表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある離島の保健室  作者: なる。
一学期
12/29

011 黒鍵雛子の相談(2)



 春の健康診断の時から気にはなっていた。

 この子――黒鍵雛子ちゃんはどうしてウサ耳をつけているのだろう、と……。

 おかげで身長が測りづらくてしかたがなかった。


 そして風紀委員の立木さんが注意しているのは、間違いなくそのウサ耳でしかありえないだろう。校則にはっきりと”ウサ耳をつけてはいけない”という項目はないかもしれないが、当然許可されているアクセサリーでもない。

 まさかそれに気付いていないはずもないと思うのだけれど、雛子ちゃんは私に指摘されたのを見ても首を傾げてきょとんとしている。



 「鳴神先生、何を指差しているんだ? 髪か? 私の髪に問題があると言うのか?」


 「……へ? いや、髪は問題どころかサラサラだし綺麗だし羨ましいよ」


 「そうか? 褒めてくれるのは嬉しい。いや、実は密かに自慢に思っていたのだ。ふふ、何だかガラにもなく照れてしまうな」


 「本当に綺麗だもんね――って違くて、いや綺麗なのに間違いはないけど問題はそこじゃなくてね、頭についてるそれのことなんだけど……」


 「……? なんだ、ゴミでもついているのか? だったら取ってほしい。買いたいと言い出す輩がいてもおかしくないと思える程自慢の髪の毛だからな」



 密かに自慢に思っていたんじゃなかったのだろうか。

 なんだか自慢のレベルが飛躍的にアップしたような気がする。

 そして凛としていたはずの顔は緩みまくってデレッデレになってしまっている。

 誰だこの子は。


 ……それはさておき、雛子ちゃんは素で気付いていないのだろうか。

 それとも気付いていない振りをしているだけなのだろうか。

 まさか無意識のうちにウサ耳をつけているわけでもないだろうし、鏡を見れば一目瞭然のはずなのだが……。



 「? どうした、先生。早く取ってくれ。ゴミなんかがついていたら私の絹糸を思わせるような神々しい輝きを持つ繊細で美しすぎる聖髪が穢されてしまう」



 聖髪って何だ。

 雛子ちゃんの中では”聖”ってつくと最高ランクの評価になるのか……。


 それよりも、雛子ちゃんがゴミを取ってほしいとウサ耳の揺れる頭を突き出してきているこの状況。

 これは雛子ちゃんの頭からウサ耳を取り除く絶好のチャンスではないだろうか?

 取り外されたウサ耳を見ればさすがの雛子ちゃんだって何を注意されていたのかということに気付くだろうし、外したままでいれば立木さんに注意をされることもなくなる。

 最もシンプルでわかりやすく簡単な解決方法だ。


 そうと決まれば善は急げ。

 私は恐る恐るながら雛子ちゃんのウサ耳へと手を伸ばし、ふわふわでふかふかな手触りの良すぎるそれをグイっと引っ張ってみた。


 ――が。



 「いたたたたたたたぁっ!? 痛いぞ何をするんだ先生!? どうしていきなり耳を引っ張ったりするのだ!?」



 ……取れませんでした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ