〜STORY 6 4月5日 六〜
妹キャラって可愛いですよね
兄に付きまといその可愛さで兄を翻弄する
そんな妹羨ましいですよね
僕にいるのは普通な兄1人だけでしたw
(ゆ〜ちゃんの家に来てから2時間が経過していた。本来ならゆ〜ちゃんと2人っきりで楽しい勉強会になるはずだったのに……)
チラッと飛香の視線は優希の方に向けられる
「ねぇねぇお兄ちゃん。ここってどうやるの?」
「ん?あぁ〜。ここはこの公式を使って……って奏音。ここはその数字はいらないよ?」
「えっ?……あっ、ほんとだ。ありがとお兄ちゃん。 !」
当の本人の優希は自分の予習に加え、妹の奏音の勉強に付き合っている為、あまり飛香に構ってやれない状態だった
(ゆ〜ちゃんは奏音ちゃんにとっても甘いし優しいから奏音ちゃんを無下にすることは絶対にしない。このままじゃ終わってもイチャつくタイミングなんてないじゃない!)
ベキッと手元で何かが割れる音がした
手元に視線を向けるとそこには真っ二つになり破片が散乱しているシャーペンだったものが握られていた
その音に優希が反応し、【大丈夫?】と声をかけてきたので【平気平気。ありがとね】と手を振り笑顔を見せると優希もニコッと微笑み机に視線を戻した
ふぅと息を吐き飛香は隠すように真っ二つになったシャーペンをペンケースに戻し落ち着かせるように紅茶を啜った
(やっぱり……いやだなぁ……。)
ゆ〜ちゃんのことが大好き それを異性として好きと自覚した日からずっとゆ〜ちゃんを観ているがゆ〜ちゃんはとにかくモテてしまう
男っぽい顔つきとは言えないが可愛い顔立ちに誰にでも優しいゆ〜ちゃんは小中合わせて14回も告白され、告白されてなくても好意的な感情を抱く女がたくさんだった
私は女の友情を全て捨てて優希を誘惑する害虫達を潰していった
正直孤独を感じることは少しあったが、自分には最愛の人がずっと側にいると気に留めなかった
結果ゆ〜ちゃんは誰とも付き合わず、私の側にいてくれたがライバルは絶えなかった
(ゆ〜ちゃんに色目をつかうあの晴菜に血の繋がりのあるおば様。それに確信が持てないけど、奏音ちゃんだってきっと……)
「飛香?飛香聞こえる?」
はっと気がつくと目の前に優希の顔があった
至近距離で優希の顔がいきなり現れた為少し驚き、プラス大好きな優希の顔が近くで観れたのが嬉しく思い飛香は頬を染める
「な、なにかなゆ〜ちゃん?も、もしかして分からない問題あった?」
「ううん、今のところ順調だから大丈夫だよ。それよりもぼーっとしてたみたいだけど大丈夫?」
「だ、大丈夫!す、少し考え事してただけだから」
「そっか、そろそろ休憩にしよっか。僕下に行って紅茶のお代わりとお茶請け用意してくるね」
そう言って優希は部屋から出て行き、部屋には飛香と奏音が残った
特に会話があるわけでもないので沈黙の時が流れ、気づけば優希が出て行って20分が経っていた
「……お兄ちゃんと2人っきりになれなくて残念だったね、飛香お姉ちゃん。」
ペンを置き、笑みを浮かべたまま話す奏音
しかしその瞳には光はともっていなかった
「な〜に奏音ちゃん。もしかしてゆ〜ちゃんの側で勉強するって言ったのはおば様を遠ざけるだけじゃなかったのかしら?」
「そうだよ?お兄ちゃんは飛香ちゃんに迫られたらきっと許しちゃうもん。だからお兄ちゃんの貞操は私が守るの。」
当然と言わんばかりにあっけらかんと答える
先程の笑顔とは比べ物にならない程の屈託の笑みを浮かべる奏音の頬は紅葉の様に赤く染まっていた
「まぁ、飛香お姉ちゃんはママに警戒されてる時点でGAMEOVERなんだし、お兄ちゃんは諦めて別の男を探すことね」
奏音はスッと顔を元に戻し、机に視線を向け直した
「言ってくれるじゃない奏音ちゃん。血の繋がりのあるあなたとゆ〜ちゃんじゃ結婚はできないのよ?」
飛香は机に手をつき、攻撃的な視線を奏音に向ける
その目付きは晴菜や璃玖に向けるものと同じだった
「もちろん私とお兄ちゃんは結婚できないよ?それを変えるとなると政治家にでもならないとまず無理な話になっちゃうしね」
飛香の視線を軽く受け流し、淡々と述べる
その言葉に安心したのか満面に喜色を湛えた
「そうそう!だから奏音ちゃんは安心してゆ〜ちゃ……」
「でも、ママとお兄ちゃんと私で3人で暮らすことは可能だと思うよ。2人でお兄ちゃんのお嫁さんにして貰えば万事解決だもん。」
飛香の表情が一瞬でピシッと硬直する
奏音はさも当たり前の事の言ったかのように硬直した飛香を無視してペンを走らせる
「それにしてもお兄ちゃん遅いなぁ。またママに捕まってるかもしれないし私ちょっと下行ってお兄ちゃん助けてくるね。」
奏音はスッと立ち上がりステップを踏むような軽い足取りで部屋から出ていった
「………………」
沈黙が流れる部屋で次第に飛香の肩が震え始めた
(……そう。あんたも私とゆ〜ちゃんの恋路を邪魔しようっていうのね。)
飛香はバックの中から一冊の手帳を取り出した
その手帳は外見は少し傷が付いていてタイトル欄には【TOA】と書かれていた
パラっと捲るとそこにはぎっしり書かれた女性の名前とその女性の情報が書かれ、そして大半の女性の名前に斜線が引かれていた
【抹殺手帳】 優希に告白した女性、優希に好意を抱いた女性、優希に色目を使った女性など飛香が敵と感じた女の子の名前と情報が全て書かれた手帳
タイトルに書かれた【TOA】も【Target Of Annihilation】の頭文字を取ったもので、【抹殺対象】と訳される
後方のページに目を凝らすとそこには斜線が引かれていない女性の名前が数個書かれており、斜線を引かれた人以上に情報が多く書かれていた
そこには晴菜の名前も書かれており、情報と一緒に晴菜への罵倒も書かれていることもあり一番書かれている
(……へぇ〜、私ってこんな事奏音ちゃんに思ってたんだ。……少し意外かも)
空いていた行に奏音の名前と情報を書き込むと文字は意外にもスラスラと出てくる
優希以外の人物にはあまり無関心な飛香だがライバルだと話が変わってくる
優希に対しての接し方、態度、ボディータッチの頻度などを書けば書くほど嫉ましくなってくるが飛香はこれをずっと続けている
(全ては……ゆ〜ちゃんの奧さんになる為。絶対に……渡さない……。)
手帳には気がつくと優希の名前が無数に書かれ、晴菜や先ほど書いた奏音のものが全て隠れてしまっている
〜1階リビング〜
「じゃあ私はお兄ちゃんの洗濯物しまうから先2階行くね?」
奏音は僕の着替えを持って階段を上がっていった
「あの……椿さん。そろそろ離してもらってもいいかな?」
「だ〜め♡」
一方僕は下に降りて以来近所の高橋さんとの世間話が終わってからずっと椿さんに捕まっている
奏音が下に降りてきた時でさえ離れてくれず、結局奏音が諦めてしまった
〜2階 奏音の部屋〜
優希の部屋の作りとはほぼ同じで、最低限の物しか置いてない質素な部屋となっている
奏音は優希の洗濯物を胸に抱え込んだままベットに横たわる
その手には優希が昨日使用した下着が握られていた
「……はぁ……にいさまぁ……んぅ……。」
奏音は手に握られた下着の匂いを嗅ぎながら、外に漏れない程の小さな声を上げるのだった
飛香ちゃんがどんどん闇に堕ちていっている気がしますが
いつか飛香が可愛い回をお見せ出来る日がくることを願います
次回もゆっくり見ていってください!!