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思い出
わたしの学校は、常に何処かで音楽が鳴っている学校だった。
各階のロビーを始め、至る処にピアノが置かれ、
器楽科のオーケストラや、合唱部の歌声、艶やかな弦楽器など
校内を歩いていれば、BGMのように音楽が聞こえた。
その中でもロビーのピアノは特に自由な場所で、いつも誰かしらが鳴らしていた。
思わず聞きほれてしまう圧倒的なクラシックの演奏、
ピアノアレンジのかかった校内放送のような邦楽、
友だちのリクエストに応える、笑い声や歌声の混じった流行りの曲…
ストリートピアノのごとく置かれたそのピアノたちは、
青空から夕陽まで、表情を変えて色々な音を生み、フロアを彩っていた。
わたしも、その自由な音色が大好きだった。
でも、いつの日からか、そのピアノはわたしにとって苦しいものになっていた。
そうさせたのは、小さな思い出、まぁ学生に「よくある話」だった。