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それでも楽しかったと思ってしまうのが憎いところ。


そんな思いを、この四分弱の動画は思い出させた。


曲も、私が大好きな曲だった。


ハルカが弾くこの曲が大好きだった。

でも、あるときリクエストしたら「もう忘れちゃった」と言われた曲だった。


思い出してしまったこの感情を私はどうすればいいんだろう。


そう思いながら天井を見上げる。


勿論、何も書いてはいなかった。


多分、哀しみとも諦めとも煮え切らない目でピアノを見つめるしかないのだ。



たった四分半。


正直、

ピアノの演奏動画なんて自分にとっては気が向いたときに見る程度のものだったし、

暇つぶしというか、脳死で開いたようなものだった。


つまり、思い入れなんてこれっぽっちも無かった。


なのに、十年近く昔の、私の人生の中で最も濃い時間と同じくらいの重みがあって、

気が付けばあの頃のような心許なさと、虚しさが隣にいた。


動画が終わって静まり返った部屋の中、言葉にできない思いを消化するように、

その曲を口ずさむ。


勿論、伴奏はない。


これからも、多分、私が歌うこの曲に伴奏はない。


だって、私は今でもピアノが弾けないから。



もう一度頭から動画を再生して、聞いてみる。


懐かしい音色。

でも、あの頃とは違う音色。


前より少し褪せた手と、控えめに光るリングに、

私もまた歩いていかなきゃと思った。


多分もう昔と同じように過ごすことは無いけれど、

二人が幸せでいてほしいと思った。



「ふぅ。もう寝るか。」


おやすみなさい。明日もいい日になりますように。


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