序 初恋の幼馴染の催眠術にかかったフリをしたらムチャクチャ甘えてくるんだけど
なあ、例えばの話だ。もしもずっと片思いの幼馴染がいるとしよう。俺はそいつの事が大好きなんだが、相手は親友みたいな態度で接してくるとする。そうすると俺の方も今のままでいいやって思って一歩踏み出させないでいたんだ。でもさ、そいつも実は俺の事が大好きで、両想いだっていうのがわかったらどうする? 嬉しいよな? そのまま告白したくなるよな? それがわかったのが催眠術っていうきっかけじゃなければさぁ!!
いつも遊びにいっている幼馴染の部屋で、俺はいつもとは違う非現実に困惑していた。俺の目の前にはいつもは飄々とした顔で意地の悪い笑顔を浮かべていた彼女が、今は瞳をうるわせながらこちらを見つめている。
「なあ、大和……私を抱きしめてくれないか?」
「ああ……」
いつもはクールな彼女が、いつもとは違う甘えた顔で俺に囁く。そのギャップと可愛らしさに、俺は生唾を飲み込みながらも、本当にいいのかという気持ちを抱えながらも彼女をそっと抱きしめる。いつも一緒にいたが、見つめるだけだった彼女の体は、想像以上に柔らかくて、そして甘い匂いがした。初めての経験に思わず力んでしまうと彼女の体がびくっと跳ねた。
まずい、少し力をいれすぎただろうかと思い彼女の顔を見ると、なぜか彼女は顔を真っ赤にして俺の胸に顔をうずめてなにやらつぶやく。
「ああ、すごいなぁ……大和に抱きしめられるだけでこんなに幸せな気持ちになるなんて……」
無茶苦茶可愛い事をいっているのだが? これは誰だ? いつも俺をからかう言葉しか出ない彼女の口から可愛らしい言葉が出てきて俺は驚愕を隠せない。本当にいつもの彼女とは別人の様である。
俺は恥ずかしさもあり、彼女から目を逸らすと本棚にある元凶をみつけた。『サルでもできる催眠術』だと……これのせいだよ!! しかも俺が冗談で中学の時にあげたプレゼントじゃないか!! なんで大事に取っておいてるんだ。
「なあ、大和。一回でいいから、お前は俺のものだっていってみてくれないか?」
「お、お前は俺のものだ」
「うぐぅ! これはやばいな……」
若干かんでしまったなと後悔しながら顔をみると、なんか知らん悶え始める里香。やばいのはお前だよ、そんな幸せそうな顔でなにを言ってるんだよ。てかこんな里香とかはじめてみたよ。いつもの意地の悪い笑みを浮かべている彼女の顔が幸せそうな笑みに染まっており、俺は困惑を隠せない。
「それにしても、催眠術って案外簡単にかかるんだな……大和には悪いけれど、今だけは甘えさせてもらおう。普段は、大和にこんな姿はみせれないからね……もしも、こんな私を見られたら恥ずかしさで死んでしまうよ」
ふふ、と可愛らしく笑いながら俺の胸元に頭をこすりつける里香。ごめん、催眠術かかってないんだけど!! いや、かかりそうにはなったんだけどさ。てかさ、これ実は俺が催眠術にかかっていないってばれたらやばいだろう? 死ぬとかいってるんだけど……こいつはプライドが高いからやりかねないぞ。
さすがに死ぬって事はないかもしれないが、もしかしたらもう会ってくれなくなりそう、どうしてこうなったものだろうか……俺は今日一日の出来事を思い出す。
新作です。次の話は12時30くらいに投稿予定です。
催眠術から始まるラブコメです。よろしくお願いします。
10万字の書き溜めがあるのでご安心ください。
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