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とある離島の保健室  作者: なる。
一学期
21/29

020 瀬庭秋治の相談(2)



 このまま話していても不毛な会話が続くだけだと思った私は、とりあえず瀬庭さんに早く帰るように言った。そもそも学校は関係者以外立ち入り禁止なのだし。

 しかし……案の定それを素直に聞き入れてくれるような人ではなかった。 



 「やだやだぁ! 帰りたくな〜〜〜い! 椿様と離れたくないよぅ!」


 「誰!?」


 「え、萌えませんか?」


 「これっぽっちも!?」


 「はあ……。あなた感性腐ってるんじゃないですか?」


 「腐ってるのは瀬庭さんの頭だよ!?」



 やっぱり不毛だった。

 いや、私の苛立ちだけは生み出されているけども。



 「まあそれはどうでもいいんですが、私が帰ったらあなたまた椿様のことを口説き落とそうとするでしょう? 春宮家から解雇されたとはいえ、椿様を守るのは私の使命。お側を離れるわけにはいきません」


 「私が椿ちゃんのことをたぶらかそうとしているみたいな言い方しないでほしんだけど……。私はただ椿ちゃんのことが心配だったから家に来ないかって言ってただけで、他意はないよ」


 「ふん。そうは言っておきながらも、あわよくば椿様の体を弄ぼうという魂胆なのでしょう!?」


 「そんな魂胆ないってば」


 「いいえ、私にはわかります! 確かに椿様は非常にかわいらしく美しいお方ですから、見たり触ったりしたいという気持ちはよーくわかります! 私は今でもその衝動を抑えるのに脳の九割を使用しているくらいですからね!」


 「瀬庭さんが一番の危険人物じゃん!」


 「大丈夫です。私は日々椿様を盗撮してその煩悩を打ち砕いていますから」


 「煩悩に呑まれてるよそれ! 大丈夫度ゼロだよ!」



 瀬庭さんのせいで、ますます椿ちゃんを保護しなければならないという気になってきた。

 というかむしろ警察に通報するべきなのではないだろうか……。

 春宮家の人選はいったいどうなっているのだろう。



 「というわけで、椿様のお世話は私がします。あなたのようなぽっと出の他人が口を出さないでください」


 「いやいやいやいや、果てしなく不安だからそれはダメ! 椿ちゃんの貞操が危ないよ!」


 「失礼なことを言わないでほしいものですね。だいたい、私は幼い頃から様々な訓練を受け、炊事、洗濯、掃除等のスキルはその道のプロ以上の実力があると自負しております。これらのスキルを以ってすれば椿様が快適に生活できるのは当然のこと。あなたに同じ真似ができますか?」


 「うぐ……。確かに家事は人並み程度にしかできないけど……でも、最低限度の生活と身の安全は保障できるもの! 変態ロリコンの瀬庭さんにお世話させるよりは断然マシなはずだよ!」


 「へ、変態ロリコンですって!? 聞き捨てなりませんよそのセリフは! 私は変態でもロリコンでもなく、ただ純粋に椿様をお慕いする気持ちの強い、いわゆる椿様コンというやつなのですよ! わかりますか!?」


 「全然まったく微塵もわからないよ!?」


 「こうなったら……今から最高級の松坂牛と本マグロを取り寄せて、今夜焼肉&寿司パーティを開きます! 飢えた椿様がこのイベントを見逃すはずもないでしょうから、あなたの負けですね! ははははははは、椿様は私のものです!」


 「そ、そんな!? ……あれ、でもそのお金はどこから出すの?」


 「ふふん、春宮家の財力を以ってすれば駄菓子を買うようなものですよ。馴染みの店に電話をかければあっという間に取り寄せられ――」


 「いや、瀬庭さん解雇されてるし、そもそも春宮家破産しちゃってるじゃない」


 「え、あ、え、あ?」


 「ていうかもしかして、瀬庭さんって今無職? 椿ちゃんのお世話以前に、自分の生活大丈夫?」


 「ぁ……あ……あああああああああああああああああああ!?」


 「今気付いたんだ……」



 ……勝ち誇った表情から一変、絶望に打ちひしがれる瀬庭さんには憐れみをおぼえました。



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