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〜STORY 38 4月18日 弐 〜

「2番テーブルのお客様にホット二つお願いね。それと4番テーブルのお客様にはホットケーキセットとショートケーキセット1つずつね。」


「か、かしこまりました!!」


平日という事も御構い無しでカウンター席どころかテーブル席全て満席となり、当然お客が増えればオーダーも自ずと増えていき優希と紫織は休む間も無く接客に追われていた

コーヒーを作ってはウェイターに渡しオーダーが入ったらまた作っての繰り返し

事務仕事が終わった涼音も厨房に入りケーキパスタなどの作成や、ウェイターのフォローに追われていた


飛香が休んだ事で人員が一人少ないのが今になって痛手となった

涼音が溜息をつくのもこの忙しさを考えると頷ける


「(うぅ〜。やっぱり優希君と話す時間が全く無いよ〜!!)」


紫織の予想通り優希とは一緒に作業は出来ても話す余裕は一切無く、会話と言っても作業の業務連絡をし合うくらいしか出来ていない

しかも紫織はウェイターのフォローやレジ打ちに入ったりしてしまう為、一緒に居られるどころか優希の側から離れてしまう


「(はぁ……これじゃあ仁科さんがいてもいなくても何も変わらないじゃ無い……)」


レジ打ちをこなしながら紫織はポーカーフェイスを駆使して落ち込みつつあった

そんな状態が2時間近く続き、店内に大勢いて満席となっていた席が次第に空き始め少しずつだが余裕も出来始めた


「よし、空き始めた今のうちに休憩回しを始めようか。北条、有馬。お前達二人まとめて休憩に入ってくれ」


「「は、はいぃ〜」」


涼音からの指示で二人はフラフラ〜と休憩室へと向かった

休憩室へ入ると優希と紫織はテーブルに突っ伏すように倒れこんだ


「だ、大丈夫ですか〜?紫織さん?」


「ん〜?優希君こそ声に張りがないようだけど大丈夫か〜?」


本来はこの30分の休憩の中で食事を摂ったりして英気を養うのだが、その元気が全く湧かず突っ伏したまま時間が過ぎてしまう


「あ、そう言えば紫織さんは今年桜を見にいきました?」


「ん〜?あ〜そう言えば今年は見に行かなかったなぁ。そう言う優希君は桜を見に行ったの?」


何気なく聞いているようで内心は優希の情報を聞きたく耳をピンと立っていた


「あっ、僕はこの前の日曜日に行って来ましたよ!いや〜久々にお花見しましたけど桜が綺麗で最高でしたよ!」


「へ〜いいじゃない!!クラスの子と行って来たの?それともご家族?」


優希の話を紫織は持参した紅茶を飲みつつクッキーを齧りながら聞く

砂糖が一切使われていないノンシュガーのクッキーだが紫織はとても気に入っておりおやつ変わりによく食べている


優希は紫織の問いに迷わずに答えた


「あっ、僕の近所に住んでいる家庭教師の方と行って来ました!」


「…………【ボン!!】」


答えと一緒に紫織を殺しにかかる爆弾が打ち込まれた

その爆弾が炸裂したのか紫織の口に含んでいた紅茶が一気に暴発を起こしたが紫織にとって唯一幸いなのは優希に掛けてしまわなかった事だ


「し、紫織さん!?大丈夫ですか!?今口からパン!!って破裂音のような音がしましたけど!?」


「ゲホッ…ゲホッ……だ、大丈夫、少し驚いちゃっただけだから……ってそれよりも近所の家庭教師って誰?男の人?まさか……女の人だったりしないよね?」


「(お願い!男の人って言って!近所の優しいお兄さんに教えてもらってると言って!!)」


紫織的には口で暴発した紅茶よりも優希と一緒にお花見に行った家庭教師の方が数倍気になる話だった

男の家庭教師なら仲のいいお兄さんかもしれないが女の人だった場合は優希の幼い頃からの【想い人】の可能性も充分考えられる


「(お、落ち着くのよ紫織。大丈夫。きっと悪い方向に行くわけがないわ。だってあの優希君だもの……)」


心を落ち着かせようと再度紫織は紅茶を口にする

内心ドキドキが収まらない紫織の期待を他所に優希は口を開くと


「はい。【藤堂葵】さんって言う家の近所に住んでいる女子大生さんです!昔からお世話になっている優しいお姉さんなんですよ!」


「…………【ボンッ!!】」


期待という爆弾が失望という爆弾に変わり勢いよく炸裂し紫織は再び紅茶を暴発させる


「ちょっ!紫織さん!!大丈夫ですか!?またパン!!って音がしましたよ!!」


内心ボロボロになった紫織は胸をトントン叩きながら落ち着かせていた


「へ、平気平気……ごめんね優希君。すぐにテーブルに飛び散った紅茶を拭くからさ」


心配する優希を他所に紫織はテーブルに飛び散った紅茶を拭きながら答えるが自分の顔はまだ濡れたままだった


「ほらっ、紫織さんの顔も濡れてますよ?すぐに拭き取らないと……」


優希は紫織に掛かった紅茶を自分のハンカチで優しく拭き取った


「あっ…(ゆ、優希君が!優希君が私の顔を顔を触ってくれてる!!しかも拭いてくれる時の優希君の顔すっごい優しくとっても可愛い!!あ〜!!どうせなら頭にもつけて履いてもらうのと一緒に撫でてもらえば良かったのになぁ〜!!!)」


拭いてもらう事を予想していなかったのか唐突に起きた出来事に紫織本体はフリーズしてしまったが脳内の紫織はオーバーヒートを起こしている

いつの間にか心におったダメージは回復を完了していた


「よしっ、これでOKですよ紫織さん……って紫織さん?どうかしました?」


「おい二人共。そろそろ店の方も混んできたからそろそろ上がってくれってどうかしたのか北条?」


休憩室に涼音が入ってくると涼音は固まっている紫織とそんな紫織の肩を揺する優希に目を丸くしていた


「あっ、片倉さん。紫織さんが紅茶を何回も暴発させたと思ったら急に固まってしまいました!」


「何をやってるんだお前たちは……」


結局休憩時間ギリギリまで続き、結果涼音の張り手で紫織は目を覚ました

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