第8話
神の子を迎えるに当っての準備が進められていく。
神剣国で開かれることとなった光太郎のお披露目。
もちろん、スムーズに進むわけが無い。
神遣国に居る神の子のお披露目が何故か、神剣国で開かれるのだ。
・・・神盾国が黙っているわけが無い。
そう、神盾国の王が国を側近に任せて神剣国に赴くほどに。
「ほれ、これもお食べ。とても甘い・・・そなたの可愛らしい口に合うと思うがのぉ」
「そ、そんな、可愛いだなんて・・・」
「おい」
「わらわの言に反論するのかえ?いくらわらわの可愛いミモリでも許さないぞ・・・」
「ミラルダ様ぁ・・・」
「おいっ!」
美守とのお茶会の時間を邪魔するその声に、今まで無視を決め込んでいたミラルダは鬱陶しそうに無駄にでかい男を見上げた。
膝の上に乗せた美守をぎゅっと抱きしめて。
「この俺を無視するとはいい度胸だな」
「無視したくとも、貴様は無駄にでかいからの。嫌でも目に付く」
「・・・野蛮な剣の国の分際で」
「守るしか脳の無い盾の国が」
「「・・・・・・」」
氷のような視線でお互いを貫く2人は王たる威厳と迫力を持っている。
神盾国の王、クラウ。
2メートルを超えるであろう大きな身体に、緩くウェーブの掛かった黒髪、青い瞳の無愛想な男。
腰には2本の細身の剣が刺さっていた。
盾の国、と言っておきながら、クラウは一流の剣士である。
ようは動機の問題だ。
破壊するために剣を振るう神剣国と、何かを守るためだけに剣を振るう神盾国。
根本的に考え方の違う2つの国の関係は余り良いものではない。
しかし、神遣国に間を取り持たれ戦をすることは叶わなかった。
地理的にも神遣国が間にあるため戦をするには神遣国をどうしても巻き込んでしまうのだ。
同じ神を信仰する2つの国にとって神遣国を戦に巻き込むのだけはタブー。
こうして世界の均衡は保たれている。
戦は出来ないと言う事実が、戦をすると言う概念を根本から無くしてしまっているからだ。
そのせいか、確執はあるものの、平和極まりないこの世界で久しぶりのぶつかり合いと言って良いだろう。
「・・・・ぷはっ!」
「ん?ああ、すまなんだ」
いつまでも続けられるかと思った2人のにらみ合いは、ミラルダの胸で窒息しそうになった美守の息継ぎで止まった。
必死に、はひはひ、と小さく呼吸を続ける美守をミラルダは緩んだ顔で見つめた。
「・・・なんだ?そのねずみのような女は」
「ねずみ?・・・ああ、馬鹿でかい貴様と並べれば小さくてねずみのように見えるかもしれんな」
「そう言うことを言っているんじゃない。いつからそう言う趣味になった?」
「わらわは今でも若い男が好きじゃが?安心しろ、貴様は範疇外じゃ。残念だったの」
「貴様のような肉食女、こちらから願い下げだ。それに俺はまだ若い。今年で28だからな」
「十分年では無いか」
「貴様に言われたくない。なにせ貴様は今年・・・」
「・・・それ以上、一言でもしゃべってみろ。首を落としてやる」
ミラルダが胸の谷間から何かを取り出し、次の瞬間、どすっと鈍い音がした。
美守は不思議に思って後ろを振り返ると壁に、アールヌーヴォーのような柄が刻まれた細身の短剣が刺さっていた。
どうやらミラルダが投げた短剣をクラウが弾き飛ばし、壁に刺さったらしかった。
驚いてクラウを見上げれば、思いっきり睨まれた。
「おい、それ以上わらわの可愛い美守を見つめるな。おお、怖かったの」
「あ・・・いえ、怖いだなんて」
「よいのじゃよいのじゃ。唯でさえでかいのに、この人を見下したような態度がさらにこやつの人相を悪くしているからの。怖くて当たり前じゃ。・・・そんなことよりミモリ、披露目のドレスを選ぼうではないか」
「好き勝手言いおって・・・おい、無視をするな!」
ミラルダの視線の先にあるのは、いつのまにか美守のために仕立てられたたくさんのドレス。
数名の侍女とリュークがドレスを持ってそこに立っていた。
美守がおろおろとリュークに視線で助けを求めるが相手は2国の王。
いくらリュークでも「がんばってください」と目で言い返すのが精一杯だ。
美守の披露宴で着るドレスを決めていたのだが、数がありすぎて美守はいつまでたっても決められないで居た。
そのためミラルダを待っていたクラウが痺れを切らして乗り込んできたというわけだ。
無視をし続けるミラルダに、クラウは矛先を美守に変える。
「女、早く選べ」
「え、えと・・・ごめんなさい」
クラウに急かされて、焦ってしまい、ますます選べなくなる。
おろおろと視線を彷徨わせ、涙目になっていた。
そんな美守をにやにやと観察するミラルダ。
心配そうに見つめるリューク。
イライラを隠しもせず見下ろすクラウ。
ぼろ・・・っと美守の目から涙が流れそうになったとき、目の前に淡いピンクのドレスが差し出された。
驚いて目線をあげればクラウが見下ろしていて、美守は反射的に震えてしまう。
それを見たクラウが顔を顰めた。
「・・・色が白いからこれが似合うんじゃないか」
「え?あ、あ。・・・ありがとうございます」
差し出されたドレスを受け取る。
プリンセスラインの可愛らしいピンクのドレスは、ミラルダが仕立てたものでも数少ない露出を控えた物。
「おい、貴様よくも邪魔を!もう少しでミモリのかわゆい泣き顔が見られたものを・・・!しかも、なんだ?このドレスは!!色は良いが布が多すぎる!女は大胆かつ妖艶にならねば・・・」
「貴様が選べば裸同然のドレスになってしまうだろう。嫁入り前の娘にそのような格好をさせるべきではない」
言い合いを始めた2人におろおろしつつ、美守はミラルダの腕を取った。
直ぐに「なにかえ?」と言って優しい笑顔が向けられた。
「私、これにします」
「何・・・?こんなやつが選らんだドレスを着ると言うのかえ!?」
「え・・・だって、これもミラルダ様が私のために仕立ててくださったものだから・・・」
俯いて言うと、ミラルダが自分の頬を美守の頬にこすり付けてきた。
「愛いやつ!」と言ってぐりぐりする。
はっきり言って、クラウがドレスを選んでくれて助かった。
お嬢様である美守には余り物欲はなかった。
何でも手に入るし、欲しがる前に全てが揃っていたからだ。
菓子も雑貨も、ペットや服に至るまで。
特に服は1度も自分で選んだことがない。
いつもその日に着る服は選ばれており、美守も反論などせず、黙ってそれを着ていたからだ。
「いいかげんにしろ!俺は真剣な話をしに来たんだ」
「・・・仕方ないのぉ。ミモリ、わらわはこやつと話してくるゆえ、ここでゆるりと過ごしていけばよい」
「はい」
ひょい、とまるで子供のように美守を抱き上げ、椅子に座らせるミラルダ。
「いくぞ」とクラウに言ったミラルダは直ぐに部屋を出て行ってしまう。
そしてそれに続こうとしたクラウが足を止めて美守を振り返ったので、美守は小首をかしげた。
「・・・お前は1人では何も決められないのか?」
伏せ勝ちの目を大きく見開いてクラウを凝視するが、クラウは美守に興味を無くしたかのようにミラルダの後を追ったのだった。
リュークが傍らで「大丈夫ですか?」と心配気に顔を覗き込んで来るが、美守はそれに答えられなかった。
クラウの言葉が、美守の胸に深く突き刺さった。
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「神遣国直々に?・・・そうか、ならば仕方が無いな。しかし、何故?」
クラウの質問にミラルダはにやり、と笑う。
その顔を見てクラウは嫌そうに顔を顰めたが、ミラルダは気にせず話し続けた。
神の子の披露目を神遣国ではなく神剣国でしたい、とファイが文を遣わされて来た。
何故わざわざ神剣国で?と思ったが、ミラルダには美守のせいだとすぐに分かった。
なぜなら、美守との会話で美守と神の子が幼馴染・・・しかも親しい仲だと言う事が分かっていたから。
神殿は美守を拒絶して邪魔者を排除するように、美守を神剣国に押し付けてきたのだ。
それが「神剣国で神の子のお披露目をしたい」だ。
神の子は美守に会いたかったのだろう。
それならば美守を披露目のときに神遣国に呼び寄せれば良い。
しかしそうはしなかった。
・・・それほどまでに、神官どもは神殿に拒絶されたものを神域の傍にすら近寄せたくないのだ。
「わらわのかわゆいミモリをよくもここまで邪険にしてくれるものよ」
神官の長であるダイヤの顔を思い出して、ミラルダは「吐き気がするわ」と顔を顰めた。
「・・・・・」
そんなミラルダを視界の隅に捕らえつつ、クラウは美守に直接、名すら聞いていないことに気が付いたのだった。
もう、死にたい・・・。
って思った。これ書いてるとき。
だって!!だって!!聞いてくださいよぉ!!
1回書いたのに!!
間違ってAltキーを押してしまい、全消し・・・
しかもコピーしてなかった・・・
書き直しですよぉ!?
はぁ・・・死ぬかと思った。。。