〜STORY 61 5月10日 放課後 璃玖編 〜
「ん〜!今日も走ったなぁ〜!つっかれた〜!!」
時刻は20時を過ぎており辺りはすでに暗くなっており街頭の灯りがないと気味が悪いと感じてしまうほどだった
そんな夜道を璃玖は陸上部での練習を終え一人で帰っていた
春の大会が近いということもあってか顧問や先輩がかなり気合いを入れて練習に取り組んでいるのもあり練習時間が終わった後も自主練に付き合ったことでこの時間になってしまった
「はぁ、優希が一緒だったらもう少しやる気も出るのになぁ……」
璃玖は頭の中で優希と二人で汗をかき練習に取り組んでいる光景を浮かべるもののパッと消えてしまい深く溜息をついた
優希自身は部活に入りたいと思っていても母親の椿が優希の身体を心配してか絶対に許可をしないので璃玖の優希と部活をするという願いは椿がいる限り絶対に叶わないのであった
「あっ……優希の声が聞こえる。楽しそうだなぁ……」
自宅に着くとすぐそこにある優希の家からは笑い声が聞こえてくる
その空間に入りたいと思いつつも邪魔したくない気持ちの方が上回った璃玖はクルッと
背を向け家の中に入っていった
「あっ、おかえり璃玖〜」
リビングのドアを開けるとソファーには璃玖の二つ上の姉である凛が短パンに胸元が全開で空いている黒のタンクトップシャツを着てアイスキャンディーを食べながら携帯をいじっていた
凛の身体から蒸気が上がっているところを見ると風呂から上がったばかりのようだ
「姉さん……別に家だからいいんだけどさ、もうちょっと格好どうにかならない?」
「ん〜?あんたうちに欲情すんの〜?−100点。イケメンの彼氏連れて来てからやり直しなさい」
凛は特に気にした様子もなく携帯から画面を一切動かすことなく淡々と言う
「イケメンの彼氏って僕は男だよ?連れてくるのは彼女だと思うんだけど?って!!あぶな!?ちょっと姉さん!!携帯を投げつけないでよ!!」
癇に触ったのか凛は突如手にしていた携帯を璃玖に向けて思い切り強く投げつけてきた
バックで防いだ為か幸い璃玖に怪我はなかったのだが逆に更に凛の機嫌を損ねた
目付きも一転して仇を見るような目つきになっていた
「あんた……うちの目の前に女なんか連れてきてみなさい…女もろとも八つ裂きにするわよ?」
「ご、ごめんなさい……」
何も手にしていないのに凛の手に西洋の処刑人が持っていそうなほどの巨大な鎌が握られているように璃玖に見えた
璃玖に投げつけた携帯を拾わせると凛は再び視線を携帯に戻した
「大体あんたには優希がいんでしょ〜?早く優希と付き合ってうちの作品のネタ提供に協力しなさいよ」
「作品って…姉ちゃん売れてるんだから別にいいんじゃないの?」
凛は中学の頃の友人たちと同人誌サークルを結成して同人誌を作成している
3年近く活動してコミケに出せば完売する程の人気が出ている
「分かってないわね〜。だからこそさらなる高みを望むよりリアルを追求するってもんでしょうが」
アイスの棒を捨て冷凍庫から新しいアイスを持ち出すと璃玖の分も用意して持って来てくれた
こういう行為も作品提供のための賄賂のなのだろうかと璃玖は思ってしまった
「まぁ……本当にそれが出来たら僕も幸せなんだけどね【ボソッ】」
璃玖は凛に聞こえないくらいの本音を言うと渡されたアイスの封を開けた
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