しきれ無い同質性。

 ワイズマンは、その情報を覗き込むように見ている。「燃料やパーツの補充も必要だったと考えれば、アドバンスド・テック絡みの何かとファントムが関係あるのは間違いないだろうな。この近くで、アドバンスド・テックと関係がある所を調べておいてくれるか?」

「私からは、透明になる理由の解析を頼む。あれがどうにかならないと、どうしても逃げ切られてしまう」

 ワイズマンとラティファの要求にカトレアは頷く。

「分かりました。可能な限り火急に。今のところ私が出来る報告は以上となります。ある程度の報告は三時間もあれば出来るかと」

 ワイズマンも頷く。「了解した。引き続き頼む」

「はい、ワイズマンさん。ラティ、無理しないでね」

 カトレアのアバターが顔をしかめる。

「分かってるさ。有難う、カトレア」

「……うん。それじゃ、私はこれで」

 言うと、カトレアのアバターは消えた。

 ワイズマンは顎に手をやって髭を弄る。

「さて、時間もないが、動くに動けないといったところか」

「お前以上に、私はどう仕様も無い」

 エーテルギア繰が出来なければ、ラティファにやることはない。

「折角だ、少し早い晩飯がてら、観光でもしてきたらどうだ? 中華系コロニーに来たことはあるか?」

「無いが……構わないのか? 確かに私には何も出来ないが……」

 コーラの瓶をテーブルに置いて、ワイズマンはベッドに仰向けになる。

「いいさ。私もやることはないが、お前に比べれば腹は減ってないしな。今すぐどうこうしようという気にもならん」

 エーテルギアによる戦闘は、強化現実(AR)に莫大な情報を送り、それを常に処理しなければいけないことや、アライメントチューナーの制御とエーテルギアの機体制御を同時に行う都合上、脳に多大な負担をかけて、肉体的/精神的に大きく疲労する。人間の身体の内で最もカロリーを消費する機関が脳髄である以上、エーテルギアの操縦後は空腹になることも多い。その消耗具合に備えて、長時間戦闘用に、スーツから直接ブドウ糖を接種する機構が内蔵されているほどだ。

 ラティファは顔を赤らめる。

「……では、言葉に甘えさせてもらおう」

 ラティファはコーラを飲み終えると、それをテーブルに置いてワイズマンに背を向けた。

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