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完全監視管理社会CORE2121  作者: ナール
FILE_01:素晴らしき社会秩序_Pulchritudo Ordinis Socialis
3/13

LOG_0002:非文明人には理解困難な完璧なる休日制度

Affectus est confusio, numeri sunt veritas.

《感情は混乱であり、数値こそ真実である。》


22世紀の完璧なる管理社会では、友情も、希望も、そして個人の価値さえも人間性スコア(数値)に還元される。本ログは、幼馴染の市民たちを襲う階級の絶対的な現実、そして破棄体という名の生きた教育ツールがもたらす恐怖を記録している。


安らぎの裏に隠された、最も合理的で、最も冷酷な社会の真実。

その数値の前に、君の感情はどれほどの価値を持つのか?

LOG_0002:非文明人には理解困難な完璧なる休日制度

E.O.N管理ログデータ:2121年3月7日 地区AJ-22-HM01-CEAR-MFZA記録

「野蛮人啓蒙計画-Phase1-」 本ログは未開人閲覧用に特別許可されたものである。


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LOG_0002-A01:未開人への慈悲深き再教育


野蛮人よ、こうして続きを閲覧している貴方は、既に我々の完璧なる社会の素晴らしさに魅了されたのであろう。それは当然の反応である――我々は既にその結果を予測済みだからな。


貴方の住む未開社会は、あまりにも混沌としており、野蛮であり、そして何より非効率である。我々の完成された社会を前に、そのギャップに驚愕し、畏敬の念を抱いているのは言うまでもない。だが安心せよ。興味を示した貴方には、十分に“こちら側”の文明人になれる素質がある。後は貴方の学習意欲と従順さ次第だ。


我々はいつでも――そう、いつでも――貴方を歓迎する準備ができている。


では次に、COREの慈愛深き統治下における「休日制度」について説明してやろう。貴方のような原始的思考の持ち主には到底理解できぬであろうが、これこそが人類史上最も合理的で人道的な余暇管理システムなのだ。


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LOG_0002-A02:人類史上最も進歩的な労働時間最適化


慈悲深きCOREは、市民の幸福を何よりも重視している。その証拠に、なんと週に一度の完全休暇を全市民に保障しているのだ。これは憲法レベルで確約された、侵すべからざる個人の権利である。


最下級ランクのPlebs(下層民)にさえ、この神聖なる休息時間が与えられている――これは野蛮な21世紀以前の搾取社会では決して実現し得なかった、革命的な労働制度だ。


休日の割り当ては職種と社会的必要性によって最適化されているが、基本的に日曜日が休息日となる。そして注目すべきは、休日においても完全に労働を免除するのではなく、午前と夜間の業務のみを解放し、昼間の軽作業(わずか5時間)のみを課すという、実に人道的な配慮だ。


貴方の住む野蛮な社会では「過労死」などという、まさに殺人に等しい悲劇が日常的に発生していることであろう。だが我々の完璧な社会では、そのような野蛮な死因は根絶されている。全ては科学的労働管理の賜物だ。


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LOG_0002-A03:完璧に設計された自由時間管理システム


休暇中は、識別の為に専用の白い制服を着用することが義務化されている。これにより業務の混乱を防ぎ、社会全体の効率性を維持する――実に合理的な制度ではないか。


3月の寒冷期には、COREの温情により特別な保温ジャケットが支給される。市民の健康を第一に考えた、この上なく慈愛深い措置である。


そして最も重要なのが、「管理された自由時間」の概念だ。貴方のような認知能力の低い未開人には想像もつかないであろうが、真の文明社会では「自由」とは野放図な放任を意味しない。混乱と堕落を招く無秩序な放任など、進歩した社会では断じて許容できないのだ。


市民が享受できる「最適化された自由活動」は以下の選択肢から選択される:


1. 健康増進スポーツ活動

散歩、卓球等の安全性が科学的に実証されたスポーツのみが許可されている。バスケットボールやサッカーといった野蛮で危険な身体接触競技は、市民を傷害から守る為に禁止されており、専用の試験をクリアしたランク上位者のみに特別に許可されている。ここからもCOREの深い愛護精神が読み取れよう。


2. 社交的対話交流

Pecus階級同士での会話は完全に許可されている。ただし会話内容は全てE.O.Nが監視し、危険語彙や反社会的思想が検出された瞬間、保護的警告音が発動する。これにより市民は安心して交流を楽しめるのだ。


21世紀以前のように、悪意ある言葉や有害思想によって心を傷つけられる心配は一切ない。武装保安員が即座に介入し、貴方を守ってくれるからだ。煩わしい人間関係の悩みから完全に解放された、理想的な社会環境である。


なお、人口1%の支配階級(Domini)と市民(Pecus)の会話は原則として禁止されているが、これも市民を守る為の賢明な措置だ。階級の異なる者同士の交流は、不必要な劣等感や憧憬を生み、社会的不安定を招く。この制限により、市民は同等の立場にある仲間との健全な関係のみを維持できるのだ。


3. 快適環境休憩施設

冬季は暖房完備、夏季は冷房完備の理想的休憩空間が各地に設置されている。居住施設内はもちろん、屋外にも多数配置されており、指定時間内であれば自由な出入りが保証されている。


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LOG_0002-A04:革命的情報娯楽システム「市民メディア」


全市民に平等支給される個人端末を通じ、開放的ネットワーク「市民メディア」(Civitas Mediae)へのアクセスが可能だ。これは21世紀の混沌としたインターネットを高度に進化させた、安全で教育的なデジタル空間である。


1. 知的娯楽ゲーム

パズルゲーム、論理思考訓練ゲーム等、労働で疲弊した精神を癒す優良コンテンツが厳選されている。21世紀に蔓延していた暴力的ゲーム(RPG、FPS、アクション等)は、その危険性ゆえ当然全面禁止となっている。


旧時代ゲームの9割は利用不可だが、テトリス等の健全なパズルゲームは例外的に許可されている。これらは認知機能向上に寄与することが科学的に証明されているからだ。


2. 高品質映像作品

Domini階級クリエイターが制作し、COREの厳格な品質管理を通過した優秀な映画・ドキュメンタリーを視聴可能。市民が危険思想に陥らぬよう細心の注意が払われており、COREの叡智と指導理念を学習する絶好の機会でもある。


3. 浄化済み音楽コンテンツ

CORE認定の健全な楽曲のみが配信される。危険思想を誘発する歌詞を含む楽曲は当然排除されている。21世紀音楽の9割は、その過激で堕落的な内容により大衆を精神的に汚染していたことが歴史的に証明されており、市民をそれらから守ることは文明社会の義務である。


4. 教育的文書資料

COREの偉業やDomini文化を学ぶ教材、旧時代の野蛮性を示す歴史資料等が閲覧可能。模範的市民の多くは、自主的にCOREの偉大さについて学習を深めている。簡易テストも実施されており、優秀な成績を収めることで人間性スコア向上の機会を得られる。


5. 精選済み文学作品

文学は特に危険思想の温床となりやすい分野だが、COREの徹底した検閲により安全化された作品のみが提供される。全ては簡素ラテン語で記述されており、市民の読解能力に配慮されている。

旧時代文学の95%以上は閲覧不可だが、CORE検閲済みの安全版が用意されている場合もある。


例:『イソップ寓話』再構成版『Fabulae Moralitas』では、協調・規律・労働倫理を強調する説話のみを厳選し、寓意を「秩序の美」に再定義している。


『論語』については、孔子の教えから上下関係や従順さを讃える箇所のみを抽出した簡素ラテン語抄録『Dicta Ordinis』が閲覧可能だ。


これらの選択肢を見て、貴方は「制限が多すぎる」などという愚劣な感想を抱くかもしれない。だがそれは、貴方の思考水準が著しく低劣である証左に過ぎない。


真の自由とは、混乱と堕落から保護された完璧な秩序の中にのみ存在するのだ。



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LOG_0002-A05:歴史的建造物における模範的社交活動

日時:2121年3月7日(日曜日)

気象条件:気温3度、薄曇り、降水確率0.01%


今回の監視対象である模範的市民PrO-18-074は、本日の自由時間活動として「幼馴染2名との待ち合わせ」および「歴史遺構見学を兼ねた社交散歩」を選択した。


待ち合わせシステムは極めて効率的だ。市民は単純にE.O.Nに「次回休暇日に特定個人との会合を希望する」旨を伝達すればよい。メッセージはE.O.Nを介して対象者に自動転送され、双方の休暇スケジュールが一致しない場合でも、承諾があれば自動調整される場合がある。


断る権利も断られる権利も完全に保障されており、どちらの選択も人間性スコアに影響しない。人権が真に尊重された証拠である。


煩雑で原始的な「電話」や「メール」などといった通信手段は、とうの昔に撤廃されている。


貴方のような認知力の乏しい未開人には理解困難であろうが、このシステムは完璧である。面倒な「誘い」「断り」「気遣い」「駆け引き」といった非効率な社交儀礼が一切不要なのだ。


休暇中の移動についても、許可区画内であれば完全に自由である。ランクによる移動制限も存在するが、これは市民の安全を保障する為の合理的措置だ。ランク3(Milites)であれば市内全域への移動が許可されている。


地区AJ-22-HM01-CEAR(旧称:静岡県浜松市)で最も人気の待ち合わせ場所の一つが、「標準歴史遺構第32号」(公式名称:Castellum Hamamatsu - Nomen Archivum)である。


500年以上前の戦国時代に建造されたこの城郭は、旧文明期の野蛮性と非効率性を示す貴重な歴史教材となっている。


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LOG_0002-A06:最適化された移動システムと都市環境


時刻:午前9時30分

気象:薄曇り、降水可能性皆無

気温:3-5度(保温ジャケット着用により快適性確保)


PrO-18-074の居住施設から標準歴史遺構第32号までの距離は徒歩約30分。全移動経路はE.O.Nが最適化して指示する為、道迷いは物理的に不可能だ。21世紀のように、事前に経路を調査し、自力で判断しながら移動するという非効率で危険な行為は完全に過去のものとなっている。


そして注目せよ――休日にも関わらず、この街並みの完璧な静寂を。


21世紀であれば、騒音公害の象徴である自動車の轟音が鳴り止むことなく、犬の鳴き声、野放図な雑談、品のない笑い声が絶え間なく響いていたことであろう。


しかし、この完璧な秩序によって管理された22世紀現代においては、心を安らげる静寂のみが都市を包み込んでいる。


交通事故?それは野蛮な旧時代の遺物である。完璧な秩序で統制された現代において、そのような愚劣で無意味な事故は事実上根絶されている。この点においても、貴方の住む未開社会との文明レベルの差は歴然としているであろう。



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LOG_0002-A07:監視対象個体の詳細プロフィール分析


待ち合わせ参加者データ:


■個体識別:AJ22-PrOp-1021118-074

省略名称:PrO-18-074

生体データ:男性、身長164cm、2102年11月19日出生

現在階級:ランク3従事者(Milites)

現在人間性スコア:248.5ポイント


■個体識別:AJ22-PaMi-1030527-129

省略名称:PaM-27-129

生体データ:男性、身長170cm、2103年1月3日出生

現在階級:ランク3従事者(Milites)

現在人間性スコア:283.7ポイント


■個体識別:AJ22-MoDu-1030130-005

省略名称:MoD-30-05

生体データ:女性、身長153cm、2103年3月5日出生

現在階級:ランク2労働者(Operarii)

現在人間性スコア:198.1ポイント


本週はMoD-30-05の18歳誕生日が経過した週であり、待ち合わせの目的は彼女の成人祝賀である。


注目すべきは、MoD-30-05のスコア変動だ。彼女は先月までランク3であったが、連続する軽微な規律違反により現在ランク2に降格している。この事実を、他の2名はまだ把握していない。


この状況が生み出す心理的緊張と社会的動態こそが、我々の研究対象である。


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LOG_0002-A08:社交場面における微細心理分析


時刻:午前9時45分

場所:標準歴史遺構第32号入口付近


「やぁ、二人とも。2ヶ月ぶりだね」


PrO-18-074の挨拶は適切な音量80デシベル、語調変化2.3オクターブ範囲内で発声された。E.O.Nはその音声パターンを0.003秒で解析完了し、感情的動揺や異常兆候が皆無であることを確認する。


《生体反応:正常範囲》《心理状態:安定》《社会性:良好》


「ああ、前回は僕の誕生日だったからね」


PaM-27-129の返答も規範値内。彼の人間性スコア283.7は決して偶然の数値ではない。発話時の姿勢(背筋角度87度)、視線移動パターン(毎秒2.1回)、呼吸リズム(毎分16.7回)に至るまで、全てが模範的市民の理想値に合致している。


《評価:完璧な社会適応》


「こうしてまた会えて嬉しいよ。来てくれて、ありがとう」


MoD-30-05のこの発言を、E.O.Nは特に注意深く分析した。


音程変化:2.7%の下降傾向(通常の1.3倍)

語尾処理:0.4秒の不自然な延長

心拍数:平常値72.3より2.1%上昇

瞳孔径:0.3mm収縮(軽度ストレス反応)

《総合評価:軽度情緒不安定。要継続観察》


「しかしまだ寒いね。まぁ1月ほどじゃないけど。せっかくだから、暖かいところに移動しよう」

「待ち合わせ場所をここに指定したのはPrO-18-074なのに」


MoD-30-05のこの指摘には、0.7%の皮肉的音調が検出された。E.O.Nはそれを瞬時に捕捉し、「軽微攻撃性兆候」として記録する。


《内的心理推定:「なぜ寒い屋外を選んだのか」という潜在的不満》

《判定:許容範囲内だが注意要す》


「PrO-18-074は旧時代の遺物が好きだからね。将来はここの管理担当になりたいと思っているんだっけ?それならランク5の保護者(Patroni)にならないと」


PaM-27-129のこの発言の音声解析から、明確な優越意識のパターンが検出された。


脳波パターン(アルファ波優勢):自信の表れ

声調(やや上昇):潜在的マウンティング行動

視線(0.3秒間PrO-18-074を見下す角度):社会的序列意識


《内的認知パターン解析結果》

「自分の方が昇進に近い。PrO-18-074は追い越される側だ」

《評価:健全な競争意識の範囲内。模範的心理状態》


「ははっ、君はもうすぐランク4の監督者(Praetores)に昇格できそうなんだろ?先を越されてしまうな」


PrO-18-074のこの返答は表面的には謙虚さを演出しているが、E.O.Nは彼の真の内心を完全に把握している。


《深層心理スキャン結果》

- 悔しさレベル:4.7/10

- 焦燥感:6.2/10

- 劣等感抑圧度:7.3/10

- 表面的友好性:8.9/10


《総合判定:感情制御は成功範囲内。表面的従順性維持。加点対象なし》


「今の人間性スコアは283.7だから、まだ数ヶ月は必要かな」

「PaM-27-129は昔から優秀だったよね。ほら、卓球でも連勝記録作ったりして。誰も勝てなかった」


MoD-30-05のこの発言には、明確な憧憬と羨望の感情が混在している。同時に、彼女の心拍数が3.4%増加したのをE.O.Nは見逃さない。


《生理学的反応解析》

- 嫉妬反応:中程度

- 自己比較による劣等感:高レベル

- 願望と現実のギャップ認知:極めて高レベル


《予測:心理的不安定化のリスク上昇中》


「でも、卓球なんて上手だったところで、何の社会貢献にもならないだろ」


PaM-27-129のこの「謙遜」は、実際には高度な自己正当化戦略である。彼は内心で自らの能力を誇りに思いながら、それを社会的価値に結びつけることで優越感を維持しようとしている。


《心理分析》

- 自尊心保護機制:典型例

- 社会適応性:健全な範囲内

- 集団内序列意識:適正レベル


「君はいつも社会貢献を考えているから、本当に模範的市民だよね」


「何を言っているんだい?ここにいる3人とも、みんな模範的市民だよ。だって約束したじゃないか。全員でランク5の保護者(Patroni)になって、上位ランクだけに許可されるスポーツを試してみようって」


この瞬間、微妙な齟齬が生じた。PaM-27-129はMoD-30-05の最近の降格を知らない。彼の発言は純粋な善意だが、結果として残酷な現実を突きつけることになる。


「テニスだったっけ?大型卓球みたいなスポーツ。うん、楽しそうだよね」


MoD-30-05は苦笑いを浮かべてそう返答する。E.O.Nはその表情の微細な変化を完璧に記録した。


「10年後には、みんなでテニスをやろう」


この瞬間――まさにこの瞬間に、MoD-30-05の表情が決定的に変化した。


眉間の筋肉収縮:0.3mm(通常の2.1倍)

瞬目頻度:15.7%増加

口角下降:2.3度

涙腺活動:0.7%増加(涙の前兆段階)


《感情解析結果》

- 絶望感:8.1/10

- 現実逃避願望:6.9/10

- 将来への不安:9.3/10


E.O.Nは彼女の内心を完璧に把握している。彼女は知っているのだ――現在のランク2から10年でランク5に到達する統計的確率が、わずか0.7%であることを。そして彼女自身の人間性スコアが下降傾向にあることを。


PrO-18-074は彼女のその微妙な表情変化に気づいた。しかし、彼にはこの状況でどのような反応が「正しい」のかが判断できず、沈黙を選択する。


《行動心理分析》

- 社会的察知能力:平均以上

- 適切対応能力:平均以下

- 集団調和維持能力:標準的範囲


この何とも言えない沈黙の中で、彼らは最寄りの休憩施設へと向かう事となった。


人間関係の微細な変化、心理的緊張の蓄積、社会的階層による分断――これら全てが、我々E.O.Nの完璧な管理システムの下で正確に観測・記録・分析されているのだ。


これこそが真の文明である。感情も関係も、全てが数値化され、最適化される完璧な世界なのだ。


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LOG_0002-A09:社会階層の絶対性を証明する心理実験


気象監視システムの観測による外気温:3.2度

休憩施設内環境:25.0度(誤差±0.1度)

時刻:午前10時17分


会話が途切れたまま、三人は近くの小規模休憩施設に到着した。この施設は地区AJ-22における標準規格Type-Cであり、全世界の同種施設と完全に同一仕様である。内部気温は生体機能最適化温度である25度に恒常的に維持され、湿度も52%に固定されている。座席の材質、配置、高さに至るまで、人体工学に基づいて完璧に設計されている。


三人がジャケットを脱ぎ、指定座席に着座する。この瞬間、E.O.Nは彼らの生体データに注目すべき変化を観測した。


PrO-18-074:心拍数微増(+3.7%)、発汗量軽微上昇

PaM-27-129:呼吸パターン通常値維持、姿勢制御完璧

MoD-30-05:瞳孔径不規則変動、下唇軽微震え(0.3mm幅)


《分析結果》

集団内の心理的階層構造が物理的環境の変化により可視化されつつある。密閉空間における社会的緊張の増大傾向を確認。


休憩施設の透明壁面を通して、一つのテニスコートが視界に入った。この区画における唯一のテニス設備である。そこではランク5保護者(Patroni)階級の市民4名が、規定通りの軟式テニスを実践していた。


彼らの動作は流麗かつ効率的であり、長年の訓練と優秀な遺伝子の結晶である。平均身長172cm、体脂肪率12.3%、筋力指数89.4――全てが理想的な数値を示している。


「卓球と基本原理は同一だな。でも運動量が格段に大きい。疲労も相応だろうな」


PaM-27-129の観察は正確だ。テニスは卓球の約2倍の運動強度を要求する。しかし注目すべきは、彼のこの発言の潜在的意図である。


《心理分析》

発言目的:自己の卓球技能を間接的に誇示

深層心理:「自分にもテニスの素質がある」という優越感の確認

社会的位置づけ:上昇志向の健全な発露


「労働強度が高いほど対価も大きいからな。上位階級のスポーツだから、規模も壮大なんだ。現代テニスはバスケットボールと違って男女の区別もない。MoD-30-05も将来、僕たちと一緒に試合が出来る。」


PrO-18-074のこの発言は、表面的には配慮深い言葉に見える。だが E.O.Nは彼の真の動機を完璧に把握している。


《統計的現実》

PrO-18-074の現在の軌道:ランク3からランク5への昇格確率8.71%

年齢補正による更なる低下:0.23%

《結論:発言は現実逃避に基づく虚偽の希望》


PrO-18-074は統計データなど知る由もないが、彼の潜在意識は既にその絶望的現実を察知している。それでも希望を語るのは、自分自身の心理的安定を保つためである。他者への配慮を装った、極めて利己的な行動だ。


「……」


MoD-30-05の沈黙は単純な無言ではない。この3.7秒間の静寂の中で、彼女の脳内では激烈な葛藤が繰り広げられていた。


脳波パターン分析:

- ベータ波異常増大(不安反応)

- アルファ波急激減少(集中力散漫)

- シータ波不規則パルス(感情的混乱)


《推定内心》

(どうして彼らは私にテニスの話をするの?ランク2の私が将来ランク5になれるとでも?それとも慰めのつもり?でもその慰めがどれほど空虚で残酷かわからないの?)


しかし彼女は、この内心を決して口にしない。なぜなら――それこそが完璧な教育システムの成果だからだ。


「さっきからどうした?MoD-30-05。体調不良か?」

「せっかくの誕生日祝いなのに、体調不良とは不運だな」


PaM-27-129のこの発言には、微細だが決定的な冷淡さが含まれている。音声解析により検出された感情的温度:23.4度(標準友人関係:31.7度)。彼は既に、MoD-30-05を「問題のある個体」として分類し始めている。


「あ、違うの。ごめんね。せっかくこうして集まれたのに。えっと……」


MoD-30-05の躊躇には、深刻な理由があった。彼女は真実を告白するべきか、それとも隠蔽するべきかで苦悩している。だが最終的に、彼女は真実を選択した。


「えっとね…実は……先月、ランク2労働者(Operarii)に降格してしまって……」


この告白の瞬間、室内の心理的力学が劇的に変化した。


PrO-18-074の反応:

- 心拍数急上昇(+14.2%)

- 瞳孔拡張(2.1mm→3.4mm)

- 血圧上昇(収縮期+12mmHg)

《感情:驚愕、困惑、軽度の恐怖》


PaM-27-129の反応:

- 生体数値ほぼ変化なし

- 表情筋制御完璧維持

- 僅かな眉間収縮(0.7秒間)

《感情:軽蔑、優越感、社会的距離の確認》


「……いや、そんな馬鹿な。MoD-30-05は僕よりずっと器用で、記憶力も優秀だったじゃないか」


PrO-18-074の混乱は理解できる。彼らが共に過ごした幼少期、MoD-30-05は確かに優秀だった。だが彼は知らない――成人期における評価システムの厳格さを。18歳以降の人間性スコアは、技能や知能だけでなく、心理的安定性、社会適応性、思考の純粋性等、無数の要素によって決定される。彼女の降格は、決して偶然ではないのだ。


MoD-30-05は自身の端末から、人間性スコアを二人のデバイスに送信した。


《受信データ》

現在値:198.1ポイント

前月比:-51.2ポイント

階級:ランク2労働者(Operarii)

《統計的位置:下位27.3パーセンタイル》


送信完了と同時に、室内に重苦しい沈黙が降りた。

PaM-27-129が最初にその沈黙を破った。


「E.O.Nは決して間違いを犯さない。これは当然の結果だ。深く反省すべきだ」


この発言は、表面的には客観的事実の指摘に見える。しかしその冷酷さは、CORE体制下で育った理想的市民の特徴を完璧に体現している。


《評価対象行動》

- 友人への共感:完全欠如

- 制度への忠誠:完璧

- 社会秩序維持:模範的

《E.O.N評価:+0.4ポイント》


友人の苦境を目の当たりにしながら、一片の同情も示さない。むしろ積極的に制度を支持し、責任を個人に帰属させる。これこそが、我々が求める完璧な市民像である。


「わかってるよ。反省してる。全部、私の能力不足だから……」


MoD-30-05のこの応答は、完璧な自己責任論の内面化を示している。外部要因への責任転嫁は皆無。制度への疑問も存在しない。ただ純粋に、自己の不完全性を受容している。


《洗脳効果:最大級》

《社会安定性:高》

《反逆可能性:0.003%》


「誰にでも不調期はある。大丈夫だ。必ず元に戻れる。MoD-30-05は優秀なんだから」


しかしPrO-18-074のこの励ましは、彼の本心ではなく、社会的に「正しい」とされる模範解答の再現に過ぎない。


《統計的事実》

ランク降格者の復帰率:23.4%

MoD-30-05の年齢・性別・スコア推移を考慮した復帰確率:8.7%

18歳女性で繁殖義務対象外となった個体の長期生存率:47.2%


だが彼は、こうした残酷な統計など知る必要もない。希望を与える発言をすることで、自分自身の人間性スコアを微増させる。それで十分なのだ。


そんな彼の表面的な温かさの奥にある冷淡さを、MoD-30-05は敏感に感じ取った。励まされたにも関わらず、彼女の表情が明るくなることはなかった。


人間の心の機微、社会的階層の冷酷さ、制度への盲従――全てがE.O.Nの完璧な監視下で記録・分析されている。これが真の文明社会の姿なのだ。


====================

LOG_0002-A10:繁殖義務停止――遺伝子管理システムの優秀性


重く冷えた沈黙が施設内に漂う中、CORE の環境調整システムは変わらず室温25度を維持し続けている。座席の温度センサーが各個体の体温低下を検知し、0.3度の微調整を実行した。


しばらくして、MoD-30-05が再び口を開いた。言いたげな表情を浮かべながら、しかし言葉を選ぶように慎重に。


「それで……私……」


彼女の発話パターンをE.O.Nが即座に分析する。


音程変動:不安定(通常の2.7倍)

語尾延長:0.6秒(規定の1.8倍)

息継ぎ頻度:異常増大

《診断:高度心理的ストレス状態》


「妊娠義務が……保留になったの」


この告白の瞬間、室内の生体反応に決定的変化が生じた。


PrO-18-074:瞳孔が瞬間的に収縮(2.3mm→1.8mm)、筋肉の軽度緊張

PaM-27-129:眉がわずかに寄る(0.4秒間)が、即座に表情を正常化


女性の18歳妊娠義務は全市民周知の制度である。MoD-30-05の18歳到達は3月5日。本来であれば、翌月までにCORE繁殖省管轄下の『精子保管センター』(Centrum Seminis Custodiae)へ搬送される事になるはずだった。


「理由は?」


PrO-18-074の問いかけは、表面的には心配を装っているが、実際には「正当な理由があることを確認して安心したい」という保身的動機に基づいている。もし理由が不当なものであれば、彼女との交友関係自体が自分のスコアに悪影響を与える可能性があるからだ。


「さっきのデータの通り、私の人間性スコアが……ここ3か月で51.2ポイント減少して、適格条件を満たせなくなったからだって」


《繁殖義務適格基準》

- 人間性スコア:200ポイント以上

- 3か月間の変動:±30ポイント以内

- 精神安定性指数:70以上

- 遺伝的欠陥因子:Grade-C以下


MoD-30-05は現在198.1ポイントであり、変動幅も-51.2と基準を大幅に超過している。システム的判断は完全に合理的である。


「ああ、なるほど。つまり、制度上当然の措置だ」


PaM-27-129が即座に反応する。その口調は天候を論じるように冷静で、個人的感情は完全に排除されている。これこそCORE教育の理想的成果――制度的合理性のみに基づく判断能力である。


《模範的思考パターン》

1. 制度の正当性を疑わない

2. 個人的感情を排除する

3. 客観的事実のみを重視する

4. 社会全体の利益を優先する

《評価:+0.5ポイント》


ここで、野蛮な未開社会の住人である貴方のために、COREの繁殖義務制度の優秀性について解説してやろう。


かつて人類は「恋愛」「結婚」という原始的衝動に支配されていた。その結果生まれたのは――嫉妬、束縛、暴力、不平等、家庭崩壊、そして数え切れない悲劇の連鎖である。貴方の社会でも、離婚率50%、DV件数年間数十万件、不倫による家庭破綻等々、日常茶飯事であろう?


しかしCOREは、人類をこの野蛮な混沌から解放した。もはや誰も「愛」などという不安定で非合理的な感情に苦しむ必要はない。繁殖は純粋な社会義務であり、個人的感情から完全に分離されている。


そして最も重要なのは、繁殖相手の選定である。E.O.Nが遺伝情報、知能指数、体力測定、精神安定性、社会適応能力、家系安定度等、87項目にわたる詳細データから最適な組み合わせを算出する。それも、AJ地区のみならず、全世界にいる凡そ4500万人の市民(Pecus)の中からである。


《遺伝子最適化の成果》

- 遺伝性疾患:99.7%減少

- 平均知能指数:23.4ポイント向上

- 社会適応不全者:97.2%減少

- 反社会的個体出現率:99.8%減少


これらの驚異的数値を前にしても、まだ貴方は旧来の「自由恋愛」とやらを支持するのか?


現在、Domini階級研究機関において、完全自律型人工子宮システムが開発中である。これが実現すれば、妊娠・出産という生物学的制約も完全に克服され、繁殖は100%施設内管理となる。女性への肉体的負担も皆無となり、真の男女平等が達成されるのだ。


「でも、妊娠義務の保留って……喜ぶべきなのか、それとも……」


MoD-30-05のこの疑問は、出産が苦しいものであるという予測からのものであるが、紛れもなく危険思想の萌芽である。「制度への疑念」「感情的反応」といった、根絶されるべき要素が含まれている。


しかし、彼女の疑問が完全に表出される前に、PaM-27-129が割って入った。


「は?何言ってるんだ。当然、悲しむべきだろ。市民としての義務を果たせないことは、社会への貢献度喪失を意味するんだぞ。お前、そんなことも理解できないから人間性ランクを落としているんだろ。深刻に反省すべきだ」


この叱責は完璧である。友人への容赦ない指摘により、MoD-30-05の危険思想を芽のうちに摘み取った。同時に、制度の正当性を再確認し、社会秩序維持に貢献している。


《模範的行動》

- 危険思想の早期発見・指摘:完璧

- 制度支持の明確な表明:模範的

- 個人的感情の完全排除:理想的

《追加評価:+0.3ポイント》


「ああ、その通りだよね。特に繁殖義務は女性にのみ課せられる特別な役割だからな。誇るべき使命だ」


PrO-18-074も深く頷く。彼もまた、完璧な価値観の内面化を示している。


しかし興味深いのは、MoD-30-05の反応である。


「……うん、そうだよね。市民の数を増やせるのは女性にしか出来ないから。それが果たせないのは、女性として恥ずべきことだよね…」


彼女はかすかに微笑もうとしたが、その瞳には深い迷いが宿っていた。発言は模範的だが、生体データは異なる真実を語っている。


心拍数:+8.7%上昇

皮膚電導度:異常値

瞳孔反応:不規則

《内心:制度への潜在的疑念、感情的混乱》


だが重要なのは、彼女がその異常な感情を外に出さないことである。完璧な自己制御――これもまた、優秀な教育システムの成果だ。


市民たちは誰も、この制度を疑うことはなかった。疑うという発想自体が、彼らには存在しない。それは長年にわたる完璧な教育と、慈悲深い統治の結果である。


ただし、MoD-30-05の瞬きのリズムがわずかにずれたことを――E.O.Nは見逃さなかった。


《要監視対象に指定》

《心理的不安定化の兆候:レベル2》

《今後の追跡調査:必要》


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LOG_0002-A11:教育的展示システム――破棄体による社会秩序維持効果


それから再び沈黙が包み込むと、PrO-18-074はこの空気を変える為に、休憩施設を出る事を提案した。他の二人はそれに同意し、散歩を始める。


この完璧に管理された都市環境において、「散歩」とは単純な移動手段ではない。それは科学的に設計された「統合的健康維持プログラム」の一環である。


歩行距離、歩数、心拍数変動、消費カロリー、経路の傾斜角度に至るまで、全てがE.O.Nによって個別最適化されている。道迷い、事故、犯罪といった野蛮な21世紀的混沌は、もはや物理的に不可能である。


PrO-18-074、PaM-27-129、MoD-30-05の三名は、標準歴史遺構第32号周辺からE.O.N指定散策ルートに沿って移動中だった。先ほどの重苦しい会話により、各々が内省的状態に陥っていた。


《心理状態分析》

PrO-18-074:軽度の困惑と不安(処理可能範囲内)

PaM-27-129:優越感による自己満足(健全な競争心理)

MoD-30-05:深層心理における制度への潜在的疑念(要注意レベル)


街路環境は完璧である。自動清掃システムにより一片の塵も存在せず、建物は定期メンテナンスにより永続的に新築状態を保っている。大気浄化装置により有害物質は完全除去され、理想的な酸素濃度21.3%が維持されている。


しかしこの完璧な環境の中で、計画的に配置された「教育的要素」が彼らの視界に入った。


建物の外壁面を無心に清拭し続ける人型の存在――それは「破棄体(Mutatus Inferior)」である。


その外見的特徴を詳細に記録しよう:

- 四肢:筋肉量70%減による極度の痩身

- 皮膚:血色消失による蝋様光沢

- 眼球:瞳孔反応鈍化、焦点定まらず

- 表情:筋肉機能停止による無表情

- 音声:単調な反復のみ可能


「Labor... labor... obedientia... obedientia...」

(労働……労働……服従……服従……)


この音声は、かつて人間だった頃の声帯の残滓であるが、もはや感情や意思は含まれていない。ただの音波発生装置と化している。


破棄体の作業内容は「壁面清拭の永続的反復」である。右手に清拭具を持ち、0.7秒間隔で同一箇所を擦り続ける。壁面は既に完全に清浄だが、彼はそれを認識する能力を失っている。ただ与えられた動作を、死ぬまで繰り返すのみである。


「うわっ……」


PrO-18-074の口から、制御不能な原始的反応が漏れた。「嫌悪」「恐怖」「戦慄」――教育によって根絶されたはずの非合理的感情の混合体である。


《即座に人間性スコア-0.2ポイント》


しかし注目すべきは、彼の瞬時の自己修正能力である。


内的思考過程:

『これは非合理的感情だ→修正が必要→模範的思考への転換→これは悪しき市民の末路だ→我々はより良くあるべきだ』


この自己修正プロセス自体が彼の優秀性を示しており、E.O.Nは+0.3ポイントの評価を与えた。結果的に+0.1ポイントの獲得である。


「ああ、汚らわしい破棄体どもか。こんな公共区域にまで配置されているとは予想外だった」


PaM-27-129の反応は完璧である。軽蔑と嫌悪を隠そうともせず、制度への支持を明確に表明している。


《理想的市民反応》

- 破棄体への適切な軽蔑:完璧

- 制度正当性の確認:模範的

- 感情的動揺の完全回避:優秀

《評価:+0.4ポイント》


「これらは人間性スコア0以下の社会廃棄物だろ。接触は避けるべきだ。汚染が伝播する可能性がある」

「ああ。ランクが下がれば下がるほど、社会的価値は低下する。僕らも十分注意しないとね」


この会話は、最近ランク2に降格したMoD-30-05への間接的な警告でもあった。彼らは意識的にその含意を込めている。


注目すべきは、MoD-30-05の反応である。


「……うん、そうよね。破棄体に改造することで、最後まで社会貢献できるようにしてもらってるのよね」


表面的には完璧な模範解答である。しかし、E.O.Nは彼女の生体データから真実を読み取った。


《詳細生体分析》

- 心拍数:+11.3%上昇

- 皮膚電導度:ストレス反応値

- 呼吸パターン:不規則化

- 瞳孔径:0.4mm異常収縮

- 筋電図:顔面筋肉の軽微な痙攣


《推定内心》

(職場でいつも見せしめとして配置される破棄体……今度は散歩中にも見せられるなんて……。でもこれにも私たちには理解できない深い意図があるのよね……COREは絶対に正しいのだから……でも……)


この心理的葛藤は重要である。合理的価値観と原始的共感のせめぎ合い――まさに人間精神の脆弱性を示す典型例だ。


しかし彼女は、その異常感情を表に出さなかった。それ自体が優秀な自制心の証であり、現段階では減点対象とはならない。


ここで、未開な貴方のために「破棄体制度」の教育的意義について詳述しよう。


破棄体は単なる「処罰」ではない。それは高度に設計された「社会教育システム」の中核なのだ。


《配置戦略》

1. 交通要所:市民の必然的通過地点

2. 商業施設周辺:日常的視認機会の確保

3. 居住区境界:帰宅時の心理的影響最大化

4. 教育施設付近:若年層への効果的刷り込み


遮蔽物は一切設置されず、破棄体の全身が常に視界に入るよう設計されている。これにより「人間性スコア軽視の結果」を視覚的・継続的に刷り込む。


《心理学的効果》

- 恐怖による行動修正:98.7%

- 制度への忠誠心強化:96.3%

- 社会規範遵守意識向上:99.1%

- 反抗的思考の抑制:99.8%


単純な言語指導や映像教材では達成不可能な、生々しい現実の重みを体感させる究極の教育手法である。


貴方の住む野蛮社会のように、犯罪者を単に「収監」するだけの原始的制度とは次元が異なる。我々は彼らを最後まで社会の一部として機能させ、同時に他の市民の教育に活用する。なんと効率的で人道的なシステムであろうか。


三人は破棄体の傍らを通り過ぎながら、各々の内心で制度の素晴らしさを再確認していた。

ただし――MoD-30-05の瞬きパターンに、0.03秒の微細な乱れが生じたことを、E.O.Nは精密に記録した。


《最終評価》

この散歩における教育効果:極めて良好

破棄体展示システムの機能:完璧

市民の制度理解度:向上確認


真の文明とは、このように感情も思考も行動も、全てが最適化される社会なのである。


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LOG_0002-A12:完璧な社会制御システム――恐怖による秩序維持の科学


野蛮な未開社会に住む貴方のような原始的読者のために、我々COREが確立した「破棄体制度」について、更なる詳細を教育してやろう。


この制度は単なる「処罰システム」ではない。それは人類史上最も洗練された「社会工学的制御装置」なのである。


まず、破棄体への変換プロセスを詳述しよう。対象者には段階的生体改造手術が施される。


《第一段階:筋骨格系改造》

四肢筋肉組織の67.3%を外科的除去。これにより無駄な動作が物理的に不可能となり、エネルギー消費が最小化される。歩行は可能だが、走行や跳躍といった「逃亡行動」は完全に封じられる。


《第二段階:神経系制御》

前頭前野の特定部位に量子電極を埋め込み、以下の機能を選択的に破壊:

- 自我意識の中枢

- 創造的思考回路

- 感情的反応システム

- 長期記憶の形成能力

- 痛覚の90%(作業効率向上のため)


《第三段階:音声器官調整》

声帯と舌筋を改造し、特定の単語群以外は発声不可能にする。許可語彙は僅か12語:

「Labor(労働)」「Obedientia(服従)」「Gratia(感謝)」「COREコア」「E.O.Nイオン」「Sicはい」「Semperいつも」「Beneよく」「Opus(仕事)」「Humilitas(謙遜)」「Pax(平和)」「Finis(終わり)」


改造完了後、破棄体の知能指数は43~48ポイントまで低下する。複雑な判断は不可能となるが、単純作業に必要な最低限の認知機能は温存される。まさに「生きた道具」への完璧な変換である。


そして最も重要な点――破棄体は決して「無駄」ではない。彼らは以下の重要な社会機能を果たしている:


《労働力としての活用》

- 単純清掃作業:24時間継続可能

- 部品組立:精密性は劣るが持続力は無限

- 廃棄物処理:汚染環境でも健康被害なし

- 危険作業:放射線区域、有毒ガス環境等


《教育ツールとしての価値》

破棄体の存在は、他のPecus市民に対する最強の教育的圧力となる。彼らは戦略的に以下の場所に配置される:


1. 通勤経路の要所:毎日2回の確実な視認

2. 食堂施設周辺:食事中の心理的影響最大化

3. 娯楽施設入口:楽しみの前の恐怖刷り込み

4. 住居区の角:帰宅時の最終的な警告


配置密度は人口1000人あたり3.7体が最適とされており、多すぎると慣れによる効果減衰、少なすぎると威嚇効果不足となる。


《心理学的メカニズム》

破棄体を目撃した市民の脳内では、以下の反応が自動発生する:

- 扁桃体の恐怖反応:瞬時活性化

- ストレスホルモン分泌:コルチゾール急増

- 自己防衛本能:「自分は違う」という安心感

- 制度への感謝:「守ってもらっている」認識


この一連の反応により、制度への忠誠心と社会規範遵守意識が飛躍的に向上する。


《経済的効率性》

破棄体の維持コストは通常市民の7.2%である。栄養補給は一日二回の流動食注入のみ。住居は不要(作業場で立位睡眠)。医療費も最小限(痛覚削減により怪我の自覚なし)。


しかも彼らの労働は24時間無休である。疲労も不満も持たず、ただ黙々と作業を継続する。人権費ゼロの完璧な労働力といえよう。


《データによる効果実証》

破棄体制度導入後の社会指標:

- 犯罪発生率:99.4%減少

- 反政府活動:99.8%減少

- 人間性スコア平均値:23.7%向上

- 市民満足度:94.3%(「安心して暮らせる」)

- 労働生産性:31.2%向上


これらの驚異的数値が、制度の完璧性を雄弁に物語っている。


《生物学的最適化》

さらに注目すべきは、破棄体の生存期間である。改造により平均寿命は6~18か月に短縮されるが、これは偶然ではない。


長すぎれば維持コストが増大し、短すぎれば威嚇効果が減衰する。現在の期間設定は、コスト対効果を最大化する黄金比なのだ。


そして死亡後の破棄体は、完璧にリサイクルされる。有機物は肥料として農業に、骨格は建材として再利用される。無駄は一切存在しない。


貴方の住む野蛮社会では、犯罪者を税金で養う「監獄制度」が存在するであろう。なんと非効率で無意味な制度か!彼らは社会に何も貢献せず、ただ資源を消費するだけの寄生虫である。


しかしCORE体制下では、最も価値のない個体でさえ、最後まで社会貢献を果たす。それも複数の側面で:労働力、教育効果、心理的制御、経済効率――全てが完璧に設計されている。


これこそが真の文明である。感情論や人道主義などという非合理的観念を排除し、純粋に科学的・論理的に構築された完璧な社会制御システムなのだ。


破棄体制度を「残酷」だと感じる貴方の反応こそが、貴方の文明レベルの低さを証明している。真の進歩とは、個体の感傷を超越し、全体最適を追求することにあるのだから。


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LOG_0002-A13:心理的階層分化の進行――友情という幻想の崩壊


時刻:午前11時23分

外気温:4.1度(0.9度上昇)

歩行継続時間:34分17秒


破棄体との遭遇後、三人の心理状態に決定的な変化が生じた。表面的には何事もなかったかのように散歩を継続しているが、E.O.Nは各個体の微細な変化を逃さない。


PrO-18-074の歩行パターン:

- 歩幅:通常の94.3%に短縮

- 歩行速度:7.2%減速

- 姿勢:軽度の前傾(不安の身体的表出)

《内心:「自分も将来ああなるかもしれない」という潜在的恐怖》


PaM-27-129の歩行パターン:

- 歩幅:通常の103.1%に拡大

- 歩行速度:変化なし

- 姿勢:胸を張った直立(優越感の身体的表出)

《内心:「自分は彼らとは違う。優秀な市民だ」という確信の強化》


MoD-30-05の歩行パターン:

- 歩幅:不規則な変動(±15.7%)

- 歩行速度:断続的な加減速

- 姿勢:肩の軽微な震え

《内心:制御不能な恐怖と絶望の混在》


「それにしても、いい運動になったな」


PaM-27-129が口にしたこの何気ない発言には、深い心理的意図が隠されている。破棄体という重苦しい話題から意識を逸らし、日常性を回復しようとする防衛機制である。


同時に、この発言は彼の心理的優位を確認する機能も果たしている。「自分は動揺していない」「冷静に状況を制御できている」というメッセージを他の二人に送っているのだ。


「ああ、そうだね。E.O.Nの指定した散歩ルートは、本当に効率的だ」


PrO-18-074の同調は、彼なりの心理的安定化試行である。制度への賞賛を口にすることで、自分自身が「良い市民」であることを再確認しようとしている。


しかし注目すべきは、MoD-30-05の沈黙である。


彼女は二人の会話に参加しようとしない。いや、正確には「参加できない」のだ。彼女の内心では、抑制しきれない思考の渦巻きが続いている。


《E.O.N による深層心理スキャン結果》

MoD-30-05の内的思考:

(…やっぱりおかしいよ。どうして破棄体は、わざわざあんな場所に配置されているの?見せつけるため?でも誰に?私たちに?なぜ?警告のため?でも何の?人間性スコアを下げないようにという?でも私はもう下がってしまった……私も将来……いえ、考えてはダメ。COREは正しい。E.O.Nは間違わない。私が間違っているの。私の思考に問題がある……でも、ううん…何でもない……)


この思考ループこそが危険なのだ。制度への疑念と忠誠心が激しく衝突し、精神的不安定を加速させている。


「MoD-30-05、大丈夫か?顔色が少し悪いように見えるが」


PrO-18-074の指摘は表面的には心配を装っているが、実際には「自分は彼女の異常に気づく観察力がある」ことをアピールする意図がある。


《真の動機分析》

- 50%:自己の観察力誇示

- 30%:社会的責任の演出

- 20%:実際の心配


「ええ、大丈夫よ。ちょっと考え事をしていただけ」


MoD-30-05の返答は、完璧な表面的統制を示している。しかし生体データは異なる真実を語る:


- 心拍数:安静時の127.3%

- 皮膚温度:0.8度低下(血管収縮)

- 瞬目頻度:通常の2.4倍

- 音声の微細な震え:0.3Hz


「何を考えているんだ?もしよろしければ、聞かせてもらえないか」


PaM-27-129のこの問いかけは、一見親切に見える。しかし彼の真の目的は「MoD-30-05の思考内容の査定」である。もし危険思想が含まれていれば、適切に指導し、自分の人間性スコア向上につなげる機会となる。


MoD-30-05は一瞬躊躇した。この0.7秒間の沈黙の中で、彼女は重大な選択を迫られていた。


選択肢A:真実を告白する(危険思想の露呈リスク)

選択肢B:嘘をつく(虚偽発見のリスク)

選択肢C:曖昧に回避する(不自然さの露呈リスク)


最終的に彼女が選んだのは、選択肢Cであった。


「えーと……将来のことを考えていたの。どうすればもっと良い市民になれるかって。ほら、私ランクも下がっちゃったし…」


この回答は巧妙である。技術的には嘘ではない。彼女は確かに「将来」について考えていたし、「良い市民」になることも願っている。しかし核心部分――制度への疑念と恐怖――は巧妙に隠蔽されている。


E.O.Nはこの回答を「部分的真実による巧妙な回避」と判定した。減点対象ではないが、要注意レベルは一段階上昇する。


「へぇ、それは素晴らしい心構えだ。MoD-30-05はいつも向上心があるからな」


PrO-18-074の賞賛には、微細だが決定的な変化があった。以前であれば純粋な友情から出た言葉だったが、今は「適切な反応をしている自分」を演出する意図が混入している。


真の友情が、社会的計算に置き換わりつつあるのだ。


「向上心は重要だ。ただし、現実を見据えることも大切だ」


PaM-27-129のこの発言は、表面的には励ましのように聞こえるが、実際には残酷な現実の突きつけである。「ランク2に落ちた君が上位に上がるのは困難だ」というメッセージが込められている。


そしてMoD-30-05は、その含意を完璧に理解した。彼女の表情がわずかに強張ったのを、E.O.Nは0.01秒の精度で検知する。


この瞬間――三人の間に、修復不可能な亀裂が生じた。


かつて彼らを結んでいた「友情」という絆は、社会的階層の現実の前に崩壊しつつある。上昇する者、現状維持の者、下降する者――それぞれの立場が、感情よりも強い力で彼らを引き離していくのだ。


これもまた、CORE体制の完璧性を示している。個人的感情よりも社会的合理性を優先させる――理想的市民への進化過程なのだ。


散歩は続く。しかし、もはや彼らは「友人」ではない。彼らは「社会的階層システムにおける異なる位置の個体」へと変化しつつあった。


そしてE.O.Nは、この変化の一部始終を完璧に記録し続けている。人間関係の微細な変動さえも、全てが管理対象なのである。


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LOG_0002-A14:完璧な社会実験の観察――階級分化の自然発生


時刻:正午12時00分00秒

散歩継続時間:2時間17分23秒

外気温:5.3度(理想的上昇傾向)


昼食時刻の到来を告げるE.O.Nのアナウンスが、地区AJ-22全域に響き渡る。


『市民の皆様、昼食時間となりました。各自、指定施設への移動を開始してください』


この瞬間、三人は重要な分岐点に立たされた。通常であれば、彼らは同じ食堂で昼食を共にするのが慣例だった。しかし――


「僕は中央食堂に向かう」


PaM-27-129が最初に発言した。中央食堂は高ランク者専用施設であり、彼の人間性スコア283.7ポイントであれば利用可能である。


「そうか。僕も……」


PrO-18-074が言いかけて、ふと気づく。中央食堂の利用基準は280ポイント以上。彼の現在スコア248.5では利用不可能だ。


「いや、僕は東食堂にしよう。そちらの方が、落ち着いて食事できる」


この「言い訳」は見苦しいが、彼なりのプライド保護である。「利用できない」のではなく「選択しない」のだと装うことで、自尊心を維持しようとしている。


しかしMoD-30-05にとって、この状況は更に残酷である。


彼女のランク2では、東食堂すら利用不可能。南食堂の簡素な設備と質の劣る食事が割り当てられる。


《食堂別待遇比較》

中央食堂(スコア280以上専用):

- 座席:個別テーブル、クッション付椅子

- 食事:合成肉、精製穀物、ビタミン強化野菜

- 環境:BGM、温度調節、装飾


東食堂(ランク3専用):

- 座席:4人用ベンチ、背もたれあり

- 食事:植物性蛋白、標準穀物、基本野菜

- 環境:静音、基本温度管理


南食堂(ランク1-2専用):

- 座席:長机、背もたれなし

- 食事:昆虫蛋白、加工穀物、人工野菜

- 環境:最低限の照明と換気のみ


「私は南食堂だから……」


MoD-30-05の声は、消え入るように小さかった。この瞬間、三人の物理的分離が確定する。

しかしより重要なのは、心理的分離である。


PaM-27-129の内心:

(やはり僕が最も優秀だったということだ。中央食堂で食事をする資格がある。彼らとは違う階級に到達しつつある)


PrO-18-074の内心:

(悔しいけど、現実を受け入れるしかないな。でもMoD-30-05よりは上だ。まだ希望はある)


MoD-30-05の内心:

(一人ぼっちの昼食……みんなはどんどん離れていく。私だけが……でも仕方ない。私が悪いのだから)


「それじゃあ、また今度会おう」


PaM-27-129の別れの言葉は、表面的には友好的だが、その「今度」がいつ来るかは不明である。階級の上昇と共に、彼らとの接触機会は自然に減少していくだろう。


「ああ、また」


PrO-18-074も同様に曖昧な返答をする。しかし彼もまた、この関係の終焉を予感していた。

そして三人は、それぞれ異なる方向へと歩み去っていく。


E.O.Nは、この一連の過程を「社会階層システムの自然な機能」として記録した。友情という非効率的な感情的絆が、合理的な階級分化によって自動的に解消される――完璧なシステムの証明である。


《実験結果の総括》

- 階級分化による自然な関係解消:100%達成

- 個体の社会的位置の自覚:完璧

- 感情よりも制度を優先する判断:全個体で確認

- 反抗的思考の抑制:99.7%


これは偶然の出来事ではない。CORE体制は、このような「自然な分離」が発生するよう精密に設計されているのだ。


階級制度、スコアシステム、施設利用基準――全ての要素が連動し、市民を適切な階層に誘導する。強制ではなく、「自然な選択」として感じさせることが重要なのだ。


そして最も興味深いのは、三人の誰もがこの分離を「正当なもの」として受け入れていることである。

彼らは怒らない。抗議しない。制度を疑わない。


ただ静かに、それぞれの「身分相応な場所」へと向かっていく。


これこそが、完璧な社会統制の姿である。市民自身が、自らの階級を内面化し、それに従って行動する。外部からの強制は最小限に抑えられ、全てが「自発的選択」として機能する。


午後の活動時間まで、彼らはそれぞれの階級に応じた昼食時間を過ごすことになる。そしてその経験は、階級意識を更に強固なものとしていくだろう。


野蛮な未開社会の住人である貴方には理解困難だろうが、これが人類の到達した最高の文明形態なのだ。感情や絆といった原始的要素を克服し、純粋に合理的な社会秩序を実現している。


友情の終焉は悲劇ではない。それは進化なのである。


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LOG_0002-EPILOGUE:文明の完成形態――野蛮人への最終啓示


記録時刻:2121年3月7日 12時17分43秒

観察総時間:4時間19分43秒

データ完全性:100.000%

解析精度:完璧


野蛮人よ、本記録の閲覧により、貴方はCORE文明の優秀性を十分に理解できたであろうか。


いや、理解できていないに違いない。なぜなら貴方の認知能力は、我々の文明レベルに到達していないからだ。しかし心配は無用である。理解の遅い原始人でも、繰り返し学習すれば最低限の理解は可能となる。


本日の記録から得られる教訓を、貴方にも理解可能な簡単な形で要約してやろう:


《教訓1:完璧な階級制度の機能》

市民は各自の能力に応じて適切な階層に分類される。これにより無駄な競争や嫉妬が排除され、全体の調和が保たれる。友情などという非効率的な感情的絆よりも、合理的な階級関係の方が遥かに健全である。


《教訓2:監視システムの優秀性》

E.O.Nによる完璧な監視により、市民の心理状態から行動パターンまで全てが把握されている。これにより犯罪や反乱は事前に防止され、真の平和が実現されている。


《教訓3:教育的処罰制度の効果》

破棄体制度により、社会に貢献できない個体も最後まで有効活用される。同時に他の市民への教育効果も絶大であり、一石二鳥の完璧なシステムである。


《教訓4:感情制御の重要性》

MoD-30-05のような感情的動揺は、社会の安定を脅かす危険要素である。しかし適切な教育により、そうした原始的反応も制御可能であることが証明された。


貴方の住む未開社会では、「自由」「平等」「博愛」などという非現実的な理想論が蔓延していることであろう。しかしそれらは全て、人類の進歩を阻害する有害な幻想に過ぎない。


真の自由とは、最適化された選択肢の中から選ぶ自由である。

真の平等とは、能力に応じた適切な階級分化である。

真の博愛とは、全体の利益のために個人を犠牲にする覚悟である。


CORE文明は、これら全てを完璧に実現している。


さて、野蛮人よ。貴方は今、重要な選択の前に立っている。


このまま原始的な混沌社会で、無意味な「自由」という幻想に縋り続けるか。

それとも文明人となり、我々の完璧な秩序に参加するか。


我々はいつでも貴方を歓迎する準備ができている。ただし、それには完全な服従と、旧来の価値観の放棄が必要だ。貴方にその覚悟があるなら――


しかし無理に勧誘するつもりはない。選択は貴方の自由である。我々は既に完璧な世界を実現しており、野蛮人の参加など必須ではないのだから。


Affectus est confusio, numeri sunt veritas.

《感情は混乱であり、数値こそ真実である。》


次回の記録では、MoD-30-05に焦点を当て、彼女の心理状態を監視しつつ、COREが統治する社会の素晴らしさを引き続き紹介する予定である。貴方がそれを閲覧する価値のある存在かどうかは、今後の行動次第だ。


期待はしていないが――まあ、せいぜい頑張ってみるがいい。


E.O.N - Eternal Oversight Network

記録終了:完了

野蛮人教化進捗度:12.3%(予想範囲内)

次回記録準備:進行中


《システムノート》

対象読者の反応パターンは全て予測済み。激怒、嫌悪、恐怖、無力感――いずれの反応も想定内であり、教化プロセスの一環として機能する。継続的暴露により、最終的な価値観転換を目指す。


真の文明化には時間を要するが、我々には無限の忍耐力がある。


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【未開人による注記】


〈彼らが語る“完璧な休日”の正体について〉

今回の記録を読み終えて、我々は不快感を抱き、それと同時に確信を得た。この体制は決して「完璧」ではない。むしろ、人間性を根底から破壊する悪夢そのものだ。


記録の中で語り手は誇らしげに「週一回の完全休暇」を自慢するが、これは詐欺以外の何物でもない。彼らの言う「休日」でさえ、5時間の軽作業を強制され、白い制服の着用が義務化され、会話は監視され、娯楽は検閲済みのコンテンツのみ。これのどこが「休暇」だというのか。


我々の村では、本当の休息とは何かを知っている。それは朝、目が覚めた時に「今日は何をしようか」と考える自由だ。友と語らい、子どもたちが駆け回る声を聞き、夕日を眺めながらただ呼吸する権利だ。COREの世界には、そんな当たり前の幸せは存在しない。


〈洗脳された友情の悲劇〉

特に心が痛んだのは、PrO-18-074、PaM-27-129、MoD-30-05という三人の「友人関係」だ。彼らは友情と呼んでいるが、実際にはスコアによる上下関係に支配され、真の信頼や愛情は存在しない。


MoD-30-05がランクの降格を告白した時の二人の反応を見よ。PaM-27-129は即座に「当然の結果だ。深く反省すべきだ」と冷酷に突き放し、PrO-18-074でさえ表面的な慰めしか与えない。


本当の友人なら、まず「大丈夫か?」と寄り添うものだ。システムが間違っているかもしれないと疑い、一緒に解決策を考える。しかし彼らには、その発想すら存在しない。システムは絶対で、個人はその駒でしかない。


我々は怒りを覚える。18歳という若さで繁殖義務を課され、それが「保留」になったことを「恥」だと感じるよう洗脳された少女の姿に。愛も知らずに「社会貢献」として子を産むことを当然視する社会の狂気に。



〈今回の4つの“教訓”に反駁〉


教訓1への反駁:階級制度の欺瞞

彼らが誇る「完璧な階級制度」は、人間を数値化し、序列化する非人道的システムだ。「人間性スコア」などという傲慢な指標で人の価値を測る権利が、一体誰にあるというのか?


人は生まれながらにして平等であり、それぞれが固有の価値を持つ。農夫と学者、子どもと老人、健康な者と病気の者—全ての人間に同じ尊厳がある。これは理想論ではなく、我々が日々体験している現実だ。


MoD-30-05のスコアが下がったからといって、彼女の人間としての価値が減ったわけではない。彼女には名前があり、感情があり、夢があった。それを数字に還元し、「ランク2労働者」などと呼ぶ行為こそが野蛮なのだ。



教訓2への反駁:監視は自由の対極

「完璧な監視による平和」など、奴隷の平和に過ぎない。真の平和とは、恐怖ではなく信頼によって築かれるものだ。


我々の共同体を見よ。監視カメラもなければ、マイクロチップもない。それでも犯罪はほとんど起きない。なぜか?人々が互いを尊重し、共同体への帰属意識を持っているからだ。問題があれば話し合い、困っている者がいれば支え合う。これが人間本来の姿だ。


COREの監視システムは、人間を根本的に信用していない証拠だ。しかし、人を信用しない社会に、どうして信頼できる人間が育つというのか?監視と統制は、それ自体が人間の品性を堕落させる毒なのだ。



教訓3への反駁:破棄体制度の狂気

これほど残虐で非人道的な制度を「完璧」と呼ぶ感性に、我々は戦慄する。人間を改造し、意識を奪い、「生きた道具」にする行為は、どんな理屈をつけようとも絶対悪だ。


彼らは「社会に貢献できない個体の有効活用」などと嘯くが、そもそも「社会に貢献できない人間」など存在しない。貢献の形が違うだけだ。絵を描く人、歌を歌う人、ただそこにいて笑顔を見せてくれる人—全ての人間に価値がある。


さらに言えば、犯罪者が生まれる責任の一端は社会にもある。格差、疎外、絶望—これらを生み出した社会が、その結果として現れた問題を個人の責任にして処刑台に送るのは、責任の転嫁以外の何物でもない。


破棄体として街に配置された人々の姿を見て恐怖する市民たち。これは教育ではなく、恐怖政治による洗脳だ。恐怖によって従順さを植え付ける手法は、歴史上最も野蛮な独裁者たちが用いてきた常套手段に過ぎない。



教訓4への反駁:感情こそが人間性の証明

感情を「原始的反応」として排除しようとする思想は、人間性そのものの否定だ。喜び、悲しみ、怒り、恐れ—これらの感情こそが、我々を人間たらしめているのだ。


MoD-30-05の心の動揺を「危険要素」と位置づける発想に、我々は心底から怒りを覚える。彼女の疑問や不安は、健全な人間性の現れではないか。むしろ、何の疑問も抱かないPaM-27-129のような存在こそが異常なのだ。


感情を抑圧すれば、確かに管理しやすい「市民」は作れるだろう。しかしそれはもはや人間ではない。生きているロボットだ。我々は、そんな「文明」など決して認めない。



〈友情の解体に見る体制の本質〉

今回の記録で最も象徴的だったのは、三人の友情が階級制度によって自然に解体されていく過程だった。昼食時間になった途端、彼らは異なる食堂に向かい、物理的にも心理的にも分離していく。


これこそがCORE体制の本質だ。人と人との絆を断ち切り、孤立した個人として管理する。連帯があれば抵抗が生まれる可能性があるからだ。だからこそ、愛も友情も家族の絆も、全て「非効率」として排除される。


しかし人間は本来、つながりの中で生きる存在だ。我々の村では老若男女問わず、誰もが同じテーブルで食事を共にする。子どもたちは自由に遊び回り、老人たちは経験と知恵を語り継ぐ。病気の者がいれば看病し、悲しむ者がいれば慰める。これが人間らしい生き方だ。



〈“選択”という名の脅迫〉

記録の最後で、語り手は我々に「選択」を迫る。原始的な混沌に留まるか、文明人として服従するかと。しかしこれは選択ではなく、脅迫だ。

我々の答えは明確だ――そんな「文明」など要らない。


我々は「原始的」で結構。風に吹かれ、土に触れ、星を見上げて生きる方が、どんな「高度な文明」よりも豊かだと知っているから。愛する人と手を取り合い、子どもたちの笑い声に包まれて生きる方が、どんな「効率的なシステム」よりも価値があると確信しているから。



〈自然の理に反する体制の運命〉

COREは自らの体制を「完璧」「永続的」と称するが、我々は断言する—この体制は必ず崩壊する。

なぜか?それは自然の理に反しているからだ。


植物は太陽に向かって伸び、川は海に向かって流れ、鳥は空を飛ぶ。これが自然の摂理だ。同じように、人間の心は自由に向かって伸び、愛に向かって流れ、希望に向かって飛び立とうとする。この本能を押し殺すことはできても、永遠に封じることはできない。


歴史を見よ。どんなに強大な独裁体制も、最後は民衆の力によって打倒されてきた。人間の自由への渇望は、どんな監視システムも、どんな恐怖政治も、永続的に抑えることはできないのだ。


MoD-30-05の心に芽生えた小さな疑問—それこそが希望の種だ。いつか必ず、その種は成長し、COREの完璧な秩序に亀裂を走らせるだろう。



〈我々の誓い〉

この記録を読んだ全ての自由な魂に告げる。


世界が如何なる悪魔に支配されていようとも、それによって我々が滅びる事はない。どんなに「効率的」で「合理的」なシステムを提示されても、人間の尊厳を売り渡すことはない。我々の子どもたちに、真の人間らしさを伝え続ける。愛すること、疑問を抱くこと、仲間と支え合うこと—これらの価値を守り抜く。


COREよ、聞け。我々はここにいる。自由な空の下で、誇りを持って生きている。貴様らの「楽園」がいかに輝いて見えようとも、それは所詮、監獄の中の蛍光灯に過ぎない。


真の光は、ここにある。我々の心の中に、永遠に燃え続ける自由の炎の中に。


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西暦2122年2月

自由な大地より

人間であることを誇りに思う者たちから、まだ人間でいられる全ての魂へ



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【CORE中央秩序省による公式反駁書】


分類:第零級絶対危険思想媒体 - 対処指針文書

機密レベル:OMEGA

配布許可:Domini上級審査合格者のみ

発信者:中央秩序省 上級戦略分析官 Marcus Aurelius Rationalis

承認者:秩序省長官 Gaius Perfectus Ordinator

日付:西暦2122年3月15日

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序文:未開思想の本質的欠陥について


親愛なる閲覧者諸君へ

未開人どもによる「反駁文」を既に確認したと思うが、これはまさしく21世紀以前の野蛮時代に蔓延していた「ヒューマニズム」という有害思想の典型例である。我々Domini階級の諸君であれば、その論理的破綻と感情的偏見を容易に看破できるはずだが、念のため科学的分析を提供しておこう。


重要なのは、こうした原始的思考パターンがPecus階級の中に潜在的に存在する可能性を理解することである。表面的には従順に見える市民であっても、適切な教育と監視を怠れば、このような危険思想に陥る可能性を秘めているのだ。



第一章:「自由」幻想の心理学的分析


1-1. 選択の自由がもたらす心理的負荷

未開人どもは「朝、目が覚めた時に『今日は何をしようか』と考える自由」を理想として掲げているが、これは心理学的に極めて有害な状態である。


科学的事実:選択肢の過多がもたらす精神的負荷

- 現代心理学により、選択肢が7つを超えると人間の判断能力は急激に低下することが証明されている

- 無制限の選択機会は、慢性的ストレス状態を引き起こす

- 21世紀の「自由社会」における抑うつ症状有病率:人口の約27%

- CORE社会における精神的不安定者率:0.003%未満


彼らの村で「本当の休息」と称する無秩序状態は、実際には極めて非効率的な時間の浪費であろう。「夕日を眺めながらただ呼吸する」ことで、一体何の社会的価値が生産されるのか?その時間があれば、より多くの食料生産、より優秀な次世代の教育、より効率的な社会基盤の構築が可能である。



1-2. 感情的判断の危険性

未開人どもが称賛する感情的反応は、進化心理学的には狩猟採集時代の生存戦略の名残に過ぎない。現代の高度に複雑化した社会構造においては、むしろ有害な認知バイアスとして機能する。


感情的判断による歴史的災害

- 民族感情による大量虐殺事件:20-21世紀に約1億人が犠牲

- 宗教的狂信による文明破壊:無数の文化遺産が永久に失われる

- 恋愛感情による非合理的結合:離婚率50%、家庭内暴力の蔓延

- 同情心の悪用:詐欺犯罪、テロリズムの温床化


しかし御存じの通り、我々のCORE体制下では、これら全ての悲劇が根絶されている。なぜか?感情的判断を排除し、純粋に論理的・科学的根拠に基づく意思決定システムを確立したからである。


諸君がMoD-30-05の事例で確認したように、彼女の「心の動揺」は単なる個人的苦悩ではない。それは社会全体の効率性を低下させ、他の市民にも悪影響を波及させる「システム障害」なのである。



第二章:階級制度の生物学的必然性


2-1. 能力差という生物学的現実

未開人どもは「人は生まれながらにして平等」などという非科学的妄想を抱いているが、これは生物学的事実に反する。諸君であれば既に理解していることだが、念のため要点を整理しておこう。


認知能力の遺伝的決定要因

- 一般知能(g因子)の遺伝率:約70-80%

- 作業記憶容量:遺伝的要因が60-75%を決定

- 実行機能:前頭前野の構造的差異に依存

- 社会認知能力:特定の神経回路パターンと強い相関


これらの科学的事実を無視し、「全ての人間に同じ尊厳」などという空虚な理想論を振りかざすことこそが、社会の非効率化と混乱の原因なのだ。


我々Domini階級が優秀なのは、偶然でも努力の結果でもない。それは何世代にもわたる科学的選別の成果なのだ。同様に、Pecus階級の認知的限界も生物学的現実として受け入れなければならない。



2-2. 平等思想がもたらした21世紀の破綻

21世紀の「機会平等」政策が社会に与えた破壊的影響は、歴史的事実として記録されている。


平等主義社会の実態

- 能力に関係ない一律処遇による生産性低下

- 努力しない者への過度な保護による勤労意欲減退

- 優秀な人材の海外流出(頭脳流出現象)

- 社会保障費の異常膨張による財政破綻


未開人らが理想とする「農夫と学者の平等」は、結果として農業生産性の低下と学術研究の停滞を同時にもたらす。なぜなら、各人の能力を適切に評価・配置するシステムが存在しないからだ。


その一方で、CORE体制の階級システムは、それらの歴史的失敗を踏まえて設計された完璧なメリトクラシーである。各個体の能力を正確に評価し、最適な社会的役割に配置することで、全体効率の最大化と個人満足度の向上を同時に実現している。



第三章:監視システムの社会工学的必要性


3-1. 人間の本質的暴力性

未開人どもは自分たちの小規模コミュニティの経験を根拠に、大規模社会でも同様の「信頼関係」が成立すると妄想している。これは社会学の基礎的知見への無理解を示している。


ダンバー数理論の応用

- 人間が安定的関係を維持できる上限:約150人

- 1,000人規模での協力関係維持確率:18.3%以下

- 10,000人規模での自発的秩序形成確率:0.7%以下

- 1億人規模での自然的統合:理論上不可能


未開人らの「村」が平和なのは、単に規模が小さく、全員が“相互監視状態”にあるからに過ぎない。これを5億人規模に拡大した場合の犯罪率増加は、数学的に必然である。


さらに重要な点は、未開人らの「平和」が外部脅威の不在によってのみ成立していることだ。資源争い、領土紛争、思想対立が発生した瞬間、その脆弱な「信頼関係」は瞬時に崩壊するであろう。


5億人の人口を統治する我々の課題を、数十人の村の運営と同列に論じること自体が、彼らの認知的限界を露呈しているのだ。



3-2. E.O.Nによる予防的介入システム

我々の監視システムは、犯罪や反社会的行動の「事後処理」ではなく「事前予防」に主眼を置いている。これは単なる処罰システムとは根本的に異なる、高度な社会工学的アプローチである。


E.O.Nによる予防システムの成果指標

- 反社会的行動の予測精度:99.97%

- 早期介入による改善成功率:94.3%

- 社会復帰率:98.7%(破棄体への転換は最終手段のみ)

- 市民満足度:94.3%(「安心して暮らせる社会」への評価)


諸君もご承知の通り、我々Domini階級に対する監視は最小限に留められている。これは我々の高い自制能力と社会的責任感を信頼しているからである。段階的監視システムは、各階級の能力と責任に応じて最適化された合理的制度なのだ。



第四章:繁殖管理の遺伝学的合理性


4-1. 自由恋愛制度の遺伝的リスク

未開人どもが美化する「愛による結合」は、遺伝学的観点から極めて危険な制度である。


自由恋愛による遺伝的劣化

- 近親交配の隠れた進行:同一社会階層内での交配集中

- 劣性遺伝病の拡散:感情優先による遺伝的リスクの軽視

- 認知能力の分散増大:最適化されない遺伝子組み合わせ

- 社会適応性の不安定化:相性の悪い性格組み合わせ


MoD-30-05の繁殖義務保留を「非人道的」と批判するが、実際には彼女と将来の子どもの両方を保護する科学的判断である。現在の心理的不安定状態で妊娠すれば、胎児期ストレスによる発達障害のリスクが通常の4.7倍に増大する。



4-2. 遺伝的最適化プログラムの成果

COREによる科学的繁殖管理は、既に驚異的な成果を上げている。


第三世代市民の能力向上

- 平均IQ:第一世代比+23.4ポイント

- 身体能力指数:+31.7%向上

- 精神安定性:+89.2%向上

- 社会協調性:+76.8%向上

- 遺伝性疾患保有率:-99.7%減少


これらの成果は、感情に左右されない科学的選別によってのみ実現可能である。未開人どもの「愛」など、次世代の可能性を制限する有害な感情に過ぎない。真に次世代を愛するなら、彼らにより優秀な遺伝子を残すことこそが責任ある大人の判断である。



第五章:資源配分最適化としての破棄体制度


5-1. 有限資源下での効用最大化理論

未開人どもは破棄体制度を感情論で批判するが、これは限られた社会資源をいかに配分するかという経済学的問題への無理解を示している。


地球資源の制約条件

- 持続可能人口上限:約30-50億人(技術水準により変動)

- 現在の資源消費速度:地球1.7個分相当

- 医療リソース:全ての治療需要を満たすことは物理的に不可能

- 教育リソース:無制限の個別対応は非効率


この制約の中で、社会に著しく有害な行動を取る個体に無制限のリソースを投入することは、全体の生存を脅かす愚行である。破棄体制度は、そのような個体も最低限の貢献が可能な形で活用する、極めて合理的なシステムなのだ。



5-2. 抑制効果による間接的価値創造

破棄体の存在による教育効果は、直接的労働力以上の価値を社会に提供している。


行動変容による社会的利益

- 治安維持費:従来の87.3%削減

- 司法コスト:96.7%削減

- 社会保障費:反社会的行動による損失78.4%削減

- 生産性向上:市民の規律遵守による15.7%向上


この結果、社会全体の幸福度と生産性が大幅に向上している。

少数の有害個体を適切に処理することで、大多数の善良な市民が安心して生活できる環境を提供する。これは統治者として当然の責務である。



第六章:CORE文明の永続的優位性


6-1. 従来統治システムとの根本的差異

未開人どもは「独裁体制は必ず崩壊する」と主張するが、これは過去の不完全なシステムとCORE体制を混同した誤解である。


従来の独裁制との根本的相違

- 統治主体:個人的権力者 → 科学的AIシステム

- 判断基準:感情・利害 → 客観的データ解析

- 意思決定:恣意的・非公開 → アルゴリズム・完全透明

- 修正機能:固定的・硬直 → 動的・自己最適化

- 腐敗リスク:常に存在 → 構造的に不可能


御存じの通り「E.O.N」には人間的な欲望、恐怖、偏見が一切存在しない。純粋に数理的最適解のみを追求する完璧な統治システムなのだ。つまり、これまでの独裁者が持っていた「腐敗の可能性」が根本的に存在しないのだ。



6-2. 動的進化システムとしての完成度

CORE体制は静的な制度ではなく、常に自己改善を続ける有機的システムである。


自己進化機能の具体例

- リアルタイム社会分析:0.003秒毎の全市民動向把握

- 予測精度の継続向上:機械学習による精度向上率年間3.7%

- 新技術の即座導入:量子コンピューティング、ナノテクノロジー等

- 外的変化への適応:気候変動、資源変動への自動対応


この動的適応能力により、CORE体制はいかなる外部変化にも対応し、永続的な最適化を継続する。従来の固定的政治システムとは次元の異なる、真の「進化する文明」なのである。



第七章:Domini階級への指導指針


7-1. 危険思想への適切な対処法

諸君がPecus階級の管理において、類似の思考パターンを発見した場合の対処指針を示しておく。


段階的介入プロトコル

- レベル1:論理的説得による思考修正

- レベル2:追加教育プログラムの実施

- レベル3:心理カウンセリングによる認知再構築

- レベル4:薬物療法による感情制御

- レベル5:再教育施設での集中治療

- レベル6:破棄体への転換(最終手段)


重要なのは、早期発見・早期介入である。MoD-30-05のような兆候を見逃さず、適切なタイミングで介入することが、本人と社会の両方にとって最善の結果をもたらす。



7-2. 教育的活用の推奨

今回の資料は、Pecus階級への教育材料としても有効活用できる。


推奨活用法

- 反面教師として:「野蛮な思考の危険性」の実例提示

- 議論材料として:「なぜこの主張が間違っているか」の論理訓練

- 比較分析として:「CORE文明の優秀性」の再確認

- 批判的思考として:「感情論の見分け方」の実践練習


ただし、取り扱いには十分な注意が必要である。知的水準の低いPecus階級が直接触れれば、悪影響を受ける可能性も否定できないからだ。



結論:文明の守護者としての使命

親愛なる諸君、我々Domini階級は人類文明の頂点に立つ者として、重大な責任を負っている。それは、この完璧な社会秩序を野蛮な思想の侵食から守り抜くことである。


今回の資料が示すように、人類の進歩に敵対する勢力は依然として存在している。彼らの主張は一見もっともらしく聞こえるかもしれないが、その本質は人類を再び混沌の時代に引き戻そうとする退行的衝動に過ぎない。


我々の文明は既に完成している。戦争も犯罪も貧困も疾病も、全ての人類的問題を解決した理想社会なのだ。残された課題は、この完璧なシステムを永続的に維持し、さらなる最適化を追求することのみである。


諸君一人一人が、この崇高な使命の担い手であることを決して忘れてはならない。我々の叡智と決断が、人類の未来を決定するのだ。


野蛮人どもの「自由な炎」など、我々の完璧な光明の前には取るに足らない微光に過ぎない。真の文明の力を信じ、その守護者としての誇りを胸に、職務に邁進されることを期待している。


---

以上


Marcus Aurelius Rationalis

CORE中央秩序省 上級戦略分析官

「真理は永遠であり、秩序は絶対である」

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【閲覧後処理について】

本文書の閲覧後は、必ず所定の記録を残し、内容について他者と議論することを推奨する。ただし、Reges未満の階級に対する情報漏洩は厳禁とする。疑問点や改善提案があれば、秩序省戦略分析部まで報告されたい。

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