〜STORY 32 4月15日 四 〜
〜晴菜・飛香サイド〜
口喧嘩の隙に優希達が移動してしまい行方が分からなくなってしまったため二人は優希達を探しつつ口喧嘩を繰り広げていた
「ちょっと!あんたの相手をしていたらいつの間にか二人ともいなくなっているじゃない!どうしてくれるのよ!これじゃあ二人が何処で何しているのかがわからないじゃない!!」
「まぁ!私に突っかかってきたのはそもそも仁科さんの方じゃないですか。尾行中に大声を上げるなんてはしたない。」
「うるっさいわね!はしたない女にはしたないなんて言われたくないわよ!!このなんちゃってお嬢様!!」
「【ピキッ】あまり私を怒らせない方が身の為でしてよ?この下品女」
本来なら側にに近付きたくもない相手同士だが抜け駆けされてしまわないように相手を監視しなきゃいけなくなってしまった為お互い離れられなくなってしまった
〜優希・奏音サイド〜
クレープ店から少し離れて優希と奏音は大型ショッピングモールに来ていた
【奏苑通り】の中で一番の規模を誇っている為、平日でも大勢の買い物客で溢れている
階層ごとにエリアが分かれていて奏音目当ての服は3階の大半を占めている
「お、おぉ〜、す、すっご〜い!!」
普段はほとんど立ち寄ることがない女性服エリアはたまに見る男性服エリアに比べて比較にならないほど華やかで服の数も種類も桁違いだった
「なんか、別世界に来たみたいだ……ん?……あっ///」
「ちょっとお兄ちゃん。子供じゃないんだからあまりジロジロ見ないでよ……」
辺りを物珍しく眺めていた優希とそんな兄を注意する奏音の視線の先には女性の下着が多く並べられていた
「変態……最低……もしかして了承したのも合法的に下着を見て妄想に興じたかったからなの?それなら私は服見てるからどうぞ、ご自由に……」
「いやいや!!確かにジロジロ見ていたのは悪いと思っているけど女性服エリアなんだから視線に入っちゃうのはしょうがないでしょってごめんなさい!土下座してでも謝りますからお兄ちゃんをそんな目で見ないで下さい!!」
その後必死の謝罪が功を奏しなんとか奏音の起源を取り戻すことに成功した
「まったく……女の子とお出かけしているというのに女の子をそっちのけで下着を吟味するなんて最低な行為なんだよ?次したら口聞いてあげないからね?」
「はい……すみませんでした。」
「まぁ…お兄ちゃんも反省しているみたいだしこれ以上とやかくいうのはやめにするよ。それじゃあ服選びしないと……う〜んどっちがいいかな〜?」
そういって奏音は春服おもむろに組み合わせ自身の体に合わせながら選んでいた
「ん〜よく分からないけど僕はそっちの方が奏音に似合ってると思うよ?」
「え?こっち?」
優希が指差したのはミントカラーのフレアスカートにグレーのリブニットと春らしく爽やかな組み合わせだった
「うん。なんか奏音が着たらとても可愛いいんじゃないかな?まぁ…あくまで僕個人の意見だからあまり参考にならないと思うんだけど…」
「可愛い!?本当にこれが私に似合うと思う!?」
優希の選んだ服を胸に抱きしめながら奏音は至近距離で似合っているか再度確認をとってくるそんな奏音の眼はギラギラに光っていた
「う、うん。あくまで僕の好みの話だから鵜呑みには……」
「ちょっと着てくるからちょっと待ってて!!」
言葉を最後まで聞かずに奏音は服を抱きしめたまま更衣室へと向かっていった
店員に何か話してから試着室へと入ると奏音はカーテン越しに何か話すとしばらくして優希は奏音が話した店員に連れられ奏音の入った試着室の前に通された
「お兄ちゃん?いる?」
カーテン越しの奏音の声はとても弾んでいるようだが少し恥ずかしげにも聞こえた
「うん。目の前にいるよ」
優希の存在を確認した後何度か深呼吸をして奏音はカーテンを開いた
そこには先程優希が選んだ服を纏った奏音が恥ずかしげな表情を浮かべたまま立っていた
「ど、どうかなお兄ちゃん。私的には結構気に入っているのだけど…?」
「え?う、うん。とても似合ってるよ奏音」
「ほんと?嬉しい!!」
褒められて嬉しかったのか奏音は目元に涙溜まりを浮かべ喜んでいた
後方から視線を感じた優希は後ろを向くと別の試着室に入りに来た女性客や店員さんが奏音に視線が注がれていた
「いいものが見つかってよかった。すみませんこれお願いします(お兄ちゃんに選んで貰った服♡お兄ちゃんとまたデートする時にこれ着よっと♡)」
「ありがとうございます。彼氏さんにお褒めの言葉を頂いて良かったですね」
「い、いえ。僕と奏音は……」
「ありがとうございます!!大切にします!!」
帰り道奏音は購入した服を大切そうに胸に抱え、とても嬉しそうにしていた
妹のこんなのも嬉しそうな表情を見れるのならまた買い物に付き合ってもいいかなと思う優希だった