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設定考察シリーズ

エルフが人間を支配する理由を聞いてほしい。

作者: 和琴
掲載日:2026/09/22

エルフィウスブランチ


聳え立つその建物群は、人間との生活息を区別するためのものだ。

地上には数億ものブランチが立っていて、人類やほかの動物は

エルフの与えた魔法環境で生活している。


彼らは、宇宙を知らないだけで

ある程度生物としての生活をしているのだが…

対等にエルフと人間が関わることはない。


支配者と被支配者。

この構図が変わることはないのだ。


ブランチの中の建物の一つ。

筒状の建物に赤いレンガのとんがり帽子が乗っかっている。


そこには一人、長身で真っ白な服、金の糸を編み込んだ軍服を着た

軍人の男性が暮らしていた。


「ご主人様、食事が出来ました。」

人間を所有し、仕事に従事させる彼の名前はユーテンシルヘル・アミューストン・オーブランヘン。

エルフの名前は識別をするために長めなのが普通だ。


そして使える人間の女性はユリ。

ブランチの下界から攫ってきた人間で、魔法去勢済みだ。

復活させることもできるが、それは下界に返す時だけ。


数百年を超えるエルフの寿命を守るためには、人間としての女の役割は余計なのだ。

女性を連れてきているのは男性なら事故で去勢が消えれば、論理的な問題で生まれてしまった子供を殺せず

エルフの血が薄まるきっかけとなる可能性があるが、女性なら襲われても殺処分すればいいだけだからだ。


そう。エルフはハーフを許さないのである。

許したら何が起こるか?

どんどん交雑が起こりエルフという種族が消滅してしまう。

一見徹底的なほどの支配はこれにより起こった。


例えば人間の成長が20年で完成するもので、エルフの成長が80年で完成するものなら

人間との結婚でも許そうものなら単純に最大でハーフは4倍、

絶対数で行くならエルフの数十倍までエルフ数世代(2000年)も待たずに到達する可能性がある。

これはエルフたちにとっては早すぎ、死活問題であった。

これがハーフなら40年という話になっても同じだ。全く同じ問題が起こる。


エルフと人間は本来、ミライを育めてはならないとエルフは考えていたが

残酷なことに神はそうエルフを作らなかった。

それゆえにエルフの徹底的な支配がはじまったのである。


人間たちが有名な哲学者を80年で作り上げる一方、エルフは精神的に活動力が低い代わりに時間だけはある。

その為、時々生まれる天才が数百年かけて活動し続け、人類との圧倒的な格差を形成していった。

元々別大陸で栄華の限りを極めたエルフたちは、奴隷貿易で利用されていた人間たちの存在を知る。


当初は人間たちを保護しようとしたが、人間たちがエルフの女性を狙ったり、逆にエルフの男性たちの愚行によって交配可能であることが知れると、一気に管理論が勃発。


それはあっという間に今の形に収束したのである。


それはエルフたちの500~1000年という寿命を守るための生命倫理的な側面であり

将来生まれるエルフたちがかわいそうだから仕方がないのである。


結局ユリとユーヘル(あだ名)のように、もしも共に暮らしたい場合でも

魔法的な管理の上で使用人として雇う…という形になってしまうのだ。


「ユリ、今日のご飯は凄く美味しいね。

幸せを有難う。永遠にずっと暮らせたらいいのに。」

ユーヘルはユリの肩を持ち、そう語りかけた。


「いえ、いえ。お気になさらず。

私たちを管理してくださるユーヘル様のお陰です。」

この発言にはいくつもの裏がある。

しかしユーヘルには全てお見通しだった。

なんせユーヘルはエルフの天才だからだ。


「寂しいだろ、あとで遊びに付き合うよ。」


「ありがとうございます。」


この両者に実は恋愛感情などは一切ない。

なぜならユーヘルは、人間の女性が喜び

そして最大限の性能を発揮できるように発言をマニュアル化しているからだ。

エルフの間では活動力が低い代わりに、そうしたサボりの技術が発展している。


「ですがご主人、エルフのパートナーを探してください。

これでは…」

恋愛感情はないが、親子感情の様なものはある。

ゲームを遊んで仲良くなる親子のような存在だ。

だからこそ将来も気にする。人間として。


「あと寿命が420年近くもあるのに、早すぎるよ。

 200年は独身で居させてくれ。

それまではユリと過ごしたい。」

…感覚が…あまりにも違いすぎるのだ。


「しかし、共に考え、共に過ごし…

熟成していく夫婦関係というのは

あなたの管理職にとっても有益なはずでございます。」

ユリはその身を寄せて、頭なでをおねだりした。

これも恋愛感情ではなく、ペット的なものだ。

もちろん?それが管理に必要ならユーヘルも付き合うだろうが。


「いいや。エルフは一夜を共に過ごすぐらいで十分だ。

お互い貯蓄している物資が多すぎるから一人で暮らせるし。」

エルフは貯蓄が好きだ。数百年食べられる缶詰が好きだ。

当然実証実験も住んでいる。

汚染対策も兼ねて…だ。


人間とは資本が違いすぎる。


「考え方はどうなのでしょうか。」

まるで教えを乞う生徒のように。


「偉いぞ、ユリ。

だがエルフの女性側から考えて見ろ。」


ユリは撫でられて照れながらも、それについて考えてみた。

子供の育成には80年を使う必要がある。


ずっと過ごしたらどうなるだろうか。

生活が破綻しかねない。

確かに、一人生む程度一緒に居ればいいのかもしれない。

そして大半は私たちと会話しながら過ごすのだ。


…それでも人類と同程度の人口になるのだ。

「では私も、人類の管理に協力させてください。

単純作業だけなら…」


「この完璧な白い服、完璧な食事。

まじめで実直な家政婦、心配までしてくれる。

優しくしあえて、平和を楽しめる。

君にこれ以上を望めない、これ以上望んで、今が永久的に壊れるのが怖い。」

…人間の限界も、エルフは経験則で知っている。

たとえどれだけ子供のように可愛がろうと、

どれだけ努力をしたか知っていようと、たとえ人によっては…

どれだけ同じ毛布の中夜を過ごそうとも。


それは生物的なものだからだ。


もちろん人間の寿命を改善するための研究も行われており

記憶や外見に関しては幾つか現世界を超える大発見があった。

その上で魔法を駆使しても200年が限界といったところ。

エルフなら同じことをすれば平均で700年なのだから差は歴然だ。


「それに、君に頼ってしまうと

君のような人は下界に増えなくなる。

…ずっと一緒に居ようかとも思ったが、やはり

30になるころにはいったん戻ってほしい。

お願いだ。」

加えて、エルフに協力的な人物こそが次世代に残ってほしいのだ。

労働力として使い潰すだなんてとんでもない。

だから子供のように扱うことが推奨されている。


「分かりました。子供の写真を持って

必ず送ります。

子供の名前も…お送りしますね。

大切なご主人様への贈り物として。」

…そういう事である。


寿命の差は大きい、エルフと人間の関係性は…覆らないのではないか。

ユーヘルはそれを聞きながら、考えた。


ユリの寿命が、もし私と同じになるなら永遠に…と。

世界は残酷なのである。


「ユリ。

人間とそしてエルフと人間が共生できるよう、今日も核兵器や

化学物質が製造されないことを、監視して過ごそう。」


「ご主人様、

ありがとうございます。私もそれは、本当に怖いですから。

…少し、肩を寄せてもいいですか?」

ユーヘルはユリの肩を引き寄せ、ともに青空を見つめた。



結局人類の寿命が短いことは、雑に暮らすという問題も付きまとう。


人間たちは効率を求めて安易に汚染物質を使う。

例えば食生活での調味料。

それに整備してたった80年しか持たぬ道路もそうだ。

これら人間には当然のものを生産することも汚染としか私には見えない。


化学・環境汚染はエルフにとって数千年の問題となる。

これこそが人類をエルフが管理し、エルフのハーフという力を与えない。

真の理由なのかもしれない。

そうユーヘルは思った。

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