パンケーキ
「それでこの店に行きたがっていたけれど、そんなに美味しいのかな? パンケーキってあんまり食べたことないんだけど、美味しいといいね」
「ああ、SNSでちょっと有名になっててな、口コミサイトの評価もいいし、せっかくだから行ってみようかと思ってたんだ」
俺は里香と歩きながらカフェの扉を開ける。実はこのお店ではちょっとしたスペシャルメニューがあり、それを彼女と食べるのが密かな夢だったりもしたのだ。
「ふーん、結構おしゃれな店だね、大和にしてはやるじゃないか」
「素直にデートっぽいところに連れて言ってくれてありがとうとか言えよ……」
「うるさいな、私とのデートのためにわざわざ調べてくれたんだろ? 嬉しいに決まってるじゃないか。恥ずかしいんだよ、そのくらいわかれよな、バカ」
俺が軽口を叩くと拗ねたような口調で、予想以上に可愛い事を言ってきやがった。無茶苦茶可愛おしいな、おい!! 俺が恥ずかしがっている里香をにやにやと見ながらメニューを選んでいると、隣の席から声をかけられた。
「あれ、緑屋じゃん。こんなとこで奇遇だなぁ」
「誠君、こういう時は気づかないふりをするのがマナーなんだよ。ごめんね、私たちの事は気にしないでね」
声のした方を振り向くと、俺達と同年代の男女が座っていた。俺に手を振っている少年を向かいに座っている少女が諫めている。彼の名前は花宮誠、俺と同じ高校に通っている友人だ。となると隣の優しそうな美人な少女は彼の彼女の木吉先輩か……花宮のやつが、中庭で大声で告白をしていたのは綺羅星学園で少し話題になったものだ。
「木吉先輩、こいつですよ、彼が俺に、『義妹催眠調教計画』を貸してくれたんです。こいつバスケ部でやたらスリーポイントシュートがうまいんですよ」
「うわぁ……彼が……」
「花宮!! スリーポイントが上手いだけでいいだろ!! 俺の好感度最悪になるだろ!!」
「うーん、まあ、男の子だし色々あるよね」
彼と一緒にいた木吉先輩が一瞬顔を歪めたが、すぐに優しい笑顔を浮かべて言ってくれた。うわぁぁぁぁぁぁぁ!! その優しさが逆につらいんだが……それよりもだ。俺はおそるおそる向かいの里香を見る。彼女はマジで引いた顔で俺をみながら目を見開いて、呻くように言った。
「大和……撫子ちゃんがいるのにそういうのはどうかと思うよ……あと催眠術でエッチな事とか頭おかしいんじゃないか?」
お前にだけはいわれたくねぇぇぇぇぇぇ!! むしろ催眠術ありだなって思ったのは里香の影響なんだけど!! お前によって俺の新しい性癖が開発されたんだけど!! それはともかくだ、俺だってやられてばかりではいられないな。
「ああ、花宮から借りた『人妻と禁断のラブコメ』もよかったよ、ありがとうな」
「でしょー、あれ俺のおススメなんだ。二巻もあるけど今度読む?」
「もう、誠君はエッチだねー、仕方ないんだから」
「大和……君の性癖はどれくらいあるんだ……」
想定外だぁぁぁ。うっそだろ? 花宮には普通に流されたし、木吉先輩は大人の余裕って感じ笑っているし、里香はさらに引いた顔をしているし、俺だけ大ダメージなんだが!! ちょっと泣きそうになってきた。
「お客様ーーー!! 当店ではそのように下ネタを大声で話すのは禁じております。周りのお客様の食事をする気分を妨げてしまうので……例えるならば、恋愛映画を気になる人と観てたら、エッチな場面がむちゃくちゃ多くて複雑な感じになった気分です。なのでお控えください」
大声で騒いだからか、店員さんに叱られてしまった。俺は花宮達に会話は終わりとばかりに会釈をして里香と向き合う。まあ、デートだしこれ以上あの二人とお互い話してもデートっぽさがなくなるからちょうどよかったんだろう。
「まったく君は恥ずかしい奴だな……それより、大和が食べたい奴があるんだろ? 教えてくれよな。あ、この紅茶は、以前大和が淹れてくれたやつだね、これにしよっと」
店員さんの言葉で里香も多少冷静になったのか、仕方のない奴だなとばかりにため息をついた後に、そういうと彼女は意地の悪い笑みを浮かべながらもメニューをみて楽しそうにいった。俺が淹れた紅茶の茶葉をおぼえてるとかさ、本当にこういうところいいよなぁと思いながら俺はさっきの店員さんに注文をする。カップル専用メニューでカップルっぽい事をする必要があるらしい、一体どんなのがくるんだろうな。
本当は青木君を出したかったんだですが彼は彼女がいないのであきらめました。
なんかいきなり花宮くんってキャラが現れましたが
私が投稿した短編の『ツンデレ義妹に冗談で彼女ができたって言ったら「もう遅いんだ……」って走って行っちゃったんだけど…… いやいや、まだ間に合うよ!!』のキャラです。
これ以降は出てこないのでなんか緑屋とエロ本を貸しあうくらうの友達なんだなぁ程度で流してくださって結構です。