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第一話 世界はわたしが思う以上に善意に満ちている

これはおじいちゃんが旅立った後のはなし



わたしは忌引きが開けて、学校に登校した。

校門を潜ると、心臓が激しく鼓動を始める。

それを必死に押さえて、竦む足を決死の思いで一歩ずつ踏み出す。


教室の横引きのドアをガラガラと音を立てて開けると教室中の視線が私一人に集まった。

そして一瞬の沈黙のあと、わたしの友人の鈴桜が近寄ってきて尋ねた。


「どうしてその格好を?」と。


受け入れられないかもしれないな、とそう思った。

もしかしたら、今日限りで私たちの関係は途絶えてしまうかもしれないけど、もうこれ以上誤魔化したくもない。


わたしはわたしだから


「これがわたしの本当の心。もう隠すのは止めたの」


わたしはつまりかかった喉を必死に動かし、これまでで一番本心を詰め込んだかもしれない言葉を紡いだ。


教室が刹那にざわめく。予想通りだ。

しかし、その次の言葉はわたしの予想を超えていた。


「いいんじゃない、結城が決めたことなら」


そう鈴桜は笑顔のままに言った。

受け入れられないと半ば断定していたわたしは、予想外すぎる返答に驚き、鳩が豆鉄砲を食らったように呆然とした。


「どうかした?」

「いや、受け入れられないと思ってたから少し驚いただけだよ。鈴桜はそれでいいの?」


わたしは思わず聞き返してしまった。

鈴桜がジェンダーの多様性を認めない人だとかそういうことではなく、こうも自然といくものだろうかと不信感を覚えたのだ。


「なんで私に聞くのよ。結城は結城でしょ?姿形が少し違ったくらいで結城が別の人になるわけでもないでしょ。私は結城が生きたいように生きられればそれでいいよ」


ああ、この事をおじいちゃんは言いたかったんだとそう思った。


世界はわたしの思う以上に善意に満ちている


それはこういうことを指すんじゃないだろうか。


わたしは理解した。おじいちゃんの言葉の意味を。

そうしてわたしは言うのだ。


「ありがとう」と。

次の短編ができるまでは完結設定をつけます。

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