〜STORY 20 4月7日 参〜
ピピピッ!ピピピッ!
「……ん、んぅ……」
朝6時に設定したアラームが鳴り私は自室のベッドから身体を起こし目覚ましを止めた
まだ夢見の状態だがこのまま何もしないと二度寝してしまうので自分の身体を無理やり起こし部屋のカーテンを開けた
窓から差し込む太陽の光が眩しく一瞬だけクラッとしてしまったが首を振って視界をクリアにする
「……顔洗お…」
右手を上にして体を伸ばす
誘惑が再度込み上げてくる前に私は寝巻きのまま洗面所へと向かった
鏡の前に立ち髪が濡れないようにシュシュで髪をまとめてから丁寧に顔を洗った
この春から華の高校生となり、自分のケアには今まで以上に気を使うことにしている
「(あの鈍いお兄ちゃんなら全く気にしないどころか全く気づかないと思うけどね……)」
悲しいことに私のお兄ちゃんはライトノベルの主人公並みに女心に鈍く恐らく私やママどころか飛香ちゃんの好意にさえ気づいていない
なら私のことなんか家族としての愛情ぐらいにしか思わないだろう
それはお兄ちゃんが正しい
血の繋がった家族なのにそれ以上の感情を持ってしまう私の方がおかしいと思う
「(でも……だからって我慢できるわけないじゃない!!)」
掌にすくった水をピシャッと顔にかけた
たった15年しか生きていないがたくさんの男子を見てきてどんなに顔立ちが整っていてもどんなに面白くても私の心を温めてくれたのはお兄ちゃんだけだった
優しくて周りの人を悲しませないように自分が犠牲になって、それでも全く嫌がってるそぶりをみせない
そんなお兄ちゃんを周りは男らしくないとか女男なんて言う奴もいるが私はそんなこと全く思わない
一度はこんな感情間違ってると同級生と付き合ってみたが結果は長続きする事はなかった
デートして割と楽しかったのはずなのだが帰ってきてお兄ちゃんの笑顔を見た瞬間さっきまでの光景が夢だったかのように消えていった
「(はぁ……お兄ちゃん……)」
お兄ちゃんのことを考えてたら余計に会いたくなってしまったので私は濡れた顔を拭き髪を丁寧にといたあと部屋へ戻り制服に着替えた
制服を纏った私は鏡の前に何度も立ち制服やスカートにしわなどがないかを確認した
実に14回によるボディーチェックを済ませた私はお兄ちゃんの部屋の前に立った
「ん?……物音がしない。」
寝てるのだろうかと分からずコンコンとノックするも反応はない
いるのかどうか分からないがそーっと部屋の扉を開くと中には誰もいなかった
「あれ?……お兄ちゃん?」
昨日バイトから帰った後すぐにお兄ちゃんはママに絡まれていた為近寄れなかったが私が寝る前に扉を開けるとお兄ちゃんは部屋で寝ていた
「もうリビング行ったのかな?……でもいつもはこの時間に起きることが多いのに……」
私は一階のリビングに降りてお兄ちゃんを探すがリビングには朝食が並べてあるだけでお兄ちゃんどころかキッチンの方にいつもいるママすらいなかった
「もしかして……」
嫌な予感がしてリビングから踵を返して私は一直線にママの部屋に向かった
「ちょっとママ?朝からお兄ちゃん見てないんだけどどこにいるか知らな……」
ママの部屋を開けるとそこにはベットの上でお兄ちゃんがママに絡みつかれているのだった
お兄ちゃんの顔はママの豊満な胸に大半覆われていて体勢を変えようとしたのかママからの拘束から逃れようとしてるのかママに抱きついているかのように見えた
「………………【ムカッ】」
相手お兄ちゃん大好きママなのは分かっている
でも普段は甘えることができない私からするとお兄ちゃんにたくさん甘えられるママがすごく羨ましくて……その度に私は嫉妬を覚えてしまう
「朝からママのベッドにに忍び込むなんてお兄ちゃん不潔……」
「ち、ちが!誤解だよ奏音!!」
お兄ちゃんがママをそっと引き剝がしつつ答える
誤解なのは分かっている……大方ママが寝ていたお兄ちゃんを部屋に連れ込んだのだろうそれでも私はママとイチャつくお兄ちゃんに多少の怒りをぶつける
「……あっそ、じゃあ私は先に出るから……どうぞごゆっくり」
私はママの部屋の扉を思い切り音を立てて閉じた
部屋を出る際にお兄ちゃんが何か言っていた気がするがあまり聴いてもいい気分がしないだろうと聞く気になれなかった
「………………バカ」
扉の前で私は二人に聞こえない程度の大きさの声で囁いた
その後もお兄ちゃんから謝罪が何度かあったが私は聞くだけで特に反応することなく登校をした
教室に着き荷物を置くと私はすぐにお兄ちゃんのいる教室へ向かう
……わざとお兄ちゃんの分のお弁当を取ってそれを渡しにいき、仲直りの口実を作ったわけじゃないんだから!!
「ん〜奏音ちゃんは別にそういうことは気にしないんじゃない?」
教室に入ろうとした瞬間私の名前が聞こえたのでその場で立ち止まり扉の陰に隠れて教室を見回すとお兄ちゃんと璃玖さんが談笑していた
そのまま聴いているとやはりというかなんというか相変わらずのお兄ちゃんの鈍さにただただ飽きれる一方だった
「(恋愛感情どころか私がお兄ちゃんを嫌っていると感じるなんて……)」
少し落ち込んでいるとお兄ちゃんと話している璃玖さんと目があった
そして璃玖さんはお兄ちゃんを叩きお兄ちゃんに鈍すぎると注意をしてくれた
その瞬間HRの予鈴が鳴り私も急いで戻ろうとすると璃玖さんが私の方を再度見てにっこり微笑んでくれた
「(ありがとう……璃玖さん)」
私は軽くお辞儀をしてから自分の教室へと戻ることにした
「(お昼は……もう少し、素直になってみよう……かな)」
そう思うとなんだか心がすっと晴れたような気がした
教室までの足取りは来るまでとは桁違いに軽かった