〜STORY 25 4月10日 参 〜
「えっと、ここの公式がこうだから〜……出来た!」
「うん正解ね。じゃあ次はこっちの応用問題もやってみましょう」
「はい!それにしても葵さんに教えてもらうと分かりやすくてありがたいですよ」
「うふふ、そう言ってもらえると私も嬉しいわ。ありがとね優君【ニコッ】」
「はい!……っっ///【ぷいっ】」
「どうかしたの優君?顔が少し赤くなっているようだけど……」
「な、なんでもないです……気にしないでください」
「???」
葵による家庭教師が始まって早1時間
葵から用意された数日数学の基礎問題が終わりランダムで出される応用問題をこなす優希の調子はかなり良く、応用問題もすでに3分の1を終えていた
しかし優希は教えてくれている葵を直視することができず悶々としていた
葵の格好はワイシャツに黒のタイツスカートといたって普通の格好で違和感はないはずなのだが優希の見た限りでは葵のスタイルは母の椿に少し劣るもののそこらのグラビアアイドルよりも一層抜群のプロポーションを誇っている
そんな葵が着ているということと少しサイズが小さいのかより一層エッチに見えてしまう状態なのだ
「あっ、優君ここはこっちの方が解きやすいわよ?【ズイッ】」
「っっ……!!【カァァ///】」
「(うふふ…優君ったら真っ赤にしちゃって…♡ちょっと格好は攻めすぎちゃったかなって思ったけどどうやら効果覿面ね)」
葵の思惑など露知らず優希は葵から漂う香水の匂いとちらりと見える胸を直視して顔を真っ赤になってしまい優希の鼓動は限界突破を迎えようとしていた
「(あ……なんかクラクラしてきた……かも……)」
「うんうん良い感じよ優君って優君!?顔が凄い真っ赤だけど大丈夫なの!?」
「あ、あはは……らいじょうぶれすからひ、ひにしないでくらひゃい」
「呂律がしっかりしていないじゃない!!勉強している場合じゃないわ!早く横になって!!」
おもむろに額に手をやると熱く、心なしか全身が熱くなっていた
徐々に瞼が重くなり視界が真っ暗に染まっていき優希は意識を閉ざした
チャプ チャプ
耳元で水の音が聞こえ優希は多少軽くなった瞼を開く
「あっ!!ゆ〜ちゃん!!ゆ〜ちゃん!!」
「優君!!本当にごめんね優君!!」
声のする方を向くと涙で顔をくしゃくしゃにした椿と暗くしていた顔を瞼に涙を溜めたまま笑顔を見せる葵が立っていた
額には水に濡れてひんやりとしたタオルが乗せられていた
「葵ちゃんから聞いて飛んできたのよ!?ゆ〜くんが熱出して倒れたなんて私心臓が飛び出そうになったのよ!!」
「そ、そうなんだ。ご、ごめんねつb……」
「ゆ〜くんは謝らなくて良いの!!私がもっと気を配っていればこんなことにはならなかったの!!」
謝ろうとする優希を遮るように椿は優希を包むように抱きしめる
いつもみたいに思いっきり抱きしめるのではなく優しく毛布で包むように抱きしめてくれる
「ごめんなさい椿さん。私が優君のことをもっと見守っていればこんなことには……」
椿の後方で正座している葵の表情は涙でくしゃくしゃになっていた
「ううん。葵ちゃんは悪くないの。葵ちゃんは家庭教師としてちゃんとやってくれているわ。悪いのはゆ〜ちゃんのことを管理していなかった私のせいなの!!」
その日の家庭教師はお開きとなり優希はベットで椿による徹底的な介護を受けるのだった
〜その夜葵宅にて〜
「あぁん、もう!!私のバカ〜!!!」
葵は自室のベットの上で枕に顔を突っ込み落ち込んでいた
優希を誘惑するつもりで選んだ格好でまさか優希の体調を悪くするという最悪な事態を招いてしまった
不幸中の幸いとして未来の義母となる椿から嫌われるということはならなかったからまだしも最悪家庭教師解雇の可能性も十分あった
「はぁ〜…優君に嫌われちゃったらどうしよ……」
♪♪♪〜
「!!?」
自暴自棄になりそうになっていると葵の携帯から聞き慣れた着信音が鳴った
お気に入りのラブソングを優希にしているからだ
素早く携帯を手にし優希から一件のメッセージが届いていた
開くか開かないか一瞬迷うが気になるので恐る恐る開く
「《今日はありがとうございました。お忙しい時間を頂いて教えてもらっているのに僕が熱を出して本当に申し訳ございませんでした。来週は最後まで教えてもらえるようにしますのでどうか来週もよろしくお願いします。》」
優希からのメッセージはシンプルな謝罪メッセージだった
「よかった……また優君に会えるんだ。……ん?」
カーソルを下にするとまだメッセージが続いていた
「《今日の葵さんの格好は葵さんにとても似合っていましたが少し僕に見せるにはちょっと刺激的なんじゃないかな〜って思いました》」
「…………今度はもう少し控えめに誘惑してみましょ」
葵の表情はいつの間にか晴れており清々しくなっていた