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とある離島の保健室  作者: なる。
一学期
4/29

003 霜越夏姫の相談(3)



 話し合いの末、呼び方は「姫ちーちゃん」で良いことになった。

 しかしやはりフルネーム(?)ではないせいか、夏姫ちゃんは荒くれモードのままである。

 まあ……こっちの方がたぶん素の彼女なんだろうし、なるべく気にしないようにしよう。



 「それであたしの悩みっつーか相談なんだけど、あたし夢があるんだよね。鳴神先生の胸より遥かにでっかい夢がさ」


 「何で私の胸を比較対象に!?」


 「あ、そうですね。確かに間違ってましたね。先生の胸と比べたら大抵の物は大きく見えちゃいますもんね」



 激しくぶん殴りたい。

 でも悔しいかな、言い返せるだけの自信がない……っ!


 ていうかこの子、名前のこと納得したように見えて実は物凄く根に持ってないか!?


 でも私は怒っちゃいけない……大人なんだから、悩みを持つ生徒に対し怒りを以って接するだなんてあってはいけない……!

 私は多少笑顔をひくつかせながらも、落ち着いた風を装って話を戻してやる。



 「え、えーと……それでその夢っていうのは何なのかな?」


 「アイドル」


 「あ、アイドル!? あの、テレビとかに出てくる……アイドル?」


 「そ。日本中の誰もが知っていて、その誰もから愛されるような国民的アイドルになるのがあたしの夢なの。おかしい? ねえ、何かおかしい?」


 「う、ううん? 全然おかしくはないよ。確かに夏姫ちゃん可愛いし、でっかくて素敵な夢だと思うよ!」


 「でしょ? 先生の胸と違って」


 「だから何でその部位と比べるのさ!?」


 「身長のほうが良かった?」


 「そっちもやめてー!」



 そろそろ黙ってくれないと私の全体サイズがバレるよ!

 


 「それでまあ、アイドルを目指すにあたって悩みが一つあってさ。今日はそのことを先生に相談しようかと思ったわけ」


 「な、なるほどね。アイドルに詳しいわけじゃないけど……私がわかる範囲でならいくらでもアドバイスできると思うよ!」


 「さすが先生。噂通りどんな悩みでも聞いてくれるのね。それじゃあ早速、ちょっとこれを見て欲しいんだけど」



 そう言って夏姫ちゃんがスカートのポケットから取り出したのは一枚のプリントだった。

 それを受け取って眺めてみると、そこには紙面いっぱいに謎の文字の羅列が記されていた。


 『マジカルプリティープリンセス姫ちー』※最有力

 『トロピカルゲレンデヨドリゲス姫ちー』

 『キュアキュアキュートラブリー姫ちー』

 『盛ります盛ります☆山盛り天使姫ちー』

 『クリスタライズダイヤモンドファイヤー姫ちー』


 ……このようなものがずらーっと一面に並んでいる。

 何となく予想はついていたのだが、私は夏姫ちゃんに尋ねずにはいられなかった。



 「……姫ちーちゃん、これはいったい何なのかな?」


 「は? 見ればわかるでしょ、あたしの芸名……いえ、アイドルネームよ。それ全部候補だからさ、先生にはその中からどれが良いと思うか選んで欲し――」


 「霜越夏姫で」


 「はあ!? それ芸名じゃないし、忌まわしい本名だし! そんな名前じゃ売れるわけないでしょ!? いいからさっさと真面目に選んでよね。あたしとしてはやっぱり最有力候補の『マジカルプリティープリンセス姫ちー』を選んで欲しいんだけど、実は『クリスタライズダイヤモンドファイヤー姫ちー』と迷ってて――」


 「霜越夏姫で!」



 ……夏姫ちゃんが成功するようにと真面目に考えた結果、私に残された選択肢は一つでした。




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