特別編③ 雑誌記者による夏風候補へのインタビュー。
雑誌記者「ど、どうもインタビューを受けて頂いてありがとうございます。早速ですが夏風さんは、元シャシャンテのハープ奏者をやっておられた……」
夏風「シェシャンテです‼ アッ、そうではなくて前世はシリウス近郊の惑星ポドリナスで法務官を務めておった者で、宇宙名はバドブレイザーだ。現在は銀河連邦評議会の議長職をやっておって……」
雑誌記者「ああ、そうですか。ではバドさんにお聞きします。この前のSNS座談会で宇宙評議会の結論としてカーボンニュートラルを軽視するような発言がありましたが、バドさんはそういうお考えなのですか?」
夏風「ウム。今一度確認してみよう。ハイ、ハイそうですか。わかりました。ウホン。つまりこういうことだ。二酸化炭素の濃度についても評議会で軽視をしているわけではない。もちろんそれも地球人にとって重要な問題ではある。ただ危険度の優先順位は違うと銀河連邦評議会で考えているだけだ」
雑誌記者「すると宇宙評議会ではやはり人口爆発を一番危険視しているということですか? 日本では少子化が問題になっているし、あまりピンときませんけどね」
夏風「銀河連邦評議会だ。間違わないように。ではこういう例え話はどうだろう。ある家族の話だ。その家は日本政府がよく出す、いわゆる標準家庭というやつでな。夫婦と長男、長女の4人家族だ。猫を飼っている」
雑誌記者「はあ? まあ、私も猫は大好きですが」
夏風「ただ猫の数が多い。20匹も飼っているんだ」
雑誌記者「そりゃ、多すぎますね」
夏風「この家を建てた時、猫の数はそれほど多くはなかったが、夫婦そろって博愛精神に富んだ優しい人たちでな。子猫が生まれて育っていくのを見るのが楽しみだった。そうしているうちに猫たちは数を増やしていった。一方、長男は元々アメリカンショートヘアーを、長女はシャム猫を元々飼っていたんだが、この二匹は老猫なので、長男と長女はお小遣いを貯めて、アメリカンショトヘアーとシャム猫の子猫をペットショップで買おうとしている。家の中にいる他種の猫では嫌なようだ。しかしこのままだと数年後には、この家の中の猫は50匹近くになるだろう。そこで夫婦は相談して光熱費を抑えることにした。食料も足りなくなるので安いものにするとともに、休日もパートに出てお金を稼ごうとしているというわけだ」
雑誌記者「つまり宇宙人たちは人間にも避妊手術をしろと言ってるんですか‼」
夏風「そんなことは言っていない。だが評議会ではその解決方法も提案している。人口爆発している地域には共通点があり、人口が増えない地域にも共通点があるのだ」
雑誌記者「と言いますと?」
夏風「女性の教育と自立だ。なかでも女性が高度な教育を受けることは大事だな。名目上は女性を守るためなどという理由を付け、女性を隷属的な立場に置こうとする文化の元では際限なく人口が増える。そういう地域においても現在は医療技術は進み、乳児の死亡率も下がっているのに、19世紀以前と同じような出産率を維持しているのだ。カーボンニユートラルが進まないことに対しては批判的な人々が、人口爆発については口を閉ざしている。そうした人々の考えでは、カーボンニュートラルについては人間が解決する問題で子供が生まれてくるのは神の領域と考えているのだろう」
雑誌記者「バドさん、いや夏風さんがそういった考えに至った経緯は何なのでしょう? それはあなたを襲ったあの男と関係がありませんか?」
夏風「ハイ、ハイ、なるほどそうですか。この人のインタビューはそのくらいにして次の任務にかかれと……。わかりました。ではこの記者との話はこれくらいにします。そういうことですので失礼する」
雑誌記者「あ、ちょっと待って……」




