〜STORY 3 4月5日 参〜
今回は幼馴染ヒロイン【仁科飛香】とのエピソードです。
本当はお母さんの話にしようかと思ったんですが作っていくうちに飛香の話にフェードアウトしちゃいました。
昼食後、店の外に出ると見慣れない外車の前で黒いスーツを纏った長身で黒髪ロングの女性の人が立っていた
「お嬢様。お迎えにあがりました。」
「あら。今日は何も予定がないはずでしたが如何されましたか?小鳥遊さん。」
「お父上様より、話があるとしか伺っておりません。内容はお父上様より直接ご確認ください。」
タブレットで確認しつつ小鳥遊さんは淡々と話していた
小鳥遊さんは晴菜さんが小学生の頃から眞田の執事として雇われていて、僕も高1の春に晴菜さんに紹介されて以来たびたび顔を合わせている為、既に顔馴染みである
「優希様。ご無沙汰しております。息災のようで何よりです。」
「こんにちは小鳥遊さん。小鳥遊さんもお変わりなくて何よりです。」
「ふふっ。お褒め頂き光栄です。それではお嬢様参りましょうか。」
「はぁ…仕方ありませんわね。申し訳ございません優希様。貴重なお時間をいただいて優希様が私とデートをしていただいたのですが急用ができてしまいました。」
深々と頭を下げて謝る晴菜さん
「ううん、気にしないで?お父さんから呼ばれたんじゃしょうがないよ。」
「ありがとうございますわ。優希様。今度は是非2人きりでデートをさせていただきますととても嬉しいのですが…」
「早く帰りなさいよバカ!ゆ〜ちゃんをあんたと二人っきりになんかさせないからね!?」
飛香が腕に抱きつきながら晴菜さんを威嚇する
「ふふっ、それでは優希様。御機嫌よう。また明日お会い出来ることを楽しみにしておりますわ」
そう言って晴菜さんは車に乗って帰っていったがその間飛香はずっとべーっとしていたのだった
奏苑通りから歩いて10分程で僕や飛香の家に着く
璃玖は途中までは一緒だが途中で別れるため飛香と二人きりになる時が多い
「ゆ〜ちゃんはあいつに甘すぎよ?もっと断ったりしないとずっとあいつにつきまとわれるんだから。」
「う、うん。…で、でもあまり人の好意を無下にするのは僕は好きじゃないからさ…」
「もう!ゆ〜ちゃんは優しすぎ!! ふん!」
そう言ってぷく〜と頬を膨らませてそっぽを向いてしまった 怒っちゃったかな…
(…ゆ〜ちゃんが優しいのは知ってるけどもう少し私に対して優しくしてもいいじゃない!)
「ご、ごめんね飛香。この通り!!」
手を合わせて頭を下げる だめ…かなぁ?
「……………ぎゅ…………て…」
恐る恐る顔を上げると飛香は頬を少し染めつつ何かをつぶやいていた
「へ?なんて言ったの?」
「だからここで後ろからぎゅってしてって言ったの!」
飛香は頬をさらに染め真っ赤になりながら叫んだ
「ええ!!?む、む、む、無理だよ!!は、はず、恥ずかしいよ!」
時刻は午後1時過ぎ
今日が新学期となる学校も多いため周りは学生や買い物帰りの主婦などが多いうえ、ご近所ということもあり顔なじみの人も多くある
「……………ツーン……」
飛香はそっぽを向いたままチラッチラッとこっちを見てくる
(…うわぁ!勢い余って大胆なこと言っちゃった!で、でもゆ〜ちゃんに抱きしめられるのも悪くないし!でも公衆の面前で恥ずかしいけどやっぱり抱きしめて欲しいしでも、でも!)
そんな飛香の心の声とは裏腹な態度とは微塵もわかってない優希だった
(う〜、飛香はこうなると聞かないしなぁ)
飛香を見るとそっぽを向いてるようで完全に頬を真っ赤にしながらこっちを見ていた
(うう〜!しょうがない!!)
「わ、わかったよ。ぎ、ぎゅっとすればい、いいんだね?」
飛香は一瞬パァッと笑顔になったがすぐ元の顔に戻した
「し、しょうね。う、うしりょかりゃしてね?」
「今飛香、噛んだよね?」
「か、噛んでないわよ!ほら、早くして!」
顔を真っ赤にしながらこっちに背を向ける
いつまでも待たしておくと飛香のプライドを裏切ることになってしまう
……………ええい! どうにでもなれ!
ぎゅっ
「ーーーーーーっ!!!!!!」
僕は後ろから飛香を包むように抱きしめた
抱きしめた飛香からは石鹸の香りをがして、とても落ち着く
飛香は中学くらいの時に一度香水を使ったことがあったが抱きつかれた時に僕がうっかり飛香っぽくない気がすると言ってしまった
そしたら次の日にはつけて来なかったので聞いてみたら「ゆ〜ちゃんの反応が良くなかったからやめるね。ごめんねゆ〜ちゃん。」といいそれ以来香水は全く使ってない
気にしないでつければと言うと
「だ〜め!ゆ〜ちゃんの反応が1番いいのが私にとって1番なの!まったく、ゆ〜ちゃんは女の子心がわかってないなぁ。」
と言われてしまった
飛香は抱きしめてから少し経つが特に反応がない
嫌がってるわけではないみたいだが何も反応が無いのは珍しい
きっと僕をからかうための作戦でも考えているのだろうか
(は、はわわわわわ!!ゆ、ゆゆ、ゆ〜ちゃからだだだ、抱きしめられて……!!)
飛香の身体は優希から見ても微動だにしていないが飛香の脳内ゆ〜ちゃん大好きメーターがオーバーヒートしていた
普段は飛香から優希に抱きついているが優希から抱きしめる事はほぼ皆無なので飛香にはそういった耐性はまるでない
いつもはからかって抱きついているように見えるが実は優希に抱きつく度に脳内はショート寸前で何とか理性を保っている
本来は優希の香りを嗅いだだけでとろんと溶けてしまうほどの幸せを感じている
(はぁぁぁぁぁ……ゆ〜ちゃんが私を抱きしめてる……し、しあわせ〜!!!)
目がハートマークになりトリップになっている
今の飛香にとって周囲の視線など皆無に等しい
「あ、あの……飛香?も、もういいかな?……さ、流石には、恥ずかしいよ…」
かれこれ飛香を抱きしめてから10分経っていた
昼間の時間帯のため歩行者は先程に比べて増えておりじっと僕らを見ている人もいる
「……………………コクリ。」
小さく頷くと飛香は僕から少し離れた
「か、帰ろうか……。」
「ふ、………ふぁい……」
顔を真っ赤にしたまま僕と飛香は自分たちの家への帰路についた
その道中通る人全員に白い目で見られたのは言うまでもなかった
お互い無言のまま歩いていると見慣れた僕たちの家に着いた
僕の家から飛香の家まで歩いて3秒で着くほど近い【お隣さん】で、僕の部屋と飛香の部屋は真横となっている
「じゃ、じゃあまた明日ね。」
「………………」
頬を染めたまま飛香は小さく頷いて玄関へと向かった
明日の朝は飛香の顔見れないだろうなぁ……
(うぅ〜!!あれからなんにもゆ〜ちゃんと話せなかったよ〜。でもこのままじゃ明日は絶対ゆ〜ちゃんと気まずくなっちゃうよ……そんなの……そんなの……やだ!!!)
飛香は家の門の前で胸の前で両手を握り、何か決心したようでこっちを向いた
「ゆ、ゆ〜ちゃん!!」
「な、何かな飛香?」
「あ、あとで……ゆ、ゆ〜ちゃんの部屋にい、行っても……いい…かな?い、一緒に勉強したいし……どぉ?」
顔を真っ赤にして最後の方は若干目を潤ませながら部屋に行っていいかと聞いてきた
小さい頃から頼みごとがある時に何度も見せてきた幼馴染の頼みだ それに……
「もちろんいいよ!それにいつでもきていいって行ったでしょ?僕たちは…幼馴染なんだしさ!!」
幼馴染の頼みは無下にすることは極力避けたい
飛香とはどんな形であれずっと仲良くしていたいからね
「じゃ、じゃああとで……そっち行くから……またね。」
嬉しそうな表情を浮かべたまま飛香は自分の部屋へ入っていった
「やっぱり飛香は可愛いよなぁ。僕とは釣り合わないよなぁ。」
飛香の笑顔を思い出しながら僕は自分の部屋へ入っていった
ガチャ バタン
仁科家の二階の右端に飛香の部屋がある
最初は階段から一番離れている為違う部屋だったのだが優希の部屋が右端の部屋からとても近いと分かった瞬間父親に言ってすぐに今の部屋に引っ越した
飛香の部屋は本人の希望により飛香の許可が得られない場合は親でも勝手に入れないし、以前勝手に入った父親は2ヶ月程全く口を聞いて貰えなかったらしい
ドサッ ボフッ
飛香はそのまま自分のベットにダイブしてお気に入りの抱き枕を抱きしめて寝る
その抱きしめている枕には優希の写真が載っていた
(ふふっ、今日のゆ〜ちゃんも可愛かったなぁ〜。それにたっぷり抱きしめてくれたしこの後ゆ〜ちゃんの部屋でもたっぷりゆ〜ちゃん成分を吸収しちゃお!!)
飛香は優希の写真入り抱き枕にたっぷりキスしながら仮眠をとる
そんな飛香の部屋は優希の写真パネルや写真で埋め尽くされているのだった
次回は北条家の母と妹が登場します
気に入ってくれたら幸いです!!