三十六話
「終わったのか……?」
地面へと転がり、倒れ込んだ俺は沈黙した魔導兵器を見て呟く。
手には確かな手応えが残っている。
これで奇怪な動きで再生でもされたらお手上げだが……。
「ええ、私達の勝ちです」
声に振り向くと俺に負けず劣らず怪我を負ったエルがよろよろとふらつきながら近づいてくる。
「ここまで致命的に壊れてしまえば、復活はしません。どんな魔導具だろうと、それは全て同じはずです」
「そうか」
エルの言葉にほっと気が抜けそうになる。
「っ! いや、まど魔法使い達がーー」
「あれを見てください」
言いかける俺の言葉を遮ってエルが指を指す。
それは魔導兵器の下半身。
落下し、動かなくなった上半身と同じように倒れている。
白ローブ達はその下半身に押し潰されて死んでいた。
魔法を使いすぎたことで身動きが取れず、倒れてきた下半身を避けることができなかったのだ。
「敵は全て倒しました。だから、私達の勝ちです」
再び、エルが言う。
「…………はぁ」
エルの言葉が頭にようやく浸透してきた途端、身体の力が抜けた。
「何を座っているんですか、さっさと行きましょう」
「うるせぇ、ちょっとくらいゆっくりさせろ」
「これまでもそのくらいの怪我くらいしてきたじゃないですか」
「こちとら久しぶりの全力で力出し尽くしてんだ、くたびれたんだっての」
言い放ち、俺は頭を下げて項垂れる。
大きく息を吐き出すと、再確認させるように全身に痛みが走る。
脇のあたりの骨はほとんどやってしまっている。
傷が治るまで、しばらくかかりそうだ。
『痛い、痛い……、なぜ、なぜだ。なぜ我がこんな、こんなぁぁ……!』
上半身から響いた声に俺は顔を上げた。
「なんだ、まだ繋がってやがったのか」
「直に切れますよ」
王は呻いていた。
何故かがらがらと喉に何か詰まっていそうな声で。
『痛、い? なぜ、なぜ……! 血も出ていないのにーー』
声だけで苦しんでいるのが伝わってくる。
その今にも息絶えそうな声はこいつのしたことを考えれば胸が空く思いだったが、
「なぁ、こいつはなんでこんなに苦しんでいるんだ?」
単純な疑問があった。
中にいたわけでもない、ただ魔導兵器を操っていただけのこいつが悶え苦しむ理由がわからない。
「おそらくですが、これがこの魔導兵器の欠点なのでしょう」
「欠点?」
一体どういうことか。
あまりぴんときていない俺に向かってエルが説明する。
「魔導具には魔力を使用する以外にもいくつか欠点があることが多いです。その魔導具が強力であればあるほど、取り扱いには注意しなくてはいけません」
エルはすっと目を伏せて言う。
「この魔導兵器は使用者との感覚を繋げるのでしよう。実際に殴ったのと同じ手応え。同じ感触。一体どんな仕組みなのか、こちらの姿もみえていたようですから、視界も繋がっていたのだと思います」
「感覚を……」
ということは。
「痛みも、おそらくは。あなたがあの魔導兵器を斬り裂いたことで王自身にも斬り裂かれた痛みが伝わったのでしょう」
「だが止めを指すまで足やら腕やらも斬りまくったぞ? あれはーー」
「魔導兵器の機能が停止した時のみ、使用者にそれまで負った分のダメージが伝わる、といったところでしょうか。まぁ僕も詳しいことは分かりません」
肩を竦め、言うエルは、
「『痛みを知る』……なんにせよ、傲慢な王にはふさわしい幕切れじゃないですか」
『だれ、か、誰か我を……』
王はこちらの言葉など聞く余裕もなさそうに、必死に助けを求めていた。
『誰も、いないのか、熱い、火が、火がーー』
おそらく王がいるだろう王居にも火が回ったらしい。
痛みに苦しむ声はじょじょに熱さを訴えるものへと変わった。
その声は俺たちがその場を離れる直前まで辺りに響き、やがてぷつりと途切れた。
※※※※※※※※
国は、完全に壊滅した。
魔導兵器を倒し、魔法使いの大半を殺したことで奴らには魔精霊に対処する術がほとんどなくなった。
大量に転がり回る滑り石はなんとか地面を掘り、動きを止めるなど対処していたようだったが、空中からの襲撃を防ぐ術は彼らにはなく、そちらに気を取られているうちに火の手がどんどんと勢いを増し、全てを焼き尽くした。
やがて、国民に続き、衛兵達も火から退くように逃げ出したことが決定打となった。
「国が……」
「どうなってんだ……」
「この先どうしていけば……」
口々に溢れる声が俺の耳にも聴こえてくる。
生き残った衛兵と民達は燃え盛る国を茫然とした表情で見つめていた。
「……」
俺はそいつらを無表情で眺めた後、ルシーを探しに歩き出す。
「何か思うところでも?」
「いや」
エルが俺の表情を見てか、そんなことを言ってくる。
「僕はあなた方の事情は知りませんが、あの人たちに関してはあまり気にする必要はないと思いますよ。僕から見ても相当なことをしてましたから」
「だからなんでもねぇって」
「そうですか」
はたから見れば、俺は人々の暮らしを奪った大悪人なのだろう。
だが、奴らはルシーの姉を奪う手助けをし、ルシーの人生をめちゃくちゃにした。
今回の戦いは正義を掲げたものではない。
ただの意趣返し。
罪悪感は微塵も湧いてこなかった。
連中から少し離れた場所。
ルシーはそこにいた。
魔精霊にもたれかかり、燃えて崩れていく国をじっと目を見開いて見ていた。
「おう」
声をかけると、ルシーはぴくんと身体を反応させ顔を向けてくる。
「無事だったんだねーー」
ほっとした、という顔をしてルシーが微笑み、そして俺の状態を見て顔を青ざめさせた。
「それ、血だらけっ」
「大丈夫ですよ、グロストはこの手の怪我は慣れっこですから」
動揺したルシーに対し、脇からエルが顔を出す。
「その人は……」
「前に言ったろ? 元パーティメンバーのエルだ」
俺の言葉と同時にエルが前に出てくる。
「どうも。僭越ながら少しグロストに協力させていただきました」
「あ、ありがとう」
外面の良さを遺憾なく発揮し、丁寧にあいさつして見せるエルだったがルシーはただただ困惑しているようだった。
「いえいえ。これくらいいいんですよ。少し胸の支えも取れましたから」
そう言ってエルは俺の方を見てくる。
なんで俺を見るんだ。
「ふむ。しかしこの人がグロストの言っていた……、なるほど」
しかしすぐに向き直ったエルはそのままじっとルシーの顔を見たかと思うと、
「なかなか興味深いですね」
「あの、何? グロスト、この人何で私を見てくるの?」
すっかり困惑しているルシーは助けを求めるように俺の方に顔を向けてくる。
「俺に聞かれても分からねぇ」
少しの間ルシーを観察していたエルは気が済んだのか一歩下がった。
「グロストが入れ込むなんてどんな人かと思いまして」
「で?」
「素敵な女性だな、と」
「そうかい」
一人で何か考えて、そして一人で納得している様子のエル。
そうだ。こいつはそんなやつだった。
エルは顔を怪訝な顔をするルシーに向かい、言う。
「グロストはあなたに会って随分といい顔になりました。元パーティメンバ―としてお礼を」
「……うん」
頭を下げるエルにルシーが頷く。
「なんでお前が礼を言う必要があるんだ」
妙な気恥ずかしさからそんなことを言ったが、奴は目を細めるだけで何も言ってこなかった。
その視線がむずがゆかったがこれ以上何を言ったところで奴の態度は変わらないだろう。
俺は小突きたくなる気持ちをぐっとこらえ、握った拳をしまった。
「では、そろそろ僕は行きます。魔導具も無事見れたことですしね」
「おう。今回は助かった」
「久々に危ない橋でした。次はもっと大人しい依頼を受けててくださいね」
「そうそうこんな依頼ばっか受けてたら身体がもたねえよ」
これ見よがしにボロボロの身体を見せつけると、エルは呆れたように笑った。
「どうせあなたはまた同じような依頼を受けますよ。今回で僕は確信しました」
エルは頭に手をやり、疲れたような仕草を取る。
何を確信したんだか知らないが、失礼な奴だ。
言葉違いが丁寧だろうとやはり態度が重要だとこいつをみていると実感する。
「……まぁ命さえ無事ならいいんですけどね」
「俺はなかなかしぶといぞ?」
「はは、知ってますよ」
エルはからからと笑うとすっと表情を戻し、
「じゃあ、また。きっとどこかで」
「おう」
俺は手をあげる。
それでは、とエルは至極あっさりと去っていった。
ーー危ない橋でした、か
まともに力の入らない拳を握る。
実際今回はあいつがいなければ何度も死んでいる。
なんのかんのと言いながら随分と助けられてしまった。
今度会った時には一杯奢るとしよう。
ーー他の奴らも集めて、な
「今の人」
そんなことを考えていると、ルシーが声をかけてくる。
「一緒に行かなくてよかったの? 仲間、だったんでしょ?」
「元、な。今回はたまたま一緒に戦っただけだ」
「ふぅん」
そこで違和感に気付いた。
「お前こそ、その腕……」
「あぁ、これ。ちょっと頑張りすぎちゃった」
片手はぶらりと垂れ下がったまま、折れているのか、外れているのか。
どちらにせよ、ひどい怪我をしていることには違いない。
「ちょっとってお前……」
「あはは……」
と、ルシーが曖昧に笑った直後、よたよたと身体をふらつかせた。
「っ、大丈夫か?」
「……大丈夫。少し、ね」
そう言ってルシーは自分の掌を見つめる。
その仕草を見て俺は気づく。
「お前、魔力が……」
「うん」
ルシーから感じる魔力の気配が、前よりもずっと少なくなっている。
これは……。
「この笛の、代償だと思う。魔力もろくにない状態で魔精霊を呼び出したから、その分を持ってかれちゃったみたい」
首に下げた笛を触り、見つめるルシー。
そして何か思いついたようにくっと、開いた掌をその辺に転がってる石ころへ向ける。
その石ころはルシーが力を込めるとじわっと、浮かび上がり、すぐに落下した。
「魔法、ほとんど使えなくなっちゃったみたい」
ふぅ、と息を吐いたルシーはあっけらかんと言った。
「そうか」
「魔力結晶を砕く時にちょっと無理しすぎたみたい」
弱々しい魔力の気配はまるでルシーの魔力を貯めておく器が小さな杯程の大きさになってしまったようだった。
無理をし過ぎたというその言葉通りにおそらくこの先、魔力が全快しようともその最大量は以前とは比べ物にならないほど少なくなるだろう。
ーー強力な力の、欠点か
最後の王の姿を思い出す。
あの魔導兵器にも使用者との感覚が繋がってしまうという欠点があった。
この笛も、あれと同じように使用者への負担が存在したのだ。
「ふふ、でもいいんだ。魔法が使えなくたって全然生きていける。あの時魔力結晶を壊せてなかったら今どうなってたかわからないし、私は、これで満足。」
しかし、ルシーは清々しい顔でそう言ってのけた。
何も気にしてはいないと、心から言っているようだった。
「そうだな、お前が魔力結晶を壊してくれたおかげで、あいつを倒せた」
「ほんと、あんなデカブツを倒しちゃうなんて。キミ、本当に強いよね」
ルシーはそう言って柔らかい笑みを浮かべる。
「だからそう言ったろ?」
エルと比べて、あまり衛兵達に認識されていなかったのは黙っておく。
「ほんと、びっくりだよ」
呟いて、ルシーは視線を今もなお燃えている国に向けた。
「本当に、やったんだよね」
「あぁ」
「これで、あの国もおしまい、だよね」
「完全にな」
ルシーはじっと、国が燃え崩れていくのを見ている。
「そっか」
ぽつり、言葉が漏れた。
「私、やったんだ」
その声音は俺へと話しかけるというよりは、自分に語りかけているよう。
瞳に映る炎がゆらゆらと揺らめく。
「……」
次第にその瞳はてらりと潤い、炎の形を変える。
「……っ」
しばし間を空け、ルシーの表情が歪む。
気づけば、ルシーは泣いていた。
「……、うっ、うっ」
引き結ばれた口は嗚咽を漏らさぬように閉ざされていたが、こみ上げてきた感情は容易くその抵抗を決壊させた。
「お姉、ちゃん……」
ぽろぽろと、涙が零れ落ちる。
「私、やったよ。あいつら、こらしめてやった……」
しゃくり上げ、引きつった声。
「おねぇ、ちゃん」
そこからは言葉にならなかった。
抱えていたもの全てをぶちまけるように。
大きな声を上げて、ルシーは泣いた。
誰に憚ることなく、わんわんと。
ずっと。
ずっと。
国の炎が消えるその時まで、ルシーは泣き続けた。
※※※※※※※※
「あんまり、こっちみないで」
泣き腫らした目を見られたくないのか、僅かに顔を下に伏せ、ルシーが言う。
国を燃やしていた炎は鎮火し、あたりはすっかり暗い。
「あんまり変わらねぇがな」
この暗がりでは多少の腫れなど気にする程でもない。
だが、ルシーはそうは思わないらしく、この暗闇の中でもわかるくらいに顔を赤くさせ、恥ずかしそうにしていた。
「そういうことじゃなくてっ」
ぽすりと、俺の腹あたりを小突いてくる。
「いっ、痛てててっ」
「あ! ご、ごめん」
ちょうど怪我の部分にあたった一撃に俺が痛がるとルシーが慌てて謝ってきた。
「まったく元気そうで何よりだ」
「これは、その……、元気とかじゃなくて……」
ルシーはしばらく申し訳なさそうにごにょごにょと喋っていたが、俺がにやにやとしているのを見て顔をムッとさせた。
「はぁ、キミも随分余裕あるみたいだね」
「まぁ、やること終わったからな。こうして無事死ななかっただけ元気だ」
「…………」
少しの沈黙。
互いに燃え尽きた国の方を見ながら、何をするわけでもなくぼうっと過ごす。
「終わったね」
「あぁ」
気の抜けた声。
目的を果たしたことで張っていた緊張が緩んでいる。
「私、生きてる」
「俺もだ」
そして俺もまた、同じような調子で返す。
「私、これからどうしようかな」
「どうするも何も、しがらみを滅ぼしたんだ。好きにしたらいいだろ」
「そっか」
なんでも無いやりとり。
疲れからか、互いに寝言を言い合うような、そんな適当な会話。
だが、ぽつりぽつりと交わすそんなやりとりが、なんとも心地良かった。
「キミは、これからどうするの?」
気の緩み切った声音。
ちらとこちらを流し見る視線が俺の目を捉えている。
「そうだな」
これから、か。
ルシーとの出会いは燻っていた俺の生き方に、心に、再び新しい火を付けてくれた。
今回の依頼を通して、やはり俺はこの仕事が肌に合っていると再確認できた。
剣を捨て、そこらでのんびり過ごすなど俺の在り方ではない。
ならば。
「また、旅をする。お前のおかげで色々と気づかされたからな。もっと色んな場所へ行ってみる」
「色んな場所か、いいね」
とろけるように、優しく微笑むルシー。
その表情にふと、どきりと胸が鼓動する。
きゅっと閉まるように息が詰まり、自分が見惚れていたと気づくと妙に気恥ずかしくなり、そんな自分を誤魔化すように言葉を紡いだ。
「ま、この傷が治ってからだけどな」
慌てていたせいで思わずさっき小突かれた場所を見せるように言ってしまった。
「……」
俺の言葉を聞いて、ルシーがじっと俺のことを見つめたかと思うとじりじりと寄ってきて。
小突いた部分を労わるように優しく撫でさすってくる。
「やっぱり、ひどい怪我……、こんなになるまで頑張ってくれたんだもんね」
さわさわと柔らかい感触がくすぐったく、俺は身をよじろうとするが、ルシーは構わずそれを続けた。
「キミはこんなに頑張ってくれたのに、私お礼を言うどころか、酷いことしちゃった」
「大したことない。突かれなきゃ痛くねぇから……」
そこで俺を見上げるように視線を向けてきたルシーはそうではないと首を振る。
「私、君のおかげで目的を果たせた。キミにずっと助けられてきた。だからーー」
そこでルシーは顔を真っ赤にして口籠った。
「ん?」
「だ、だから」
もじもじと言いにくそうにしている。
目を伏せてはこちらを見て、また伏せては見上げてくる。
「なんだよ」
何が言いたいのかよくわからない。
すると何故かルシーの方がもどかしそうに口をぱくぱくと動かしている。
はっきりと言ってほしいのは俺の方なんだが……。
「だからその、お礼として前払い、したでしょ……」
意を決して言ったルシーの声は後半がひどく小さな声で聞き取りづらい。
だが、その言葉はしっかりと理解できた。
「あれの、残りを……」
だから恥ずかしがっているのか。
そわそわしたルシーの様子にも合点がいった。
「その前に、俺はお前に頼みがある」
「頼み……?」
だが、俺はルシーへ別の話がある。
「え、私の報酬は……」
「それの代わりだ」
ルシーからの報酬の代わりに、聞いて欲しい頼みがある。
「私の身体には、興味なくなったと……?」
顔を真っ赤にしながら睨みつけてくるルシー。
自分で言ってて相当恥ずかしいのか、いつになく眼光が鋭い。
「最初はそのつもりだったんだがな、まぁ聞け」
にじり寄ってくるルシーの頭を手で押さえつけ、俺は言う。
「これから、一緒に旅をしねぇか?」
少し前から考えていたこと。
俺はこいつに会って、今日までずっと、毎日が充実していた。
また旅をしようと。
冒険に行こうと思ったのはルシーと一緒に行動したからだ。
なら、ここで別れるのではなく、この先も一緒に、旅をしたい。
一人ではなく、共に。
「どうだ?」
ルシーはぎゅっと口を結んでいた。
きょろきょろと目を動かし、何を考えているんだかよくわからない。
そして、少しづつ視線が定まってくると、あまり納得のいっていない表情で言う。
「わ、私の身体は別にいらないってこと……?」
その言葉の節々に不安そうな気配が感じられた。
「ははっ、もらえるもんならもらってからがいいけどよ」
「っ、ダメ! どっちか片方じゃないと!」
がっと、すごい剣幕のルシーに苦情が漏れる。
「なら、やっぱり俺はお前と一緒に旅がしてえ」
俺はルシーの目を見て、告げる。
どちらも叶えてくれるというのならありがたく頂戴するが、そんな都合のいい事はない。
「ぅぅぅ」
じっと、見つめる先。
顔を真っ赤にしたルシーが小さく唸る。
そして、
「……わかった。いいよ」
ちょっと納得いかないけど、とぼやきながらではあったがルシーはそう、口にした。
「ははっ、決まりだ」
俺は手を差し出す。
ルシーの目を見る。
「よろしく」
ルシーもそれを見て手を出し、ぎゅっと握手を交わした。
「今度はもっと自由に、いろんなものを見て、いろんな場所に行こう」
胸の高鳴る冒険を。
まだ見ぬ未知を目指して。
――――こいつとなら、きっと楽しい旅になる。
「ずっと遠く、ここよりもうんと遠くまで見に行きたい。お姉ちゃんの分まで……」
言って金の髪を揺らし、ルシーは微笑む。
柔らかい笑顔。泣きはらした目元は赤くとも。
きっとそれは心からの笑顔だった。
最後まで見ていただきありがとうございます!
良ければ感想、評価等してくださると非常に助かります。
今作を執筆したことでいくつか直した方が良い課題、改善の余地ありの部分などが見つかりました。
次作はより面白いものを投稿できるように頑張りますので是非また読みに来てください!




