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とある離島の保健室  作者: なる。
一学期
25/29

024 鷺澤智の休憩(3)



 実は、などという前置きは必要ないかもしれないけれど。

 鷺澤先生はドジというかなんというか、どうしようもない――そう、どうしようもない程不幸な体質の人なのだ。


 普通に生活しているだけだというのに、どこからともなくトラブルがやってきて、見事にそれに巻き込まれる。

 そして一度巻き込まれると次々と連鎖反応を起こし、先程のような必殺コンボを味わうハメになってしまうのだ。

 どのくらいの頻度でこのような事故に苦しんでいるのかはわからないが、少なくとも私は鷺澤先生が何ごともなく日常を過ごしている姿を見かけたことがない。一度も。

 誰かに呪われているんじゃないかと思うほど酷いレベルだ……。


 だからなのだろうか、鷺澤先生を見かける度、私はドキドキという胸の高まりを覚える。

 ……いや、ドキドキというよりはハラハラというほうが正しいかもしれない。

 今日はいったいどんな不幸に見舞われるんだろう、という危惧で。


 まあ、それでも毎回ケガなく済んでいるのだから逆に運が良いのかもしれないとは思うのだが。

 そして今回も例外でなく、カーテンレールに埋もれていた鷺澤先生を掘り起こしてみると無傷でピンピンとしていた。



 「本当に……本当にすみません鳴神先生! 片付けるどころか余計なことばかりしてしまって……!」


 「い、いえいえ……おケガがなくて良かったです、ええ、あははは……」


 「今すぐ片付け…………いや、これ以上僕は何もしないほうが良さそうですよね……?」


 「え、ええと……そんなことは、ない、かも、です、よね? で、でででも私がちゃんと片付けますから! 全然お気にしないでかまわないですよ!?」


 「あ、あははは……本当、すみません……」



 二度目となるとさすがに気まずかったようで、笑顔も引きつっている鷺澤先生。

 私もさすがにフォローのしようがない。



 「それじゃあ……また後日お詫びはさせていただきますので、今日のところはこれで……」


 「あ、はい……。でも、本当、気にしないで下さいね! ただの事故だったんですから!」


 「あははは、鳴神先生は優しい人ですね……。ご迷惑をかけてばかりだというのに、恨み言の一つも言ってくれない」


 「いえいえ、そんなことないですよ。私だってしょっちゅうドジはやらかしますけど、もし鷺澤先生がその場面に居合わせたらきっと同じように接してくれると思いますから、こういうのってお互い様なんだと思います。だから咎めるような真似なんてできませんよ」


 「鳴神先生……」



 なんとなく良い雰囲気で見つめあう二人。

 しかしこれ以上長居しても良い結果は生まないだろうと気付いている鷺澤先生は、気のせいか名残惜しそうにしながらも私に背を向けて保健室から出て行こうとする。

 そしてやはり、私はその背中から目を離すことができなかった。


 ――そして目を離さずにいたからばっちり目撃してしまった。


 鷺澤先生の足が、恐らくカーテンレールから外れたのであろうネジやボルトなどが転がっている地帯に着地してしまった瞬間を。

 そのせいでバランスを崩し、鷺澤先生が頭から保健室の扉に激突する瞬間を。

 衝撃で扉が外れ、鷺澤先生の体が勢い良く廊下へと倒れこんでいく瞬間を。

 その際に、偶然通りかかっていたらしい校長先生を巻き込んでしまった瞬間を。

 倒れ伏した校長先生と鷺澤先生の唇が、偶然触れ合っていた瞬間を。



 「さ、鷺澤先生ーっ!?」



 ……お祓いとかしてもらったほうが良いと思います。




まさかの同じオチ。

正直ボツにするか迷いました。



ちなみに、この話で一学期は終わりです。

今は前期・後期で分かれている学校が多いみたいですけど、この学校は三期制ということで。



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