14.撫子と夏色
私と夏色は大和たちと別れた後にマックで女子会をしていた。議題はもちろん、大和に関してである。
「それで……想いは伝えれたの?」
「いやー、無理だよー、緑屋先輩は赤城先輩しかみていないっていうのが余計わかっちゃったもん。ポップコーンの時のやり取りとかなんなんだろ、あれ、もう夫婦みたいだよ。割り込む余地ないよ!! でも、いいなぁっていうよりもすごいなって気持ちかな」
私の質問に夏色は苦笑しながら答える。今回の映画はそもそも夏色が大和と仲良くなりたいといったから企画をしたのだ。元々大和と里香さんのじれったいけどお互いがお互いを想っているであろう状況を知っているので、脈はないよとは伝えておいたが、せめてデートだけはしたいと言われたのである。本来だったら三人でデートをする予定だったのだが、昨日急遽、夏色から里香さんも誘ってほしいと連絡があったのだ。
「実は昨日のお昼に先輩に冗談みたいな感じで、告白してみたんだけどね。でも、そうしたら、『え? マジで?』みたいな感じで見られちゃって……私は結構アプローチしてたつもりなんだけどなぁ……その場は誤魔化して色々話を聞いてさ……ああ、この人は赤城先輩しかみてないんだなってのを実感しちゃった……それで今日緑屋先輩と赤城先輩が仲良くしているのをみれば諦めがつくと思ってお願いしたんだ」
そう言って夏色は少し悲しい笑顔を浮かべた。私には大和の魅力なんてわからないけれど、夏色は本当に好きだったのだろう。確かに大和はバカだけど、そこそこ運動神経もよく、そこそこ頭もいい、私がへこんでいる時には、優しい言葉をかけてくれるし、好物である甘いものを買ってきてくれたり、私の好物を作ってくれる。それに、バスケ部のレギュラーということもあるからか、友達にも半年に一度くらい紹介してくれと言われる程度にはもてる。まあ、バカなんだけど……
「それであきらめはついたの?」
「うん、今日二人っきりで話していて、わかっちゃった。私は一生懸命頑張っている緑屋先輩が好きなんだよね、でも、緑屋先輩は赤城先輩のために頑張っていて……だから、私は二人を応援しようと思うよ。むしろ、緑屋先輩の彼女は赤城先輩以外認めないから!! これからは緑屋先輩x赤城先輩のカップリング推しでいくよ!!」
「人の兄でカップリング作らないでくれる!?」
そういって夏色は笑った。彼女なりの強がりなのかもしれない。そんな彼女の手には、猫のぬいぐるみが握られていた。何やら大切なものであるかのように撫でている。確か夏色は猫より犬派なはずなのにどうしたんのだろう。私の視線に気づいたのか、彼女は「えへへ」と笑いながら言った。
「これはさっき先輩がとってくれたんだ。嬉しくてつい……」
「そう……よかったね」
私は深く突っ込まないで雑談を続けた。そんなに早く失恋から立ち直ることはできないだろう。でも、私に心配させまいとしている彼女が元気になれるように、私は精いっぱい話を盛り上げるのであった。
あのあと、なんだかんだ話が盛り上がり、私は少し早歩きで帰路に就いた。私は決意する。これ以上被害者がでないうちにさっさとあの二人をくっつけよう。今日だって、二人っきりでいるのだからイチャイチャしていてくれればいいのだけれど、大和はヘタレだし、里香さんも恋愛に関してはポンコツだ、このままでは高校卒業までこんな感じで終わるかもしれない。でも、それじゃあダメだと思うんだ。
「ただいまー、バカ大和、まだ里香さんいるの……?」
玄関に女性ものの靴を発見した私はバカ大和の部屋へとむかった。ちょっとくらい二人の距離を縮めるサポートをしてあげよう。明日は休みだし、無理やりでも里香さんをうちに泊めてしまおう。それでバカ大和と里香さんを良い感じにさせよう。そう思いながら扉を開ける。
そこには信じられない光景が広がっていた。メイド服姿の里香さんがスカートをまくって太ももを差し出していて、それに大和がキスをしようとしている光景だった。私の脳が理解を拒んだ。ああ、これは夢だ。きっと私は夏色と、しゃべり疲れてマックで寝ているのだ。だから戻ろう……現実へ、これは夢なんだから……試しに二の腕をつねってみると無茶苦茶痛い。つまりこれは現実だぁぁぁぁぁぁ!!
「兄と将来の姉候補がイヤらしいことしてる!? 失礼しました!!」
あわてて逃げた私だったが、大和に捕まって、里香さんの持っている五円玉を見せられてそのあとは……
というわけで撫子視点でした。兄がこんなことしてたらひくわ……
面白いなって思ったらブクマや評価、感想いただけると嬉しいです。
特に評価ポイントは、『小説家になろう』のランキングシステムにおいてはかなり重要視されるんですよね。
↓の広告のさらに少し下に、ポイント評価を付ける欄がありますので、面白いなぁって思ったら評価していただけるととても嬉しいです。