332話 楽しい余興 その1
さぁ! お楽しみっ!!
楽しい、楽しいショータイムだ!
熾天使ペトロにパウロ、そきてクズ勇者諸君もせいぜい楽しんでくれたまえ!
「ペトロ、お前には予知の力がある。
違う?」
「っ……!」
まっ、別にわざわざ答えて貰わなくても、お前達がノワールと遊んでる間にエクストラスキル〝解析鑑定〟と特殊スキル〝ステータス〟の並列使用でお前ら全員のステータスを見てるから知ってるんだけど。
「ユニークスキル〝未来予知〟」
「なっ!?」
「その名の通り。
未来を観る能力」
ペトロのこの力で私達がアレス公国に攻め入る事を知って、白の騎士団と熾天使共は待ち伏せしてたってわけだ。
まぁ、そんな待ち伏せも無意味だったけど!
「……何故、貴女がその事を知っているのですか?」
「ふふっ、私は悪魔族の始祖たる原初の悪魔。
私に隠し事はできない」
実際にステータスを見る事で相手の力はだいたい把握できるし。
思考は勿論、魂を覗く事もできる!
まぁ、七魔公とか眷属の皆んなレベルになってくると流石に思考は覗けないけど。
とにかく! 皆んなに匹敵する程の実力者でもない限り、私に隠し事をするのは不可能に近いのだ!!
いかにクソ女神アナスタシアに仕える天使族。
その中でも最高位に位置する熾天使とは言え、所詮は魔素で作った人形に魂を降ろして降臨してるに過ぎない。
にゅはっはっはっ! バカめっ!
本体でも無いくせに。
その上、依代に降臨してる本来より弱体化してる状態でこの私に隠し事ができるとでも思ったか!
「っ……! 何をするつもりなのですか?」
「何を……? ふふっ!」
『まさか……』
流石は経験者!
マリアナは余興の内容に気付いたみたいだな。
「欲しい」
「え?」
『マリアナ殿? ヤツは一体何を……』
そうだなぁ〜。
ここは一回、可愛らしくおねだりしてみようかな?
「未来予知。
欲しくなったから、私にちょうだい」
『可愛らしい……と言うより、無表情だから言い知れぬ恐怖を感じるよ』
な、何だとっ!?
今の私は両親から溺愛されて姉のモノを何でも欲しがる妹の如くニッコリと微笑みを浮かべてるハズっ!!
『うん、残念だけど微動だなして無いね。
どちらかと言うと、さっきまでの方が僅かに口角が上がってたよ?』
そ、そんなバカな……むぅ、せっかく可愛らしくおねだりしようと思ったのに。
まぁ良いや。
おねだりしようが、しまいがペトロの未来予知を貰うのは決定事項だし。
「あ、貴女は一体何を……」
「ふふっ、私は強欲の悪魔」
人間だろうと、天使だろうと、神だろうと……
「欲しいものは必ず手に入れる」
相手が誰だろうと関係ない。
「致し方ありません、ね。
次こそは貴女をその戒めから解放して差し上げましょう──っ!?」
やぁっと、気が付いたか。
依代とのリンクを切って逃げようとしたみたいだけど……残念!
「お前はもう逃げられない」
魂の扱いに長けた悪魔族、それも悪魔の頂点に立つ悪魔公が公爵位のノワールに捕まった時点でお前に逃げ道なんて残されてないのだ!
お前はその依代とのリンクを切れない様に魔法で縛られてるのだよ!
そして! この依代と天界にいるペトロ本体とのリンクを遡れば……
「こっちに来い」
「ぇっ……」
『なっ!!』
この通り!
ふふんっ! どうだ驚いたか! 強制的に本体をこの場所に転移させてやったわ!!
あとは依代を消し飛ばして破壊してやれば……
「っ!! まさか、こんな事が……!」
「ふふ、こんにちは」
ほほ〜う。
依代は一対のつばさだったけど、熾天使の本体は三対の翼があるんだ。
まっ! この際、そんな事はどうでも良いけど!!
「あはっ!」
「っ!」
さぁ、これで準備は整った!
「熾天使ペトロ。
未来予知を私に寄越せ──〝強欲者〟」
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