喧嘩の理由
「それで何があったんですか?」
テストも終わって私は撫子ちゃんと近所のカフェにきていた。昨日の夜大和とちょっとしたことで喧嘩をしてしまい、それから一切話していないのだ。正直テスト何て一切頭に入ってこなかった。
「聞いてくれるかい、撫子ちゃん……」
「ええ、どうせ、大和がまた馬鹿な事をしたんだろうなとは思いますけど……」
そういうと彼女は溜息をつきながらも、うなずいてくれた。本当にいい子だなぁと思う。こんな子が妹の大和が羨ましいなと思う。ああ、でも、もしも彼と結婚したら、彼女は私の義妹になるのか。うわ、なんかムチャクチャテンション上がるね!!
「撫子ちゃん、私の事を里香おねえちゃんって呼んでみてくれないかい?」
「いきなり何をいってるんです!?」
まずいまずい、そんな場合じゃないのについあほな事をきいてしまった。私はコホンと咳ばらいをしてから彼女に相談をすることにした。
「あれはね……昨日大和と一緒にテスト勉強をした時の話だ。私が作った模擬テストの成績がいつもよりよかったから褒めてあげたんだけど、なんかご褒美が欲しいって言うから仕方なく……本当に仕方なく、キスをしたんだけど……」
「ちょっと待ってください、実の兄と姉みたいに慕っている人のそんな生々しい話を聞きたくないんですが!!」
「でも……他に相談できる人がいないんだよ……さすがに涼風さんに相談するわけにはいかないだろ」
「あー、流石にそれは拷問ですね……というか里香さんそこら辺の人の感情の機微はわかるんですね」
「待って……撫子ちゃんの中で私ってどれだけサイコパスみたいになってるんだ……」
釈然としないものを感じつつも私は話を続けてることにする。昨日は結構いい雰囲気だったのだ。途中までは……
「それでまあ、キスをしていたんだけど……あいつなんか胸元を触ろうとしてきたんだ。まあ、付き合ってそこそこ立つし、私も嫌じゃなかったし……こういう事もあるかなって思って下着もあいつの好きな緑色にしてたんだけど……」
「里香さん、むちゃくちゃ乗り気じゃないですか……ちなみに大和はあくまでラッキーカラーと推しキャラが緑なだけで緑色は好きじゃないですよ」
「え? そうなのか……ってそんなことはどうでもいいんだよ!! あいつが私のシャツ越し胸部を触った時なんて言ったと思う?」
「なんてって……なんでしょうか……?」
「硬いっていったんだよ、下着付けてるんだから当たり前だろ!! あのバカ!!」
そんなことを話していると背後の席からコップを落とすような音が聞こえた。先ほどまでは空席だったのだが、お客が来たらしい。うるさいなとおもいつつ、今思い出しても怒りと悲しみに胸が支配されそうになる。こっちだって初めてだしどう思われるか不安で一杯だったのに……
「それは……確かにむかつきますね……それで怒って帰ったって感じですか」
「うん、でも、それだけじゃなくて、つい反射的に股間を全力で蹴っちゃったんだ……すっごい悶えてた……」
「うわぁ……」
「わかってるよ、私だって、やりすぎたかなって後悔をしてるんだ!! だけど、こっちから謝るのもなんかイヤだし、スマホはあいつのとこにおきっぱだしどうすればいいかわからないんだ……」
まさに八方ふさがりである。スマホがあれば直接言わなくても事前になんらかのアクションはとれるというのに……
「それで、里香さんは大和とどうしたいんですか? 別れたいとか……」
「そんなわけないだろ!! 私は大和とずっといたいんだよ……だけど、ああいうことを言われると傷つくというか悲しくなるからそれをわかってほしいんだ……」
「なるほど……わかりました。私の方から里香さんから話があるって大和には言っておきますよ、心の準備をさせておきます。だから、明日うちに来てもらえますか、私から説明するだけでは、今後のお互いのためにならないと思うので、里香さんからちゃんと説明してあげてください。そういうことは素直にいえるようにならなきゃだめですよ」
「うう……頑張ってみるよ……」
なにはともあれ、話し合いの場をつくってもらえるようで何よりだ……大和のやつ私を嫌いになってないだろうか……ちょっと不安である。なんというか、こういうことは距離感がかわったためか時々おきているのだが……なんというかお互い言いにくいんだよな。恥ずかしいって言うのもあるし、お互い初めての事ばかりで、距離感がつかめないっていうのもあるのだろう。でも……だからこそ、ちょうどいい機会になるかもしれない。素直にか……
「というわけで、青木先輩はここで聞いたことは誰にも言わないでくださいね」
「あー、やっぱ気づいてたんだ。あははは」
「え?」
撫子ちゃんの言葉に私が驚いて振り向くと青木君が気まずそうな顔をして頬をかいていた。マジかマジか、全部聞かれていたのか!! 誰かと来ているのだろうか。二人分の料理がテーブルには並んでいる。
「あー、俺も大切な人とお忍びで来てるからさ、お互いここでは会わなかったいう事にしてよ。赤城さんの悩みは俺の中に秘めとくからさ」
「そうか……一緒にいた相手は大和じゃないんだね」
相も変わらず軽薄そうな笑みを浮かべて言った。大切な人か……もしかしたら、青木君もいい感じの人がいたりするのかな? ああ、でもよかった……大和に聞かれていたら私は死を選ぶところだった。その時青木君の席のテーブルの下でなにかがもぞっと動いた気がしたが気のせいだっただろうか。
「撫子ちゃん、ありがとう。ちょっと大和とどう話すかを考えてみるよ」
「はい、明日のお昼くらいにきてください。私は席を外しているので納得いくまで話してくださいね」
そうして、私と撫子ちゃんは帰宅をすることにした。なでしこちゃんがやたらと青木君の座っている席をみていたがどうしたのだろうか?
なろうコン用の作品を書いてみました。よかったら読んでくださると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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