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君のいない夏

作者: 赤夏

「私を殺して。」

泣きながら、君を見つめる僕に、君は言った。

なぜ、どうして、なんで、いやだ。

子供が駄々をこねるように泣きながら言う僕に、君は泣きながら、微笑んでいた。

「ごめんね。」

と謝る君に僕は何も言えなかった。



そして、君は死んだ。僕の腕の中で静かに。少し微笑みながら。


俺をからかって、ちょっと意地悪で、優しくて、子供みたいで、大人のようで、いつも笑っていた君が。


ちょっといじけてムスってしていた君、泣いてるのを見られたくなくて必死に隠していた君、笑っている顔が眩しかった君、褒めると照れて、でも嬉しそうな顔をする君。全てが愛おしくて、もう一度だけでいいから声を聞きたくて。


僕が殺した君のからだは、とても軽くて、まるで中に入っていた何かがすっかり抜けてしまったようで。

僕は君だったものを抱いて泣くことしかできなかった。君に会いたくて、もう一度声を聞きたくて。でもそれができないとわかっている僕もいて。


よくある物語だ。大切な人を失って、でも周りの人たちに助けられて、また前を向いて生きていく。

僕もできると思っていた。僕は心が強いんだと。そう思っていた心は、君がいなくなっただけで、いとも簡単に砕かれてしまった。もう元の形には戻らない。また前を向くなんてできない。もう君がいないのに________。



夏の日、だんだんと暑くなって、みんな文句を言っているのに、でも、どこか楽しそうで。僕も笑顔で。いま、



君のところに。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何故こんな事態に陥ってしまったのか、その背景はわからないまでも、主人公が愛するひとを喪って悲嘆に暮れる様はひしひしと伝わってきました。 主人公が最後に選んだ道は、決して『君』が望んだものでは…
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