〜STORY 84 6月3日 四〜
長らくお待たせしてしまい申し訳ございませんでした
久々の更新でございます
「ちょっと店員さん?これ頼んだものと違うんだけど?」
「も、申し訳ございません!!すぐ新しいものをご用意いたします!!少々お待ちくださ…あっ!!」
パリン!
「あっつ!?ちょっとお姉ちゃん!!俺の足に思いっきり掛かったんだけど!!やけどしたらどうしてくれんのさ!!」
「ちょっと!急いでるんだから早くして頂戴!!」
「も、申し訳ございません!申し訳ございません!!」
紫織はお客に対して何度も何度も頭を下げてお詫びした
この日は優希のいない日の出勤だがそれが原因かはわからないがこの日の紫織はとにかく集中力が欠けており事あるごとにお客からのクレームを受けていた
常連のお客なら笑って済ませてくれるのだが運が悪いことに紫織がミスした相手あまり【シリウス】に来られない客ばかりであってミスに対してグサグサと心に突き刺さるほど言ってくるのだった
店長の涼音も出てきてクレームに対しての対応をしていると気が付けば閉店時刻となっていた
先輩達からは疲れてるだろうから早めに上がるようにと言われた紫織は涼音の送迎の誘いを断り一人こそこそと【シリウス】を出て行った
「はぁ……優希くん……」
優希の事を思うと胸がキュッと締め付けられる感覚と針でズブズブと刺される感覚を同時に感じた紫織は首を振ってバックに入れていた500mmペットボトルのお茶を一気に飲み干すが潤いが満たすことが出来ず近くのコンビニに立ち寄った
「…………!これ……は…」
店内に設置されたファッション雑誌をパラパラめくると視線の片隅に一冊の本が映った
紫織が唐突に手に取った本は間も無く訪れる夏を題材にしたカップル向けのものだった
紫織の目からはモデルの男女がすぐさま紫織と優希に書き換えられ、まるで本当に優希とデートしている感覚に陥っていたのだがその女性が紫織から晴菜や飛香、優希の妹の奏音やまだ見ぬ優希の家庭教師の先生に次々と変わって行った
グシャ!!
「お客様どうかなされってお客様!?うちの商品に何しているんですか!!」
「え?…………あっ……!」
店員に注意され紫織は自分の手元を見てみると紫織が先程まで見ていた雑誌がグシャグシャに握られていた
紫織には先程聞こえた音は自分が雑誌を握りつぶした音だとは気が付かなかった
「あっ……ご、ごめんなさい!!」
「ちょ、ちょっと!お客さん!!?困りますよ!!ちょっと〜!!」
紫織は握りつぶした雑誌を店員に無理やり押しつけそのまま店舗から出て行った
「はっ……はっ……はっ……!私ったらなんで……それにここは……?」
数分走り立ち止まるとそこは自分の家でもない住宅地についていた
しかも紫織の目の前に建っている家は何度も訪れたことのある優希の家だった
どうやら無意識の内に優希似合いたいと思ったようだ
上を見上げると部屋の一角から話声が聞こえてくる 外でもない優希と妹の奏音だ
「奏音ちゃんはいいなぁ……優希くんと毎日会えて、しかもあの優希くんにたっぷり甘えられるんだもん。私だって優希くんの妹だったら毎日優希くんに……」
その時、紫織自身は気付いていないようだが息は激しい運動をしたみたいに荒く、そして瞳のハイライトは無くなっていた
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