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特別編① 雑誌記者による陣松候補(八人以外の人)へのインタビュー

本編に関連した特別編です。

時間軸で言うと、座談会が終わった後、選挙が行われる前という設定です。

陣松「ええ~、ええ~と。陣松亀五郎と申します」


雑誌記者「あの、陣松さん気楽にお願いします。というところで、陣松さんは公約の中で地震対策としてトレーラーハウスの普及をと言っておられますが、最近では仮設住宅の代わりにこのトレーラーハウスを導入する動きもありますが、それではまだ不足だということですか?」


陣松「そうです。ワシが思うにそんな程度では殆ど意味をなさないと思っています。仮設住宅の代わりに100や200のトレーラーハウスを用意するというのではなく、常日頃から日本の全世帯に一台、それぞれの人が好きな場所に所有するというものです」


雑誌記者「全世帯ですか! それはまた壮大な話ですね」


陣松「でもまあ、トレーラーハウスは家を作るより安いですよ。固定資産税もかかりませんしね。電気代やガス代は使った分だけ徴収するという形にすれば維持費も安く済みます。NHKにも自宅で料金を払っている場合はトレーラーハウスが別の場所にあっても同じ家とみなして料金を取らないでいてもらう。またトレーラーハウスの集まっている場所ではWiFiが使えるようにしておけば電話料金もかからないでしょ。国の援助としては現在行っているEV車への補助金を廃止してトレーラーハウス購入時の援助に回してもらうんです」


雑誌記者「つまり震災があった後の避難先というより、日頃から利用できるようにしておくんですね」


陣松「そう。だから週末に利用したい人は自宅から100キロ圏内にトレーラーハウスを置いておくといい」


雑誌記者「でもそれだと大地震が起きた時、同時被災しませんか? 例えば自宅から500キロ離れていれば被災が免れるでしょうけど、100キロだと震災後の避難先としては近すぎませんか?」


陣松「トレーラーハウスは後輪がついているでしょ。揺れには強いんですよ。前輪はトレーラーに引っ張ってもらうために付いていないんだが、前の部分には耐震設計された足を付けておけば震度7でも大丈夫ですよ。ただし固定はできない。それをすると固定資産税の対象になるからです。そうやって誰もが日常を離れて自分の好きな場所で釣りをしたり山に登ったりして週末を過ごし、もし大震災があれば町のインフラが復旧するまでの間、トレーラーハウスで過ごせるというわけです」


雑誌記者「なるほど。私は昔から庭があれば野菜を育ててみたいと思っていましたが、都会暮らしでその夢もかなっていません。もしトレーラーハウスが持てるなら野菜を育てられる場所に持ちたいです」


陣松「トレーラーハウスはアメリカがノウハウを持っているからアメリカから本体を大量輸入して日本で内装を完成させる。そうすればあの大統領も当分無理難題は言ってこないでしょうし、トレーラーハウスを持った世帯が一斉に家電品や家具を買えば一挙に景気も良くなるでしょう。そうやって各家庭が所有したトレーラーハウスをお互いに貸し借りすれば楽しい国になるし、インバウンドに貸せばお金も稼げてホテル問題も一挙に解決しますよ」


雑誌記者「それはいいですね。ところで陣松さんは昔、阪神淡路大震災に合われたそうですが」


陣松「そうです。ワシは今では82歳になったんですが、当時はまだ若かったのでアパートを借りて神戸にある会社で働いていました。あの地震が起こった直後は、まるで夢の中のようで、自分とは別の人物がワシを動かしているみたいなフワフワとした奇妙な感じでした。ワシは着の身着のままガレキの中を歩いて自治体が用意してくれた小学校の体育館に避難しました。そこでは毛布と軽食が提供され復興が進んで安全な街になるまで、そこですごすようにと言われたんです。避難して来た人の中には大きな怪我をしている人や、慢性の病を抱えていて病院で薬をもらわないと症状が悪化する人もいました。しかし市立病院は崩れて、それらの人を助けられなかった。平素であれば神戸市と大阪市の間は電車で30分の距離なんですが、線路は寸断され高速道路は途中で倒壊していたもんで、助かるはずの人も助からなかった。また体育館にはその後も避難して来た人もいて、明らかに定員オーバーの状態になっていました。そのためワシら大阪に縁故のある者は、ここを出ていこうと計画したんです。体育館に避難している人数が減れば、残っている者たちの食料の配給も多くなるし、トイレ待ちの時間も少なくなるじゃろ? ところが体育館を仕切っていた者たちはワシらを止めたんです。その人はワシらに向かって『勝手なことをしてもらっては困る。人数の把握だってできないじゃないか』と言ったのですよ。ワシらは、その考えは間違っている、ここは決して収容所ではないんだから自由意思に任せるべきだと言って、その夜に体育館を脱出したんです」


雑誌記者「大変な体験をなさったんですね」


陣松「そうです。体育館を出たワシは大阪に向かって歩いたんですが、淀川を超えると、梅田の街並みが以前と変わっていなかったので驚いたものです。それで、これだけ近くに無事な都市があるのになぜ、いつまでも被災地域に住民を留めているのかと腹も立ちました。しかし後で聞けば大阪も沿岸部でかなりの被害があって被災者を小学校の敷地などに臨時で住まわせていたようでした。そのことで『子供の教育の邪魔になる』と抗議した父兄に対して当時の大阪知事・この人は元芸人の方でしたが『何を言ってるんだ。それこそが教育じゃないか!』と怒ったそうです」


雑誌記者「それで今回、全世帯にトレーラーハウス構想を提案されたんですね」


陣松「そうそう、あともう一つ提案があります。実はこれは阪神淡路大震災の後で、新聞に投書して掲載してもらった意見なんですが、市立病院が崩れて治療できなくなったことから、『日本の大都市はすべて海に面しているんで病院船を何隻か建造してそれを各港に配置し、大地震が起きたら災害都市の港に全船がそろって停泊し、怪我人や急患の治療にあたろう』というものです。新型コロナの際にクルーズ客船の中で感染者が増えたというのは記憶に新しいでしょうが、あれは元々病院船ではないから全然別のものです。ワシが提案しているのは設備なども整った病院船です。これを複数建造し、普段は離島回りの移動病院や、国際紛争などで多数の怪我人がいる地域で現地の住民を助けてもらいます。そして大震災が起これば、その地域の港に停泊し負傷者の救護任務にあたってもらうというものです。ただ津波があって海上に流木などがある場合には少し離れた場所で患者をヘリ輸送してもらうことになります」 


雑誌記者「ありがとうございました。全世帯のトレーラーハウス。夢が広がりますね。がんばってください」



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