014 リックス・オルソンの相談(2)
「ちっ、違うんデス! このみチャンのルートがなかなか終わらないものだカラ寝るに寝れなかったんデス! やっとエンディングを迎えたと思ったラ朝日が昇ってて……本当なんデス、信じてくだサイ!」
言い訳なのかどうなのかすらわからないような言い訳を並べ立てるリックスくんを見下ろしながら、私は呆れたようにため息を吐くしかなかった。
いやまあ、もちろん何か悪い病気だったりするよりは良かったんだけど……心配した結果がコレって。
国のご両親も泣くよ。
「わざわざ日本まで留学しに来て何やってるのさ……。せめて学業に影響が出ない範囲でやろうよ」
「すみマセン。でも聞いてくだサイ、ボクがこの国にやって来たのはエロゲーをヤルためといっても過言ではないのデス!」
「わーなんかとんでもないこと言い出したよこの子ー」
「日本のエロゲーは素晴らシイ……。シナリオの良さはもちろんのコト、キャラクターのヴァリエーション、完成度の高イCG、中毒的なミュージック……そしてあのエロス! ああ、何をとっても最高デス! ミス鳴神もそう思いまセンカ!?」
「うーん先生ちょっとわかんないなー」
ちょっとどころか微塵もわからない。
わかったら負けなんじゃないかなって思う……。
「……オウ、よくよく見ればミス鳴神、アナタのようなキャラクターをエロゲーで見かけたことがありマスネ。タイトルは確か……ああ、『恥辱の保健室3』デシタ。それのなるみちゃんにそっくりデス」
「どうでもいいよ。名前まで被ってるところにちょっと悪意を感じるけど……」
「ウーン、でもやっぱりちょっと違いマスかネ? ミス鳴神と同じようニ背が低くて童顔で大きめノ白衣を着てるロリっ娘でしたケド、なるみちゃんは巨乳でしたカラ」
「悪意しかなかったよこの金髪」
「でもボクはロリ貧乳も大好きデス!」
「それフォローのつもりだったら大間違いだからね?」
「あ、一回ダケ『お兄ちゃん』って呼んでもらえまセンカ? ミス鳴神が言えばきっと萌えマス!」
「いいからその口閉じてさっさと寝ちゃえよお兄ちゃん」
「フォォォォォォォゥッ! 毒舌っぷりがまた萌えマスネ!」
もうやだこの子疲れてきた!
リックスくんは私にとっていろんな意味で一番の強敵かもしれない……。
話してるだけなのに私のキャラが保てないよ!
何だかこのまま寝させてしまうのは負けのような気がした私は、張り合う必要なんてないのに一矢報いてやろうと言葉を探す。
すると根本的な部分に彼の弱点があることに気付いた。
「ていうか……中学生のあなたがそういうゲームやっちゃダメでしょうが。あれって十八歳以下の子は買えないようになってるはずでしょ?」
「萌えニ国境はありマセン!」
「国境はなくても規制はあるんだよ……」
「ボクの設定を留年しまくっテ未だニ中学を卒業できていナイ十八歳ということニすれバ問題ないデショウ?」
「大有りだよ」
「仕方ないデスネ……。デハ、ミス鳴神が『えっちなのはいけないと思います!』って言ってくれたラ考えまショウ! あ、ソノ際にはちゃんト顔を赤らめて若干の羞恥を感じているコトを表現しながラ――」
「あはは、ご両親に電話かけてあげよっか?」
「すみませんデシター!」
……親の力が偉大なのは万国共通のようです。