君のいない夏
「私を殺して。」
泣きながら、君を見つめる僕に、君は言った。
なぜ、どうして、なんで、いやだ。
子供が駄々をこねるように泣きながら言う僕に、君は泣きながら、微笑んでいた。
「ごめんね。」
と謝る君に僕は何も言えなかった。
そして、君は死んだ。僕の腕の中で静かに。少し微笑みながら。
俺をからかって、ちょっと意地悪で、優しくて、子供みたいで、大人のようで、いつも笑っていた君が。
ちょっといじけてムスってしていた君、泣いてるのを見られたくなくて必死に隠していた君、笑っている顔が眩しかった君、褒めると照れて、でも嬉しそうな顔をする君。全てが愛おしくて、もう一度だけでいいから声を聞きたくて。
僕が殺した君のからだは、とても軽くて、まるで中に入っていた何かがすっかり抜けてしまったようで。
僕は君だったものを抱いて泣くことしかできなかった。君に会いたくて、もう一度声を聞きたくて。でもそれができないとわかっている僕もいて。
よくある物語だ。大切な人を失って、でも周りの人たちに助けられて、また前を向いて生きていく。
僕もできると思っていた。僕は心が強いんだと。そう思っていた心は、君がいなくなっただけで、いとも簡単に砕かれてしまった。もう元の形には戻らない。また前を向くなんてできない。もう君がいないのに________。
夏の日、だんだんと暑くなって、みんな文句を言っているのに、でも、どこか楽しそうで。僕も笑顔で。いま、
君のところに。