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真似っ子

作者: とほかみエミタメ

 アメリカ合衆国出身の、某超人気売れっ子ラッパーに衝撃を受け、速攻で熱烈な信者となった僕である。


 毎日彼の歌声を聞いているだけでハイになれた。僕は幸せだ。


 その内に、僕もラップをやってみたくなり、見よう見まねでリリック(歌詞)や作曲等々で楽曲作りに挑戦してみる事に。


 MCバトル(ラップバトル)の大会にも参加してみたりで、今までにない高揚感を味わっている。僕は幸せだ。


 だがしかし、ある時を境に、その売れっ子ラッパーは路線変更をして、ポップ・パンクアーティストとなった。


 勿論、僕もシフトチェンジをして、売れっ子の彼が愛用しているのと同じギターを購入。まだまだ下手くそだが、ギタープレイも日毎に上達している。僕は幸せだ。


 そう言えば、売れっ子の彼は全身にタトゥーを施していたな。


 無論、僕も体中に彫り物を入れた。もう温泉施設への入場や、CT検査は受けられないのかもしれないが、所詮はその程度だ。そんな事よりも、自身の身体の一部にアートを添えられて、僕は幸せだ。


 そして、売れっ子の彼は映画俳優としても活躍し始めた。


 残念ながら日本では規制が厳しく、刺青(いれずみ)を地上波のテレビでは写せないらしい。これでは活躍の場が(せば)められてしまうと感じた僕は、()むを()ず小さな劇団に入り、役者を始めた。


 (ちな)みに、売れっ子の彼は長身に端正な顔立ちであるので、僕も整形手術と身長を伸ばす手術(骨延長手術)を受けた。当たり前だが、僕は幸せだ。


 おっと、忘れる所だった。売れっ子の彼は無類のバイク好きらしく、しかも愛車はハーレーダビッドソンなのだ。


 ハーレーに乗るためには、大型自動二輪免許を取得する必要があり、僕は原付の免許しか持っていない。


 仕方が無いので、僕は街中でテキトーに盗んだバイクで走りだす事を選択した。僕は幸せだ。


 そうそう、売れっ子の彼はバツイチで、元妻との間に一人娘が居る。かてて加えて、売れっ子の彼が10代の頃より憧れの存在であった、とある美人ハリウッド女優と現在は交際中で、つい先日に婚約発表をしたばかりである。


 僕もすぐに子供が欲しかったので、その辺を歩いていた全く見知らぬ女をバイクで()(さら)い、強姦して妊娠させた。その後、マッチングアプリで大手芸能事務所の売れっ子女優を引っかけて拉致監禁。無理やり婚姻届を提出してやった。僕は幸せだ。


 それはそうと、売れっ子の彼はよくスキャンダルを起こす。有名人を相手取って、(いが)み合うのが大概のケースだ。


 だから僕も、夜な夜な盛り場に繰り出しては、手当たり次第に喧嘩を吹っかけてみた。連戦連勝。僕は幸せだ。


 おや? 売れっ子の彼は、今年に入って待望のニューアルバムを発売する。しかも、年内に2枚連続リリースと言う大盤振る舞いだ。


 僕も何かしらの大きな成功をアナウンスしたかったのだが、その願いはもう叶わない。


 何故ならば、僕が(いさか)いに明け暮れていたここ数日間に、相手側にビール瓶で頭をかち割られて、僕はこの世を去ってしまったからだ。


 これは流石に、僕は幸せだ、とは言えないだろうだって?


 いいや、僕は輪廻転生(りんねてんせい)を成し遂げ、売れっ子の彼と、例のとある美人ハリウッド女優の彼女との間に生まれた子供として、近々生まれ変わる予定だからね。


 なので、今まで通り、僕は幸せだ。

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