〜STORY 65 5月19日 弐 〜
「遅刻ギリギリよ北条君。最低でも集合時間の10分前に集まるのが常識なはずだと思うのだけど?」
「すみません……」
腕組みをして説教する友梨に優希は深く頭を下げて謝罪をする
現在時刻は9時3分となっており集合時間は9時だったのだが優希は集合時間のわずか2分前の8時58分に駅に到着した
「そもそもね?今回の校外学習は2学期に行われる修学旅行で行く沖縄での観光を円滑に行うための予行練習なのよ?それなのに遅刻ギリギリなんて班の皆だけじゃなく他のクラスの生徒にも……」
その為一応班の班長でもある優希が遅刻ギリギリの事で監視役として同じ班になった友梨はカンカンに怒っている
ちなみに本来なら監視役に加えて班の班長にもなるはずだった友梨なのだがそれを同じ班の璃玖と晴菜が断固反対しされたことにより多数決で優希が班長になったことでかなりご立腹な友梨が班長に失態にさらにお冠という訳だ
「あの……本当にありがとうね晴菜さん。あのまま電車を待っていたら確実に遅刻だったよ……」
優希は横にいる晴菜の方を向き頭を下げる
実は優希が乗り換えに使おうとしていた電車が人身事故の関係で大幅な遅延しており集合時間への到着が絶望的になりほぼほぼ諦めていたのだがGPSで優希の居場所を把握していた晴菜が優希を直接駅に迎えにきたことでどうにか間に合うことが出来た
因みに優希はその後、使おうとしていた電車の事故を調べると線路内への飛び降り自殺だった事を知り顔面を蒼白にしたと言う事はここだけの話である
「優希様のお役に立てて私は誠に光栄でございます。さぁ、折角のお出かけですし心ゆくまで楽しみましょう」
晴菜は満足そうに微笑むと優希の腕に抱きついた
いつもなら離れるようにやめさせる優希なのだが晴菜のおかげで遅刻することなく間に合うことが出来たのもあってか何も言えなかった
「ふ〜ん。それにしてもなんでこんなにギリギリなったの?」
璃玖は本来優希と一緒に横浜駅まで行くはずだったのだが優希が待ち合わせ時間になっても一切来ず間に合わなくなると優希から先に行って欲しいと言われてしまい璃玖は同じく優希と一緒に行くことになっていた飛香と二人で来る羽目になってしまいその為二人は道中イライラしたまま現地に着いた
「そ、それは……か、椿さんが離してくれなくて……」
実際に椿にされたことなんて言ってしまえばある意味問題になってしまう
せめて学校生活くらいは平穏にしたい(実現しているかはさておき)と思った優希は内容をごまかしながら説明すると友梨は頭を抱えた
「遅刻内容も呆れるわね。まさかこの歳になって母親にベッタリなんて……少しは自立心というものを持たないと一生母親頼りになってしまうわよ?」
「あら?母上様と一緒に寝られるなんて大変仲がよろしくて素敵ではありませんの?
反抗期なんていうくだらない理由で親に反発する野蛮な方々よりも大変素晴らしいと私は思いますわよ?」
友梨の言葉に晴菜は抱きついたまま意見をする
平静を保って優雅な雰囲気が出ているが内心怒っているのだろう
抱きついている優希の服の裾をちぎれるんじゃ無いかと言わんばかりに掴んでいるからだ
そして晴菜の言葉に周囲の男子からは親孝行をしようと言う固く誓う生徒が大勢いたらしいが晴菜本人に知られることはなかったとか…
「そうだね。母親の我が儘にも優しく対応できる優希は本当に心が優しいと僕は思うよ。まぁ……いつまでも引っ付いている人に何も言わないのは優しすぎな気もするけどね?」
「あらあら?そう言いつつ自分も優希様に抱き着いているじゃないですか?そろそろ移動を始めるのですから早く退いたらいかがです?」
両脇に高嶺の花を連れた優希に殺意の視線がマシンガンで撃ち込まれどうしようと悩む優希と「もう嫌……」と壮絶な溜息をつく委員長友梨だった
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