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夏の終わり  作者: 大里 トモキ
3章
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3章-3

 ……何でいつもこうなんだろう?

 小さくなっていく光一の後ろ姿を切なげに見送りながら、恵美はため息を漏らした。

 今、わたしは澤崎を呼び止めて何を言おうとしたのだろう? どうせ「しっかりしなさいよ」とか「がんばりなさいよ」とか、そんなどうでもいいような言葉に決まっている。そんなの、言われた側すればうっとうしいだけなのに。

 さっき自分が言った「いつまでも未練を引きずっているわけにもいかない」発言にしてもそうだ。我ながら、何を上から目線なことを、と思わずにはいられない。澤崎に「知ったようなこと言うなよな!」と怒鳴られてしまったのは当然だろう。

 わたしはいつもこうだ。澤崎と話すときは、いつだって売り言葉に買い言葉の言い争いになってしまう。そんなこと、本当は望んじゃいないのに……。

 今日だって、澤崎の悩みを聞いてあげて、少しでも気持ちを楽にしてあげたかったのに、結局なにもできなかった。自分の無力さにつくづく嫌になってしまう。

 それにしても、澤崎はこれからどうするつもりなのだろう? このままずっと未練を抱きながらこれから先も過ごしていくつもりなのだろうか? いつまでも夏を終わらせることができないままなのだろうか?

 そしてわたしは、そんな澤崎に対して何もしてあげることができないのだろうか? 何かしようとしても、どうせいつものように鬱陶しがられるだけなのだろうか?……わたしは最後まで澤崎に嫌われたままなのだろうか?

 しょげこむ恵美の心をよりいっそうかき乱すかのように、セミの声がうるさく鳴り響いていた。

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