〜STORY 51 5月3日 参 〜
「ふふっ…本日はどうぞよろしくお願いしますわ優希様」
優希に向けてニコニコと満面の笑みで深々と頭を下げて挨拶をする晴菜
今日の放課後は優希達が所属する図書委員会の以前作成された班での活動なのだが顧問の先生から「仁科さんと眞田さんは一緒にしてしまうと喧嘩してしまいますね」と委員会が始まる前に先生によるクジ引きが行われ結果は上記の通り晴菜が勝ち取ったらしい
「なるほど…だから帰りに飛香に声かけたら怒っていたのか」
クジ引きについて何も聞いていなかった優希は委員会の教室に晴菜と共に飛香と向かおうと声を掛けたところ飛香は優希に落ち込んだ表情を向けた後、優希の後ろに控えていた晴菜に親の仇へ向けた
晴菜はそんな飛香に向けて勝ち誇ったような顔をしたが丁度優希が視線を外した時だった為、見られるような事はなかった
「仁科さんのお気持ちは察しますわ。私も場合によっては仁科さんのようになってしまう可能性もあったわけですし…」
「ま、まぁ先生が決めたことだったら仕方ないだろうし…大方次は飛香の番になるだろうから痛み分け…で済むといいなぁ」
「(このクジ引きの盲点は【そこ】なのですよね〜)」
胸を押さえ、悲しそうに話す晴菜だがこのクジ引きにはクジ引きの順番について納得できていなかった
このクジ引きは最初はどっちがやるかを決めるのだが問題は外れた方に次の仕事の際の担当になる
つまり当たった方は次回の作業はお休みとなってしまう
「(問題はその作業がその日に【終わらなかったら】なんですのよね…)」
その日のうちに終わる作業ならいいのだがこれが引き継ぎをして次回行う場合はその日担当したものでないと意味がなくなってしまう
即ち連続して優希と一緒に作業をすることができてしまうことなのだ
「(しかも…その日のたった1時間で終わってしまう場合もあり優希様とずっと一緒に作業していたいですのに……それもこれも〜!!)」
晴菜は背中に回していた指をもう片方の手の指爪でつねることで怒りを紛らわせていた
本来ならその場から離れて壁を叩きに行くのだが愛しの優希様が目の前にいるのに離れることなど以ての外
それに万が一手についた血を見られでもしたらきっと幻滅されてしまう
その為晴菜は少しでも気を紛らわせようと指をつねる程度で済ましている
「どうしたの晴菜さん?なんだか…ちょっと痛みに耐えてるような……」
晴菜の痛みに耐える顔を少し察したのか優希は晴菜の顔を下から覗き込み心配する表情を向けた
「(少し…これくらいは許してくださいませ優希様)」
そう心の中で優希に謝罪すると晴菜は優希の肩に顎を乗せた
「え?晴菜さん…?」
「申し訳ごぜいません優希様。ですが暫しお許しを…」
許しを請うようにしかし甘えるように優希に擦り寄る晴菜から漂う香りは優希の心を高鳴らせた
女子特有の柔らかさと晴菜から漂う優しい香りがする
「(あ、相変わらず晴菜さんはいい匂いなんだよなぁ…それに僕と違って至る所が柔らかいし)」
優希は甘える晴菜の背中にソッと後ろに手を回し触れようとする
「おや?優希君じゃないか」
「し、紫織さん!?こ、こんにちは!!」
後方から声を掛けられ振り向くとそこには一学年先輩で同じバイト仲間の【有馬紫織】が笑顔で立っていた
優希も高校で会ったことがなかったので二学年のフロアに紫織がいることに驚きだった
「ウンウン。優希君は学校でも女の子に人気なようだね。私の後輩である優希君が好かれているようで何よりだ」
腕を組みコクコクと頷きながら近づく紫織は笑顔ではあるが目だけは一切笑っていなかった
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