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とある離島の保健室  作者: なる。
一学期
7/29

006 古雅咲の相談(3)


 

 「話戻しますけど、どうやったら衛くんに私の想いが伝わると思います? 会う度に大好きだとは言ってるんですけど、衛くんったらその意味を全然理解できていないみたいで……。まあそんなところもかわいくてぺろぺろしたくなるんですけどね、でもやっぱり同意の上でぺろぺろしたいじゃないですか」


 「残念ながらぺろぺろに関して私は専門外だからわからないけど、とりあえず無理矢理淫らな行為に及んだりしない誠実さがあることはわかって安心したよ……」


 「そんなの当然じゃないですか。先生……私をどんな変態だと思ってるんですか!」



 ショタ好きの変態ちゃんだと思ってます、はい。



 「で、どうすれば良いと思います?」


 「え? う、うーん……歳が歳だから難しいところだね。最近の子供は早熟だっていうけど、衛くんはそういうわけでもなさそうだし」


 「そうなんですよ。だからこそ人生の先輩である鳴神先生のお知恵を拝借したいわけなんです」


 「そ、そっか、そうだよね……。え、えーと――」



 人生の先輩にだって考えもしなかったり初めて聞くような話だってあるよ……!

 知恵なんてありゃしないよ!


 しかし――悩みの内容が内容とはいえ、私を頼ってきてくれているのも確か。咲ちゃんもまた、一人の悩める少女なのだ。

 本当なら正しき道に導いてあげるべきなのかもしれないけれど、ここは真面目に相談に答えてあげたい!

 でも私はいったい何と言えば良いんだろう……。

 くそう、どうすれば、どうすれば……!


 そんな時、視界の隅に一冊の本を捉えた。

 「好きというキモチ」というタイトルの絵本で、主人公の小さな男の子が様々なものに対して”好き”という気持ちを確認していくような物語なのだけれど、親や友達などへの”好き”と、彼と仲の良い女の子への”好き”という気持ちが区別されて書かれていたはずだから、きっと良い例えになるし衛くんのような小さな子にも理解できるのではないだろうか。

 これだ!と思った私はその本をがしりと掴み、咲ちゃんの眼前へと突き出した。


 

 「――こ、これ! この本を読ませて教えてあげるといいよ!」


 「えっ」



 しかし、咲ちゃんの反応が芳しくない。

 それどころかドン引きの表情で首を横にふるふるとしている。


 いったいどうして――と、よく手元を確認してみると。

 私が咲ちゃんに突き出していたのは、絵本の横に立ててあった保健の教科書だった。



 ……いたいけな五歳児に何を教えさせるつもりだったんでしょう、私。




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