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第5話 海老男に拾われました。契約条件が“膝枕”って聞いてません!

あとがきにロブ視点の日記を追加しました。


興味ある方は最後までお付き合いください。

「じゃあ、体で払ってもらうか」


 ロブの言葉が、まるで爆弾のようにリリアの耳元で炸裂した。


「――はい?」


 瞬間、リリアの顔が真っ赤に染まる。心臓がドクドクと早鐘を打っている。


(い、今の……「体で払え」って、まさか……!?)


 リリアの頭の中で一気に何千何万もの疑問符が渦巻く。だが、その中に紛れ込んでいたのは――


【妄想1】

《荒野の夜、焚き火を囲む二人》


『契約の儀式だ……逃げられねぇぞ?』


 ロブが静かに呟き、リリアの手を取る。その手がぐっと強く握られる。


 彼の目が真剣で、どこか獣のような色を帯びている。リリアは、無意識に胸が高鳴るのを感じながら、相手の力強い腕に包まれる。


 そしてそのまま――ロブが引き寄せる。

 リリアの心は、動揺と興奮が入り混じり、どうしようもなく震え始める。


(ひぃぃぃ!? まさか! そんな、まだ心の準備が……!)


【妄想2】

《血気盛んな戦の後、砂塵舞う荒野》


『……気が昂っていけねえ』


 ロブの低い声が耳元で響き、リリアは動けない。


 戦の余韻が彼を突き動かす。荒々しくリリアの腕を引いて、背を壁に押しつけられる。

 強引な手つきに体が震え、彼女の唇がわずかに開いた。


 視界がぼやけ、世界が歪んでいく中で――彼の顔が、さらに近づいてきた。


(ひゃああああ! え、戦場の余韻でこんな展開になっちゃうんですか!?!?)


【妄想3】

《森の中、夕日が沈む空の下》


『俺はずっと……求めていたのかもしれねぇ』


 真剣な目で見つめられるリリア。胸がどくどくと響き、心臓が破裂しそうなほどに鼓動が早くなる。


『えっ!? ちょっ、ロブさん!?』


 そんな声が思わず漏れる。


『お前のそのささやかな胸を……!』


(ふあああああ!私の、む、胸をぉぉぉ!?)

 


 脳内暴走中のリリアは、実際には何も言えず、ただ赤くなるばかり。どんどん沸き上がる妄想に振り回され、身体が反応する。


「そ、そんなのまだ早いです!!」


 リリアは両手をブンブンと振りながら、必死にその発言を否定する。


「……は?」


 ロブが静かに振り返る。


「なにがそんなのだよ」


「せ、せめて膝枕とか、そういうのなら!」


「…………それでもいいけど」


「へ?」


 リリアは言葉が出てこない。想像と現実が入り混じり、混乱している。


「すべて終わったら膝枕してもらおうか」


「……え?」


「ほら、戦い終わったら疲れるだろ? その時、お前に膝枕してもらう」


「……そんなのでいいんですか?」


「金もない、村も襲われて食い物も期待できねぇ。こっちは冒険者として無報酬でやるわけにゃいかねえ。なら、それでいいさ」


「そ、そうですか……」


 リリアはポカンとした。だが、その言葉を聞いてふと我に返る。


(あれ、膝枕だけで済むの……?)


 その瞬間、膝枕のイメージが膨らみ、再び脳内が燃え上がる。


【妄想4】

《夜の静寂、リリアの膝の上》


『……なぁ、ちょっとだけ、こうしてちゃダメか?』


 いつになく低くて、どこか不安げな声。

 ロブが静かに頭を下げ、リリアの膝にそっと顔を預ける。


「え、えっ……!? ちょ、ロブさん!?」


 しかし彼はもう、動こうとしなかった。


『……なんか、もう今日はダメだわ……癒しが……足りねぇ……』


 ごろりと寝返るようにして横になると、長身の男がすっぽりとリリアの膝の上に収まる。

 その姿はまるで――限界を迎えた大型犬。


 リリアが困惑しながらも髪をそっと撫でると、ロブはふにゃあと目を閉じた。


『あー……それそれ。……撫でられるの、嫌いじゃない……』


 そのまま、指先を甘えるようにリリアの膝にすり寄せてきて――


『なぁ……今だけでいいから、ママって呼んでもいいか?』


「ぶっ……!?」


 リリアの思考が完全にフリーズする。


(まままままママ!? 私、母性出てる!? えっ、ロブさんって甘えん坊だったの!?)


 だがその時、彼がうっすらと笑ってささやいた。


『……ママ……』


 その顔は、どこか寂しげで、でも安心しきった少年のようだった。


(だ、ダメだこれ……不意打ちがすぎる……!)




「マザコン!? 私に母性を見たんですか!?」


「違うわ!!!」


 一気に現実に戻ったリリアが叫ぶ。


「何を妄想してんだ!膝枕って言ったのはお前だろ!」


「じゃあ、本当は何をやらせようとしたんですか!?」


「――体で払えってのは、俺の弟子になれってことだ!」


 不意に告げられたその言葉に、リリアはきょとんと目を瞬かせた。


「……弟子? 私が……ロブさんの?」


「そうだ。お前に戦う力を与える。冒険者として生きていく術を、教えてやる」


 ロブは真面目な顔で言うが、どこか照れ隠しのように視線を逸らしていた。


「……ど、どうして……?」


 思わず問い返すと、ロブは少しだけ間を置いて、言葉を継いだ。


「家族は……生きてるか?」


 その問いに、リリアは小さく首を横に振った。唇をかみ、ぐっと感情を堪える。


「……多分、みんな、あいつらに……」


「そうか。……じゃあ、お前はもう天涯孤独の身ってわけだ」


 ぽつりと、優しさを滲ませるように呟くロブ。その声音に、リリアの胸がきゅっと締めつけられる。


「……村を救えても、お前に野垂れ死にされちゃ……目覚めが悪いからな。だったら――俺が面倒見てやるよ」


「え……?」


 戸惑って見上げたその瞳に、ロブはふっと笑みを浮かべて、からかうように続けた。


「だから、お前は俺の飯を作り、掃除洗濯、買い出し、マントの手入れ、靴磨き、あと風呂も沸かせ」


「ちょっと待ってください!? それ私が面倒見てるじゃないですか!?」


「いやいや、労働の対価ってやつだ。弟子ってのはそういうもんだろ?」


 どこか嬉しそうに言うロブを見て、リリアはますます声を荒げる。


「どう見ても家政婦でしょ!? むしろ専属メイドって言った方が近い!! 私の人生どうなるんですか!!?」


「まあまあ。ついでに、夜中にのど乾いたら水汲み頼むな」


「その“ついで”がどんどん増えていくぅぅぅ!!!」


 わーわー言い合いながらも、心の中は不思議とあたたかかった。


(……なんだろ。ちょっとだけ、楽しいかも)


「……ったく、文句ばっかだな」


 呆れたようにため息をつくロブだったが、その目はどこか優しい。


「でも、お前、けっこうちゃんとやりそうだ。根性はあるし、声もでかいし、言い返してくるし……」


「褒めてるようでけなしてますよね、それ」


「あと、見てて飽きない」


「それもう完全にペット扱いぃぃ!?」


 だが、ロブの口元がわずかにほころんだその瞬間――


 リリアの胸に、確かなものが芽生えていた。


(この人のもとでなら……生きていけるかもしれない)


「で、お前……歳いくつだ?」


 ふとしたタイミングで、ロブが問いかけた。


「えっ? 十四ですけど……」


 その瞬間、ロブの足がぴたりと止まる。


「……三年後、か」


 ぽつりと呟いたその声に、リリアの眉がピクリと跳ねた。


「は? 三年後って……」


 言いかけて、ハッとする。ロブの顔が微妙に真剣だった。


「まさか……三年後に美味しく食べようと!? 成長を待って熟したらって!?」


 全力で距離を取りながらリリアが指を突きつける。


「違うわ!!」 


 ロブが即座にツッコミ返した。


「な、なんでそんな発想になるんだよ!」


「だって! 年齢聞いて即“三年後”って、それもう何かしらのフラグじゃないですか!! 育てて食べる系のやつでしょ絶対!!」


「ったく……お前、そういう方向にしか頭働かねぇのかよ」


 呆れたように肩をすくめるロブに、リリアは顔を真っ赤にして怒鳴った。


「そっちがそっちに向かわせてるんでしょーが!!」


 しばしにらみ合ったあと、ロブがふっと溜め息をつく。


「まあでも、三年経ったら胸も――」


「それ以上はセクハラです!! 未来を見据えて勝手に育成計画立てないでください!!」


「いや、まだ伸びしろあるかと思って……」


「あるかないかは私が決めますぅぅぅ!!」


「物理的に決まるだろうが!!」


「今ので師匠への尊敬が五段階くらい下がりましたからね!!」


「落ちすぎだろ!」





 ロブは思わずツッコミを入れたあと、ふっと息をついて立ち上がる。


「……馬鹿やってないで、村に行くぞ」


「えっ、あ、はいっ!」


 慌ててリリアが後を追ってくる気配を背中に感じながら、ロブは歩き出した。


 ……しかし。


 気づけば、視線がわずかに宙を彷徨う。


(三年、か……)


 十四ってことは、“あいつ”より三つ下。


 自然と、昔のことを思い出していた。


『お前、歳いくつなんだ?』


『え?十七です』


『じゅうなな!? その体で!?』


『どこ見て言ってんですか、バカ!!』


 あの時の彼女は、明るくて、まっすぐで、時々涙もろくて……。


 今のリリアと、重なるところが多すぎる。


(……絶対に、同じ結末にはさせねぇ)


 胸の奥がひどくざらついた。


 あの時、守れなかった。


 だから今度こそ、守りきる。


(……お前は、絶対に死なせない)


 そんな決意を飲み込んだまま、俺は振り返らず歩を進めた。


「ロブさん! さっきの発言、いつか訴えますからね!」


「証拠はどこにもねえよ。残念ながらな」


 秘めた思いを隠すように軽い口調で返す


 こんなふうに言い合える日常が、少しでも長く続けばいい。


 そんな願いを、誰にも悟らせずに、彼はただ前を見て歩き続けた。





【ロブの日記①】


 ようやく――ようやくだ。

 リリアと再会できた。


 この時を、俺はどれだけ待ち続けていたか。

 季節がいくつ巡ったかなんて、もう数えるのをやめた。

 正確には……数百年。いや、馬鹿みたいな話だ。実際、馬鹿なんだろう。


 目の前のリリアは、記憶の中より二つ、いや三つは幼く見えた。

 鮮やかな紅の髪、まっすぐな青の瞳――変わっていない。

 なのに、どこかあどけなく、まだ成長途中の柔らかい表情をしていた。


 懐かしさと、安堵と、胸の奥から込み上げる感情の渦に、思わず目頭が熱くなる。


 ……が、そこで俺の目はふと一点に留まった。


 ……あれ?


 いやいやいや、気のせいだよな? ……だよな?


 胸、小さくね?


 っていうか、え? あれ? ……え? 誰? 違う子? リリアってあのリリアじゃなくて? まさかの別人フラグ!?


 ――いや、間違いない。


 リリア・エルメア。

 本人、確定。DNA鑑定いらずのナノマシン照合で一致100%。

 なのに、この圧倒的スレンダーっぷりはなんだ。記憶との差異がでかすぎる。


「今、十四歳……?」


 脳内でタイムスタンプを照らし合わせる。

 なるほど、あと三年か。


 ――三年で、あの大きさになるってマジ?


 おい、未来のリリア、成長曲線どうなってんだ。

 ドラゴンの魔力よりよっぽど神秘的だぞ。


 ……ち、違う。

 俺は胸の話をしてるんじゃない。


 あくまでだな、師として、男として、未来ある少女の健全な成長を――


 楽しみにしてるだけなんだ!!


【リリアの妄想ノート】

~体で払え?って何事ですか師匠!!~


「体で払え」


……その瞬間、時が止まりました。


 ロブさんの口からそんな禁断ワードが飛び出した時、私は思わず全身を抱え込むようにして、服の裾を押さえてました。反射です。完全に防御態勢です。


 なぜなら――


 それってつまり、そういうことじゃないですか!?!?


 しかもあのニヤリ顔。なんですか、あの「わかってるだろ?」みたいな目。

 え、もしかしてこの人、戦闘力だけじゃなくて恋愛経験値もカンストしてます?

 ていうか、“そっちの手解き”までしてくる感じですか??


 心の準備、ゼロなんですけど!?

 むしろマイナスからのスタートなんですけど!!


 で、「せめて膝枕なら……」って言ったら


「それでもいいけど」

ってサラッと言ってきたんですよ!?

 何その即答!? なに!? そういう流れに乗ってくるタイプ!?




 で、結局――


「俺が戦う。お前は膝枕」

……いや、なんで私が癒し担当なんですか!!


 しかもその後!


「で、お前……歳いくつだ?」


 って言われて、素直に「十四ですけど」って答えたら!


「……三年後、か」


 はあああああああああ!?!?!?


 出ました。禁断の「育成計画」発言!!

 年齢聞いたあとに“三年後”って言ったら、もうそれアレしかないじゃないですか!!


 三年後に美味しく食べようとしてるでしょ!?!?!?


 あー!もう完全にそういうやつだコレ!!

 捕まるぞ!? そっちの世界(?)じゃアウトなんですよ!?


 でもね、言っておきますよロブさん。

 私、そう簡単に懐きませんからね!!


 ……たぶん。

 ……もしかしたら。

 ……膝枕くらいなら、まあ。


(ちょっとだけなら、してあげても……いいかも……)


……違います違います違います!!


 ちが――うわけではないけど、そうじゃない!!

 とにかく!


 この先、どうなるの!?

 どうなっちゃうの私の人生!?

ていうかこの人、やっぱりちょっと、可愛いところあるんじゃ――


 ああああああああああ!!!!!


(……私、もうダメかもしれない)


ここまで読んでくださって、ありがとうございます!


感想とかブクマしてくれたら……ロブさんに、ちゃんと膝枕してあげようと思います。

もちろん、なでなでもセットで!……ま、まあ、特別に!ですからねっ!


次回もぜひ読んでくださいね!


 

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― 新着の感想 ―
救えなかった人を今度は必ず救う的な事を言っていると言う事は、ロブさん時間も巻き戻せるのですか!? それとヒロインの日記視点を取り入れているのが良いですね! そうする事によってリリアの可愛さが爆発して…
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