梅東の逆襲と神聖・大心涅槃教の歴史
「たった今、重要なメールが届きました。先ほどスタジオを荒らしまわって出て行った梅東さんの代理人で、弁護士の駒持剛太郎、この人は前・衆議院議員の先生ですね。その方から私宛に梅東さんの講演料と祈祷料を払うようにというメッセージが届きました」
「講演料……何だそれ?」
堂谷が口をはさんだ。
「呼んでもいないのに勝手に入って来たんですよね。それと祈祷料って、あの人何かやりましたっけ?」
「ほら、あれじゃないの? 今エッちゃんが掃除している紙吹雪」
真奈美がバニーガール姿で掃除しているエッちゃんを指さした。
「で、いくらっていってるの?」
「驚くなかれ、7600万円!」
〈すんげえ。ボッタクリじゃんか〉
ゲストも全員が「オーっ」という声を上げた。
「それだけじゃないですよ。堂谷さんは梅東に暴力をふるった慰謝料として600万円。夏風さんには梅東に侮蔑的な発言をした名誉棄損と祈祷をキャンセルした費用の合わせて1200万円が要求されてます。なお、支払わないと裁判に訴える。詳しい内容は『内容証明付き郵便』で送るから、よく読むようにと書いてあります」
〈すごいな梅東! なんでも金にする男〉
「まあ、私は裁判慣れしてますし、LIVE中継もしてあったので平気です」
多比余はそういって笑ったが目は怒りまくっていた。
〈大丈夫かなあ。多比余は毒舌であちこちから恨まれてるから裁判で負けるかも〉
〈カルト集団は闇が深いからなあ。くわばら、くわばら〉
「多比余君、あの梅東ってやつはどういうやつなんだい?」
慰謝料600万円を要求されている堂谷が聞いた。
日本にはカルトが多いが梅東の神聖・大心涅槃教は他の大きな団体と比較すると規模が小さいためか、あまりマスコミには登場しないのだ。
「ちょっと待ってください」
多比余はキーボードを叩いて詳しい説明を取り出した。
「wikiによりますと、神聖・大心涅槃教は大正時代に町工場で働いていた駒留マサという女性が突然『神宿り』となって神言を語りだしたことで信者を増やし、昭和一六年に宗教法人になったそうですが、第二次世界大戦中は迫害され、事実上は解散状態になっていました。戦後はマサの孫を教主として細々と教壇の運営を続けていたそうですが、事実上は実体がなかったようです」
〈けっこう伝統のある教団なんだな〉
〈いや、違うんじゃないか?〉
「平成七年に用地購入・企画業を営んでいた梅東にM&Aで取得され、その後現在の教壇に改変されたようです。梅東は他の大手カルトを研究していたようで大学で『お経の勉強会』『座禅会』などを名目に会員を集めたり、日本全国の公民館を借り無料のカウンセリングを開いたり、駅前でアンケートや手相占いを行ったりして信者を獲得していったそうです」
〈カルトあるある〉
〈wwwww〉
「大勢で取り囲み『このままではお前は地獄に堕ちる』とか『悪霊が憑いている』と脅して洗脳するところは他のカルトの模倣ですね。票が欲しい当落線上の政治家に近寄って選挙をサポートし、政治家が当選した後には広告塔や防波堤にするといった点もよく学んでいるようですね」
〈こういう連中に加担する駒持剛太郎って何? あいつたしか副大臣もやってたよな〉
〈そりゃ、次の衆議院で返り咲きを狙ってるんじゃないか? 信者の組織票と選挙の応援が約束されるからな。批判されても勝てば官軍ってことよ〉
〈違う。先生は大きな目的のために些細なことに目をつぶっているだけだ。燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや〉
〈↑オイオイ、スパイがいるよ〉
「そういう連中か。無視していいな」
「それでも裁判所から出廷命令が来たら、受けないと相手の主張が通ります。それがやっかいなところです」
「梅東はシリウス4番惑星の流刑地に送られるやもしれぬ」
夏風がポツリと呟いた。
「多比余君、夏風さんのような人に責任能力があるのか?」
堂谷が小声で尋ねた。
「ケースバイケースですね。しかしまあ梅東の件については、こちらでなんとかしますので、後半の全員参加の座談会に移りましょう」
多比余はエッちゃんにカメラ位置に戻ってスタンバイするように命じた。




