〜STORY 63 5月10日 放課後 飛香編 〜
「来週の19日に遠足なのね?了解了解。それじゃあその日はお弁当作らないからお母さん楽できちゃうわ〜」
帰宅した飛香はリビングで洗濯物を畳んでいた母親の明日美に校外学習の冊子を渡すと明日美は早起きをしない日が出来て喜んでいた
明日美は優希の母親の椿の様に超早起きではないが一般的な主婦の起床時間前には目覚ましを使用しなくても起きる事が可能だ
その辺は長年の主婦の技なのだろう
「でもゆ〜ちゃんとは違うクラスだし班も決められちゃったからあんまり楽しみな訳ではないんだよね〜」
制服を脱ぎ捨てて下着姿になった飛香は冷蔵庫から炭酸水を取り出しコップに注がずにそのまま直でコクコクと飲んでいく
炭酸水特有のシュワシュワと口の中で弾ける感じが身体全身に染み渡るようで心地いい
しかも無糖でカロリーも低いため飛香は好んで飲んでいる
「あ〜あ!校外学習は適当な理由つけて休もっかな〜!!」
「あら?諦めちゃうの?もったいないわね〜」
飲み干して空になった炭酸水の空いたペットボトルをゴミ箱に投げつける飛香からは明らかに苛立ちが見られる
そんな飛香に問いかけると飛香は苛立ちが明らかに見える表情を明日美に向けてくる
「じゃあどうしろって言うの!?ゆ〜ちゃんの班にはどうせあのエセお嬢様とゲイ野郎が同じ班に決まってるじゃない!!」
「ふ〜ん……あっそろそろ夕飯作る時間ね〜」
「…少しは興味を持ってよ!!」
苛立つ飛香に目もくれず明日美は畳み終った洗濯物をタンスにしまうとエプロンをつけ夕飯の支度をし始めた
野菜を切る音が聞こえてくる様になり相手にされなくなってしまった飛香は舌打ちを打ちながらソファーに寝そべり携帯をいじり始めた
「飛香〜。暇なら晩御飯の支度を手伝ってちょうだい」
「え〜?」
暫くして飛香の元に明日美がエプロンで手を拭きながら近づき夕飯の手伝いを頼む
嫌そうな顔をするが飛香は自身のエプロンを身に着け台所へ向かう
料理は優希の心を掴む武器として飛香は明日美から技を日々学んでいる
「じゃあ飛香はスープをお願いね?私はメインのソテーを仕上げるから」
「は〜い」
飛香は水にさらした材料のジャガイモやニンジンなどの野菜を一口サイズに切ってから
アクが出ないよう丁寧に火を掛けながら味を整える
隣では筋を入れ、下ごしらえを済ました豚肉をソテーしていた
両面がこんがりと焼き色がついていて非常にいい香りが台所中に漂った
「さっきの話なんだけど、ゆうちゃんの班に強引に入ったらどうかしら?」
「ダメよ…担任からも単独行動は絶対にするなって釘打たれてるから」
明日美の提案も既に教員から止められてしまっていてなす術もなくなってしまった飛香は落ち込み視線もスープの鍋に向いてしまっている
「じゃあ……お嬢様達にゆうちゃんを取られてもいいのね?」
「冗談じゃないわ!!ゆ〜ちゃんは私のものよ!!」
「でも今のままじゃ何も出来ないままなんでしょ?」
明日美の問いに飛香は数秒考えると何か思いついたのか口元が緩んだ
「見ててママ!絶対にゆ〜ちゃんを私のものにしてやるんだから!!」
そう言うと飛香はエプロンを脱ぎ捨てて台所を飛び出して自分の部屋に入っていった
残された明日美は娘の行動に苦笑しつつ夕飯の仕上げに取り掛かった
「うふふ……孫は男の子と女の子二人ずつの4人がいいわね〜」
明日美の脳内では可愛い孫達に囲まれて幸せそうな表情を浮かべる自身の姿を妄想していた
薄暗い2階の飛香の部屋では飛香が自身の勝負下着達やお気に入りの服達を眺めながらノートに校外学習当日の予定を事細かに記していた
「見てなさい…ゆ〜ちゃんはいつまでも私のものなんだから……」
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