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〜STORY 34 4月16日 壱 〜

当日午前9時過ぎ、優希宅にて葵の家庭教師が始まっていた


「……【カキカキ】」


「……(と、当日になってしまったけど優君になんて言ったら自然にお花見に誘えばいいのかしら?)」


昨日から始めた甲斐もあり出かける準備は整っているが肝心の優希にはいまだに誘えずにいた葵は内心かなり焦っている

優しい優希ならまず断りはしないと頭の中では分かってはいても万が一断れるという可能性も考えられると足がすくんで未だ誘えずにただ時間だけが過ぎていった


「よしっ!出来た!それにしても今日は暖かくて気持ちいいですね!!」


「そ、そうね〜あ、あはは(さ、誘わなきゃ!で、でも……)」


「??葵さんどうかしましたか?」


「な、なんでもないの!!ほらっ、次はこっちの問題よ!」


「はぁ…?(今日の葵さんえらく緊張されてるけど何かあったのかな?)」


そんな中、外で風が吹いたのかカーテンが揺れ、僅かにできていた窓の隙間から一枚の桜の花びらが部屋に入ってきて優希の太ももに乗っかった


「ん?あっ、桜の花びらだ。そっかぁ…今年も見に行かずに桜が枯れちゃうのかなぁ〜」


優希は太ももに乗っかった桜の花びらを拾うと窓の向こうの視線を少し寂しそうに眺めた


「優君はご家族で桜を見に行ったりはしないの?」


「そうですね。言われてみればお花見なんて小さい頃にやって以来一度もやってないですね」


葵は自分の知らない優希の情報が聞けることに惹かれ尋ねてみると優希は指折で数える


「(こ、これはもしかしてチャンスじゃない!?で、でも…もし断られちゃったら………えぇい!言わずに後悔より言って後悔の方よね!?)優君!!」


葵は覚悟を決めて優希の前に立ち桜を見に行こうと持ちかける


「え?でも……家庭教師してもらって更にお花見もって……お邪魔になるんじゃですか?」


「とんでもないわ!!私もお昼がてら少し見ようかなってそんな軽い感じで行こうとしていたから!!」


葵のことを思い断ろうとする優希を首をぶんぶんと振って否定する

朝3時に起きて優希に美味しいお弁当を食べてもらおうと頑張ったことは内緒だが…


「ん〜葵さんに迷惑じゃないんだったら一緒に行ってもいいですか?」


「イエス!!!」


優希から承諾をもらい嬉しさのあまり葵はガッツポーズをあげ、声を高らかにあげてしまった

優希は葵の様子をぽかーんと眺め暫く部屋中に沈黙が流れると葵はハッと正気を取り戻すし恥ずかしくなったのかみるみるうちに顔が真っ赤に染まっていく


「ご、ごめんなさい…私ったらついはしたないことを……【カァァ///】」


「気にしないでください。それじゃあしっかり残りの問題集を終わらせてお花見行きましょうか」


真っ赤に染まった頬を手で押さえた葵に優希は笑みで返す


「そ、そうね。それじゃあ次はこっちの問題をやりましょうか……」


折角承諾してもらえたが喜びのあまりのハイテンションな姿を見られてしまい、葵は終始顔から火が出るほど恥ずかしい状態がずっと続いた


その後、予定されていた問題集を全て終わらせ、二人は桜が多く植えられている運動公園の広場へと向かった

母である椿に出かける旨を伝えたのだが当然椿は付いていくと優希を最後まで離そうとしなかったのだがなんとか椿を説得することに成功した(帰って来た後が少し怖い)


「おぉ〜っ!これは綺麗ですね!!」


「本当綺麗ね〜。来れてよかった……」


二人が訪れた河川敷に並んだ桜の木はまさに満開を迎えた状態で二人を待っていた

暖かく心地いいで春風に吹かれて舞う桜はまさに幻想的な風景を醸し出していた

下を見ると会社での集まっていたり河川敷を利用してバーベキューを楽しむ若者など皆それぞれ違った花見の楽しみ方をしていた


「やっぱり人は多いですねぇ〜。場所取れればいいんですけど……」


「心配には及ばないわ。ちょっと待ってて?」


葵はバックから携帯を取り出し陽子に連絡を取る


「《もしもし陽子?広場着いたけど場所のほうは大丈夫?》」


「《…10時からずっと本読んだり動画見たりして退屈凌ぎしてたわよ!周りはカップルだったりサークル連中の陽キャばっかりでしんどかったし!!》」


電話越しから聞こえる陽子の声は酷く荒れていた

優希が大丈夫ですか?と心配そうに葵を見たが葵は平気だよと笑顔で返す


「《それじゃあ今からそっち行くからね。》」


「《ちゃんと約束果たしてよね!?そうじゃなかったら葵だからって許さないよ!?》」


携帯を切り、バックへと戻す

後日陽子からたくさん愚痴を聞かされそうだと少し溜息が出そうだが今は折角勇気とデートが出来ることを喜ぶ事にし、嫌なことは考えないようにする葵だった


「お待たせ。場所のほうは問題なさそうだから行きましょうか」


「あの…大丈夫ですか?なんか少し相手の方怒ってるように聞こえたんですけど?」


「平気平気!さっ!行きましょ!!」


「えっ……は、はい!!」


優希の手を繋ぎ葵は陽子の待つ場所へと向かう

手を繋いだのは大人の余裕ということにしておきたいが心臓はばくばくと今にもはじけそうだった

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